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Autifyの資金調達PRで成果を最大化するためにやってよかったこと 〜心得編〜

みなさんこんにちは。ソフトウェアテスト自動化プラットフォームAutifyでマーケティングを担当する丸山です。

Autifyは2021年10月6日にシリーズAでの$10M(約11億円)の資金調達とモバイルネイティブアプリ向けの「Autify for Mobile」のリリースを発表しました。おかげさまでリリースは海外・国内あわせて数十ものメディアに取り上げられ、米国TechCrunchにも掲載されました。

瞬間風速的ではありますが、USマーケットでのリード獲得ペースは平常時の20倍ほどになり、採用の文脈でも、リリース前後で公開したコンテンツで興味をお持ちいただいた or 志望度が跳ね上がったと言っていただける候補者の方が増えました。また、Autifyに関わる指名検索数は資金調達の発表日には平常時の約5倍。以降右肩あがりを続けています。

発表日に指名検索数は跳ね上がり、その後継続的にボリュームが増えている

そんなAutifyの資金調達PRにおいて、どのようにプロジェクトを推進し、成果最大化を図ったかを「心得編」と「実践編」に分け紹介したいと思います。今回は「心得編」です。

また本編に入る前に、今回の資金調達PRはAutifyメンバー、投資家の方々、お客様、社外パートナー等々、極めて多くの方々のご協力で成り立っており、どのような協力が欠けても成し遂げられなかったことを強調しておきます。本当にありがとうございました。

目的志向・目的志向・目的志向

みなさんはAmazonプライムデーや楽天スーパーSALEで買う必要のないものまで買ってしまったことはありますか?自分はあります。

資金調達というイベントは、自社やプロダクトの認知獲得を担うPRやマーケティング担当からすると絶好の「チャンスタイム」です。そしてチャンスタイムを頑張って活かしたくなるのはもはや人間の性です。
こういったときは、普段ビジネスの現場で口酸っぱく言われる「目的から考える」スタンスを死守しなければなりません。機会は人を盲目にします。

チャンスタイムで特に気をつけねばならないのが、チャンスタイム自体が目的化してしまうケースです。
なにかしらのビジネス的な課題や達成したいことがあるから、資金調達PRを頑張る。この順番を死守する必要があります。
機会は目的達成の心強い味方ですが、機会自体は目的になり得ません。Amazonプライムデーでのお買い物自体が目的にならないように。

Autifyの場合、今後採用を加速させるにあたって明確に「ソフトウェア開発界隈やスタートアップ界隈外からの認知獲得」が課題としてあり、その打ち手として資金調達というイベントを活用しない手はありませんでした。

しかし、この状態だとまだ目的としてシャープさにかけます。そんなときは段階的に目的を掘り下げてみることをおすすめします。たとえば、

資金調達PRによって、Autifyの認知を獲得する

資金調達PRによって、未来の採用候補者からのAutifyの認知を獲得する

資金調達PRによって、ソフトウェア開発界隈やスタートアップ界隈外からのAutifyの認知を獲得する

資金調達PRによって、ソフトウェア開発界隈やスタートアップ界隈外にhogehogeといったメッセージングをし、fugafugaという認知を得る

資金調達PRによって、ソフトウェア開発界隈やスタートアップ界隈外にhogehogeといったメッセージングをし、fugafugaという認知を得ることで、彼/彼女の頭に転職がよぎったときにAutifyをpiyopiyoな存在として想起してもらう。

このように、目的を掘り下げていった結果、このポジショニングでこの認知を取りに行くぞ。といったところまで具体化をすることができます。目的がシャープになると、それを成し遂げるために一連のPR活動で何をすべきか。までシャープになってきます。

「目的がフワッとしているな」と感じるときはこのプロセスを踏むことをおすすめします。

ポジショニングを決める。メッセージを決める。尖らせる。

チャンスタイムで人が盲目になるというのはメッセージングを考える際にも同様です。Autifyも資金調達の実施以外にいくつも伝えたいことがありました。

しかし、そういった心には蓋をしなければなりません。なぜならメッセージングがぼやけるためです。

基本的にPR活動のメインのターゲットは「Autifyを知らない人」です。そういった人々に対してシンプルで分かりやすいストーリーを届ける必要があります。知らない会社のよく分からない話では誰にも届かないのです。

Autifyの場合、グローバルに全振りし、すべてのアウトプットが「我々はグローバルNo.1になる」というメッセージにつながるようにしました。

Autifyはまだ社員数2桁台スタートアップでありながら、グローバルマーケットにすでに進出しているという稀有なポジションに位置しています。そして求職者の中でも、このポジションに位置していることに強い魅力を感じる層が一定数いるのではないかという仮説がありました。

ポジショニングを整理したときの初期メモ
上記のポジショニングで得たい認知

もちろん、Autifyの魅力は様々ありますし、様々な層の方にAutifyを知ってもらえるに越したことはありません。しかし、色々なことを伝えようとするとやはりその分メッセージがぼやけてしまいます。

今回の資金調達は、まさにグローバル進出を加速させるためのものだったので、それを全面に押し出し、あらゆるコンテンツがグローバルに対する本気度を示すような形にしました。それによって、我々が稀有なポジションにいることを強烈に認知してもらえるようにしました。

20近くのコンテンツを出したがすべてグローバルに絡める

資金調達PR全体を通して取りに行きたいポジション、取るためのメッセージングを整理したあとで、どういったコンテンツをどのチャネルで届けに行くかを考えます。
この順番を守ることで、各コンテンツ間でブレがなくなり、PR全体を通じて強くて厚みのあるメッセージングができるようになります。

メッセージと世間の接点を考える

メッセージングは1つに絞りましたが、「それをどのような見え方にして世間に届けるか」に関しては様々なパターンがあり得ます。

基本的にメディアも何かしらの目的や、主張したいことがあって取り扱うニュースを選びます。メディア側にも取り扱いたいテーマやコンテクストがあるわけです。

そしてそれを考えることは、世間が何を知りたがっているかを考えることでもあります。
広く多くの人にニュースを届けるためには、世間が知りたがっていることと、我々が伝えたいことの接点を考えます。

グローバルなメッセージングに繋げるにも「なぜ日本人は英語をしゃべれないのか」や「なぜ日本からグローバルスタートアップが生まれにくいのか」といった社会的課題の文脈から「フルリモート勤務の浸透(の結果世界中どこででも働ける)」といった世の中の機運的な文脈まで、グローバルを基点にさまざまな文脈との接点が考えられます。

資金調達というイベントは、切り取り方によっては単にとある会社が外部から資金を調達したというニュースでしかありません。しかし、料理の仕方次第で世間が知りたいこととの接点を作れます。

たとえば、Autifyでは代表の近澤の強い意志と覚悟をもって早々に英語公用語化や日本国外での採用を進めるなど、海外市場での展開を前提に組織を拡大してきました。そして今回の資金調達はその流れを圧倒的に加速させるためのものです。

※資金調達の詳しい背景と、近澤のアツい想いはこちらでご覧いただけます

このような伝え方をすると、前述したような「ではなぜ日本ではそのように最初からグローバルを志向するスタートアップが少ないのか」といった抽象的なテーマから「どのように英語で組織を運営するのか」といった具体的なテーマまで、様々な世間が知りたいこととの接点を見つけることができます。そしてその接点がニュースバリューとなり、世間に対する伝播力となります。

この世間との接点を探る考え方は、こちらの書籍での解説が分かりやすかったです(書籍内では接点のことを社会性と呼んでいます。)

多くのPR担当者にとって既知の内容が多いと思いますが、おすすめです。

全てがメッセージングになると心得る

ウィリアム・シェイクスピアは「行動は雄弁である」という名言を残していますが、これはPR活動にも当てはまります。何を伝えるかだけでなく、その振る舞い自体が企業に対する世間からのパーセプションを形成します。

今回の資金調達PRのメッセージングの根幹は「我々はグローバルNo.1になる」でしたが、どうすればそれがより伝わるかは思慮しました。たとえば今回、本ラウンドから参画した海外投資家と一緒に資金調達の背景を深ぼるイベントを開催しましたが、このイベントは全編英語で実施しました。

もちろん英語開催にすることで参加者が減る(なんなら激減する)のは目に見えていましたが、翻ってそれがグローバルに対する本気度の証明になりました。「あのイベントでグローバルに対する本気度を認識した」というコメントも複数いただきました。

言行を一致させることでメッセージに厚みが増し、中長期的にはそれがブランディングに繋がります。

マーケティングの大家フィリップ・コトラーはブランディングを以下のように定義しています。

ブランドとは、個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ

有形無形問わず、あらゆる側面によってブランドに対する認知は構築されていきますが、イベントの実施方法1つとってもブランドの構成要素となり得ます。資金調達PRの一挙手一投足がメッセージング、そしてブランディングになると心得てプランニングをしていくと良いと思います。


ここまで、資金調達PRをする上で特に心得た点についてご紹介してきました。

心得だけだと非常に説教臭く、「明日から使ってみよう!」といった手軽さがありません。ので、後日「Autifyの資金調達PRでやってよかったこと 〜実践編〜」を公開できたらと思っています。(資金調達PRでの便利なNotionの使い方やらイベントはこのツール使え等々)

そして、Autifyは引き続き積極採用中です。130兆円とも言われるグローバルQA市場を変革する壮大な旅をご一緒できる方を探しています。ご興味ある方はぜひ以下ページよりご応募いただけますと幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。ごきげんよう!



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