#創作
【SS】二重人格ごっこ/#毎週ショートショートnote
『おかえりなさい❤︎お風呂にする?ご飯にする?』
やたらアニメ声のAIボイス。こんな前時代的な台詞、誰が決めた。有料オプションでイケメン彼氏ver.とか、優しいオカンver.とかにも変えられるらしいけど。
比較的新しい物件なら標準装備のAIお家管理システム。
声ひとつでその日の気分に合わせ、家の環境を整えてくれる。
最初はもの珍しくて、日替わりで「ご飯」「お風呂」と答えていた。
「お風呂」と答
【SS】違法の健康/#毎週ショートショートnote
「…あなた昨日、カップラーメンとビールを摂取しましたね」
「え、いやっ!」
「嘘ついてもダメですよ、この 健康検索機は、手をかざせば、3ヶ月分のあなたの詳細なデータが瞬時にわかるんです。何を食べて、何時間寝て、運動をして、どれだけ精神的に安定しているかまでね。」
「…はい…食べました…で、でも、普段はちゃんと気をつけてます!」
「健康でないことは法を破ることに等しいのだから気をつけて下さいよ」
【掌編】こんな日だからこそ食べるのだ “小さな口福”
「よし、やるか!」
台所に立ち、エプロンを締める。
テレビのコンセントを引っこ抜き、スマートフォンの通知も全てオフにする。仕事の連絡も今日は聞かなかったことにすればいい。
ふた昔前、お互いまだ小学生だったあの時は、よく意味もわからず、それでもいてもたってもいられなくなって、「コンビニ行ってくる!」と叫んで、財布も持たずに家の前まで自転車をぶっ飛ばした。
遅くなって家に帰って、こっぴどく親に怒ら
【SS】動かないボーナス/#毎週ショートショートnote
もうどのくらい前になるだろう。
「それ」は体の割に大きな頭をもち、4本足で歩こうとすると前のめりに転びそうになっていた。
それがふと気の毒になった私は、ボーナスのつもりで私は「それ」に2本足で歩く力を与えた。
手を使えるようになった「それ」は、次第に道具を使うようになった。
様々な道具は、時に他のものを傷つけたが、生きとし生けるもの達が互いに影響し合う軋轢の中では、ある程度は仕方のないことで
【SS】君に贈るランキング②/#毎週ショートショートnote
その声が好きだ。
カタカナを読むのが苦手で、時々舌足らずになるところも。
その瞳が好きだ。
好きなものを見つけると、子供のようにキラキラ輝くところも。
その手が好きだ。
柔らかくて、優しくて、指輪が似合わないと嘆く節のない様も。
その髪が好きだ。
しっとりと柔らかく、思わず撫でたくなるところも、撫でたら喜んでくれるところも。
その笑顔が好きだ。
整った顔を臆面もなく、くしゃっと歪めるそのて
【SS】君に贈るランキング/#毎週ショートショートnote
「ただいまー。」
帰宅した俺を、玄関に彼女がやや仁王立ちで出迎えた。
「ランキングを発表します!」
お?何?急に何始まった?おかえりではないの?
「第3位!お酒に弱いところ!」
って、ランキング発表の説明なし?つか何でそれ?確かに今もちょっと酔ってますけども。
「第2位!友達の吉田くんがイケメンなところ!」
その理由はなんか俺的には微妙なんですけど。
まぁ、確かにそうではあるけども。
【SS】1分しまうま②/#毎週ショートショートnote
僕の背中を人は踏みながら進んでいく。
毎日、色んな人が通り過ぎていく。
黒いところと白いところ、一個おきに、飛び石みたいに遊ぶ子供たち。危ないから遊んじゃだめだよ。気をつけて。
白いところを慎重に踏んでいく細いヒール。おろし立てかな。黒いところはボコボコしてるからね。ヒール傷ついちゃうもんね。でも滑りやすいから気をつけて。
黒いところを正確に踏んでいく革靴。でも少し雨水が残っているかも。ズボ
【SS】1分しまうま/#毎週ショートショートnote
「1分だけ!お願い!1分!」
「だめ!絶対ダメ!」
「騙されたと思って、お願いしますっ!」
「頭下げてもダメなもんはダメ!」
なんでも人を1分だけ何かの動物に変身させることが出来る薬を発明したらしい。
そんなもの一体何になるのか。
大体そんなもの好き好んで飲むバカがいるのか。
全くもって意味がわからない。
「じゃあ、お互い飲もう。同時に一緒に飲むならいいでしょ?」
「いや!絶対いやだ!」
「何
【SS】結婚式ゾンビ②/#毎週ショートショートnote
「本当にあんな男と結婚するの?」「モラハラの塊じゃん」「結局お金?」「それ以前に精神荒廃じゃない?」
色々なざわめきが聞こえてこないわけじゃない。
「うん、でも、あれで結構、優しいんだよ。結婚式も新婚旅行も好きにしていいって言ってくれてるし。」
「それはあいつがめんどくさがってるからでしょ?面倒ごと押し付けて、自分は世間体だけ取り繕って。本当にそんな結婚でいいの?」
「大丈夫だって。新居もね、
【SS】結婚式ゾンビ/#毎週ショートショートnote
「あ、これ可愛い!ね?可愛いよね?」
「そちらビスチェにプリンセスライン、オーガンジーをふんだんに使い、華やかで可愛らしいデザインです。」
「うん、いい。亜理沙に似合う。」
「ほんと?じゃあ、着てみる!」
待つこと10分
「ねぇ、どう?」
「あ、いい、ふわふわしてて可愛い。」
可愛いのは本当。
ただ正直なことを言えば、どれも同じに見えてきた。
「でもなんか子供っぽくない?」
「それでしたら
【SS】プロのバナナ②/#毎週ショートショートnote
「なんや、お前、なにバナナなんか食ってんねや」
先輩芸人が、突然、イチャモンをつけてきた。
「いや、今月、ほんまに金欠で、特売のバナナしか買えへんくて。もうバイト代が入るまでこれで食いつなぐしかないんですわ、ほんま、堪忍して下さい。」
「猿やないんやで、ただ食うだけやないやろな。」
「は?えっと、どういうことです?」
「俺ら、芸人やで?芸人にとってバナナ言うたらあれやろ!」
「…というと…?」
【SS】プロのバナナ/#毎週ショートショートnote
「チョコバナナになれるのってさ、プロのバナナだけなんだぜ。」
「は?プロのバナナ?」
「そうプロのバナナ。」
「なにそれ?どういうこと?」
「だってさ、チョコって強いじゃん、言ったら最強じゃん?なのにさ、チョコバナナのバナナは負けないんだぜ?強いのに負けないのってやっぱプロだと思うんだよね。」
「その強いとか、負けないってどういうこと?」
「味だよ、味。チョコバナナってチョコの味もバナナの味もど
【SS】みんなで動かない②/#毎週ショートショートnote参加
デザイン事務所A
「弊社から提案させていただく内容はこちらでございます!残念ながら担当者は本日致し方ない事情にて、出席を見合わせましたが、企画自体は必ずやご満足できるものになっていると存じます。」
うそうそ。
うちの新人がやっつけで出してきた企画だよ。
今日もサボりだって知ってんだからな、このやろう。
ああ、通るわけない、こんなもん。
広告代理店B
「素晴らしい企画ありがとうございます。担当者