【56】取材をしてインタビュー記事を書く技術について。
今回は、取材をして、インタビュー記事を書く技術について記述します。
インタビュー記事の問題点
端的に言えば、「インタビュー記事」の最大の問題は、読まれにくいことです。
その理由は、【28】「インタビュー記事」はなぜ、呆れるほど読まれないのか。に詳しく書きましたが、結論から言うと、ニュースやオピニオンにくらべて、読み手への負荷が高い点にあります。
これはインタビューの中で使われる「会話」というコミュニケーション形態が
「かみ合ってなくても進む」
「結論を出さなくてよい」
「表情からニュアンスを読み取れる」
「情報の密度が低い」
と、文章と根本的に異なるため、必ずしもライターが悪いのではありません。
いうなれば、それが「会話調のインタビュー記事」というフォーマットの限界なのです。
それゆえインタビュー記事は、構成に脈絡がなく、質問も散発的、「結局、何が言いたいの?」となりがちです。
結果として、
・知人・関係者しか読まない
・主張があいまい
・薄い
記事になりがちです。
また、記事の拡散力も「インタビューされる人」の拡散力に依存するので、この場合のPVの上限は、ライターの腕というよりは
「その人がどれだけ有名なのか?」
という話になります。
要は、「とりあえず有名人だしときゃ、拡散協力してもらってPV稼げるわ」みたいな。
そんなやつです。まあ、それはそれで否定はしません。
そういうやり方もアリです。
そういうわけで、メディア運営者側には
「手軽に作れ(るように見え)て」
「有名人や、フォロワーの多い人を出せばある程度のビューがとれる」
インタビュー記事は、相も変わらず人気です。
ただし、「インタビュー記事は、有名人しかやらない」
と決めているメディア関係者や、ライターの方であればいいのですが、
そうでない場合は、苦労して書いても、ほとんどビューが出ません。
読まれるインタビュー記事のための技術
では、インタビュー記事は基本、内輪ウケの提灯記事ばかりなのでしょうか。
あるいは、有名人頼みの記事ばかりなのでしょうか。
もちろんそうではありません。
それどころか
「インタビュー記事は、有名人しかやらない」
というメディアやライターは、微妙だと個人的には思います。
書き方によっては、インタビュー記事は、もっと読まれますし、「無名の人のインタビュー記事をどう読ませるか」は、それこそライターの腕が問われる記事だからです。
では、どのようなインタビュー記事なら読まれるのか。
単純に言えば、情報の密度を上げて、読者の負荷を下げることです。そのために必要な技術は次の3つです
1.テーマはメディアが用意する
2.「会話形式」を極力避ける
3.インタビュー記事の題材は「視点の提供」
では、順番に解説します。
1.テーマはメディアが用意する
記事のテーマ・主張は、必ずメディアが用意します。
これは、インタビュー記事を書く上で、最も重要なことです。
逆に、やってはいけないのは以下の行為。
「雑談をして、その中から話題を拾う」
「好きにしゃべってもらう」
「ディスカッション」
つまり、インタビューイーに、自由にしゃべらせてはいけません。
いったいなぜでしょう。
インタビューを受ける人の多くは、記事やメディアに関しては素人です。つまり「何が読まれるか」については疎いです。
さらに、彼らがインタビューを受ける理由は、「自分の知名度向上」に役立つからです。
ここに、落とし穴があります。
つまり、インタビューを受ける人物が「話したい事」とメディアの読者が「読みたい事」が往々にして違うのです。
だから、自由にしゃべらせてしまうと、記事はインタビューイーが読者を無視して、話したいことを話すだけ、という最低の成果におわります。
これを回避するために「テーマはメディアが用意する」が必要なのです。
あらかじめ質問を用意しておき、極論すればメディアの思惑に従って「YES」か「NO」かを答えてもらうだけでも良いのです。
つまり、インタビュー記事作成の基本形は「落とし所を決めておいて、その通りに答えてもらえそうな人にインタビューする」というやり方です。
この一連の流れは、仮説をメディアが立て、検証はインタビューによって行う「仮説」→「検証」のサイクルに似ています。
それ故に、インタビュー記事は事前の調整や事後の承諾など、高度な調整を求められます。
「誰が記事として成立しそうなことを言ってくれるか?」を探すのですから、重要なのはインタビューではなく、むしろ「インタビューイーの選定」にあるわけです。
これに絡んで、よく、マスコミが「言ったことと違うことを書かれた」という批判を受けています。
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