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【今でしょ!note#7】 グローバル経済圏とローカル経済圏 (1/2)

おはようございます。林でございます。

昨年まで、東南アジア向けの仕事と、地方における地域活性化の仕事を並行して取り組んでいました。
その際、ビジネス環境や規模感が随分異なるというのは感じていたところですが、グローバルにおける経済圏とローカルにおける経済圏は全く別物で、それぞれに応じた戦い方があり、日本の経済成長の鍵を握るのはローカル経済圏の復活である、という話をとてもクリアに整理いただいた冨山和彦さんの本があります。

今日と明日で2回に分けて、自分の言葉で再編集してメモに残しておきます。


日本の産業構造の概観

日本のGDPと雇用の7割を占めるのはサービス業です。そして、サービス産業の大半は、国内各地域内の小さなマーケットで勝負するローカル企業になっています。

2022年3月 経済産業省 サービス生産性レポートより引用
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220328005/20220328006-2.pdf

経済構造として、ローカル企業がローカルに活動する構造から大きく変化しないため、日本の経済成長は、ローカル経済のサービス産業の労働生産性および賃金に大きく左右されます。

上場企業の経済活動が日本のGDPに占める割合は30%程度ですが、非上場企業の中堅中小企業が全体に占める割合は99%以上です。つまり、GDPの残り7割以上を占める大勢のサービス産業の産業特性・雇用特性を直視しなければ、日本の成長戦略は語れません。
いくら大企業が海外進出して外貨を稼ぐビジネスを広げても、日本全体の成長を牽引するところまでは敵わないのです。

かつての加工貿易立国時代では、パナソニックや日立、トヨタのような大手メーカーが打撃を受けると、その下請け・孫請け会社も共倒れになりました。仮にこのゾーンが全体の半分程度の経済規模を占めていたとすると、日本の半分はアウトということになります。
しかし今は、そのゾーンは3割程度に過ぎず、7割は大手製造業の下請け・孫請け会社ではありません。ローカルなサービス産業は、大手メーカーがリーマンショックで打撃を受けても直接の関連性がなく、あまり影響がなかったということになります。

グローバル経済圏

グローバル経済圏は、製造業やIT産業中心です。
モノ・情報を扱い、規模の経済性が効く産業です。国際的な移動がしやすく、グローバルでの競争になりやすい性質があるため、世界トップクラスでないと生き残れません。

一方で、グローバルな競争を勝ち抜いても、必ずしも国内に大量の雇用を生むわけではありません。人件費の高い先進国では、GDPに占める割合も減ります。トヨタがアメリカで生産してアメリカで車を売っても、日本のGDPには換算されません。
グローバル企業が先進国に残せるのは、本社機能・本部機能・マネジメント・研究開発などの高度機能くらいでしょう。

ローカル経済圏

ローカル経済圏は、非製造業が中心です。
本質的にコトの価値を提供し、分散的な経済構造を持ちます。
例えば、公共交通、物流、飲食、小売、宿泊、社会福祉、教育などです。これらは基本的に対面サービス中心になるため、密度の経済性が働き、不完全な競争の世界です。
経済圏を広げるよりも、一定の地域内における密度を高める努力をしたほうが、経済的に儲かる性質があります。
ITを導入してもコストが100分の1になることはない労働集約型産業であるため、労働生産性を劇的に上げることは難しいです。

また、要求技能の特殊性が低いことから、結果として賃金が上がりにくい構造に陥っていきます。競争規律が働きにくく、簡単には新陳代謝が進まないため、全体的な労働生産性を上げにくいのです。

日本のような少資源国の場合、ローカル経済圏での国際収支は赤字になります。
そのため、国民経済的な視点で見れば、余りある外貨をグローバル経済圏で稼ぐ企業に稼いでもらわないと困る、ということになります。
貿易収支で稼げないならば、海外で現地化したビジネスで海外子会社に稼いでもらい、利子や配当金という形の所得収支で吸い上げることも手段になります。

上述の通り、グローバル経済圏とローカル経済圏は、その性質が全く異なるので、それぞれ別の戦略で二つの世界を共存させていくのが望ましいのです。

グローバル経済圏で勝ち抜くには

日本のグローバル企業のリアル

これまで日本は、グローバル企業の活躍による貿易収支と利子・配当金等の第一次所得収支で経常黒字を維持してきましたが、近年は貿易収支が赤字になっています。
貿易収支が悪化する本質的な構造要因は、グローバル経済圏の企業が本格的にグローバル経営に移行したことと、それが生み出す国内の産業構造の変化です。
最近のグローバル大企業の好業績のほとんどは、交易条件の変化による輸出伸長ではなく、海外連結子会社の黒字換算率が円安で高く計算されているに過ぎません。

1990年以降、日本はグローバル経済圏でのビジネスに負け続けています。
産業が世界的に拡大するにつれて日本企業のシェアが落ちている理由の一つは、日本企業の整理統合が進まず、多くの企業が過当競争に陥っているためです。

業界内・企業内の新陳代謝を上げて、利益率にこだわる経営を

売上高1兆円以上で営業利益率10%超の企業は、アメリカ、ドイツ、韓国企業ばかりです。儲かっている企業ほど将来に向けた投資ができるため、売上と営業利益率がトレードオフという主張は正しくありません。

本当の理由は、事業と機能の新陳代謝を怠り、強い事業も見限るべき事業もダラダラと続けていることです。
多くの企業の事業ポートフォリオは、2割が収益を叩き出す事業、6割はそこそこ稼ぐ事業、2割は足を引っ張る事業になっており、その状態を放置しているから営業利益率もROEも1桁%の下に収斂しています。

一方で、世界のグローバルトップ企業に共通しているのは、高成長と営業利益率10%以上を継続していることです。
世界のGDPの22%を占めるアメリカでは、今後も人口増加し、持続的に成長が見込まれるのに対し、日本は世界の8%程度で、少子高齢化で相対的な潜在成長率も低い現実があります。

現在、東証には上場理由が分からない企業があります。
かつて上場企業は一流で、非上場企業は二流と思われていた長閑な時代があり、上場しないと優秀な人材を採用できないという理由で上場しただけ、というような企業です。
そういう企業ほど、ガバナンス強化や会計ルールのグローバル化に異を唱え、グローバルマーケットに対して発信したいグローバル企業の足を引っ張るので、いっそのこと真に上場を必要としない企業は、ローカル部での事業に集中する方が、全体の構造としては健全化します。

GPIFは、競争力のある企業に集中した資金運用を

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、厚生年金と国民年金の積立金運用を行う厚生労働省所管の機関です。

2023年現在、約200兆円の運用資産を抱え、その50%を国内債で保有しています。リスク資産への投資が少ない点で、実際の運用方針が海外の公的年金基金の考え方と異なります。

一種の公的機関にあたるため、議決行使権に関与しないというのはとんでもない話で、国民の大事な財産を扱っているからこそ、エクイティ性投資を行う場合は、責任ある株主としての責任を直接、間接に果たすべきです。
本来、ガバナンスが効いていれば、ROEが3%以下の企業群からは、GPIF資金を引き上げるのが正当な判断です。黒字だからよいというのではなく、より競争力のある企業への投資にシフトしていくことで、より運用益を確保できるだけでなく、国内企業の新陳代謝が進むことに繋がります。

ここまでグローバル経済圏におけるリアルを取り上げました。
明日は、ローカル経済圏に目を移して見ていきたいと思います。

それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
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林 裕也@30代民間企業の育児マネージャー
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