22歳、初めての一人旅〜出発前編〜
初めて一人旅をしたのは大学4年生の時。北海道を1週間かけて回った。
なぜ北海道を選んだのかというと、知床に猛烈な憧れがあったから。小学生だったある日、テレビで知床特集みたいなのをやっていて、あの綺麗な映像に心を奪われた。日本にもこんな天国みたいな場所があるんだと。
それから少し経って、新聞に旅行のチラシが入っていた。北海道のツアーがあった。小学生の私には何万円だと高いか安いかとかそんなのわからない。でも母さんが「海外旅行より高いわ」と言っていたから、北海道は金持ちしか行けない所なんだということは頭にインプットされた。死ぬまでに行けたらいいなと、きっと叶わないであろう夢となった。
そんな夢も忘れかけていた頃にチャンスは突然やってきた。私が大学4年生のとき、地元の空港にLCCが現れたのだ。東京まで7,000円!?新幹線で約20,000円かかるのに、飛行機で7,000円ーーーー!?信じられないほどの衝撃だった。貧乏大学生にとって片道13,000円の差はデカすぎる。
待って、もしや… 胸がざわついた。
大都会東京ならば、北海道までのLCCがあるかもしれない。いや、あるに違いない!!私の脳みそが生まれて初めて良い仕事をした。夢の北海道に行けるかも知れない。ドキドキしながら『東京 新千歳 LCC』でググった。
よんせんえん???????
世の中がとんでもないことになっている。「海外旅行よりも高い」あの北海道に片道10,000円ちょいで行けるだなんて。嬉しさと、感動が止まらなかった。
急いで本屋に行き、旅行雑誌るるぶを買った。もちろん知床には行く!せっかくなら美瑛や富良野も行きたい。釧路湿原の夕日も見たい。稚内も帯広も旭川も…
行きたいところ全ての特急列車の料金を調べた。まず新千歳空港から稚内だけでも片道10,000円。全部計算したら軽く50,000円を超えた。それから宿代、食事代、観光…
心が折れた。やっぱり北海道は金持ちが行くところなんだ。
諦めかけたその時、また私の脳みそが閃いた。
“とんでもないことになっているこの世の中だ、きっとお得な電車の切符があるに違いない”と。早速『北海道 切符 お得』でググった。
ノリホウダイ??????
『北海道フリーパス』JR北海道全線(普通・快速・在来線特急)に7日間乗り放題で、お値段なんと27,000円!!
きた!!!これだ!!!!!!もうなんだかこの世の全てにありがとうという気持ちでいっぱいになった。死ぬまでに行けたらいいな…と思っていた場所にこんなに早く行けるなんて。夢の北海道行きは確定した。
しかし7日間は長い…行けるとしたら大学の夏休みが終わる前の9月前半。タイムリミットは1ヶ月を切っている。こんな急に北海道旅行なんて、しかも7日間なんて、一緒に来てくれる友達はいるはずがないと思った。
そうだ、一人で行こう。
そうと決まれば話は早い。貧乏学生に貯金など無い。残り1ヶ月で意地でも金をかき集める!!!バイトの代行はすべて引き受け、派遣会社に登録し、休みの日は派遣のバイトを入れまくった。
私は初めて、派遣でポスティングというバイトをした。団地や住宅街を朝から晩まで練り歩いて一軒一軒ポストにチラシを入れていく仕事だ。真夏に重たいチラシを抱えて一日中外を歩き回るなんて、拷問でしかない。
日も傾いてきた頃、私は迷子になった。派遣会社から持たされた携帯電話の鬼電にも気づかず、自分のスマホの電源も落ちて、いま何時なのか、ここがどこなのかもわからない。疲れはピークで考える余裕など無い。ただただ大通りを目指して朦朧と歩いていた。その頃本部では私の捜索が始まっていたようだ。
暗くなった頃、私は無事に見つけ出された。コテンパンに怒られると思ったがなんだかみんなの様子がおかしい…
なんとまだあと2人見つかってないらしい。笑
この歳で迷子で迷惑をかけるなんて、恥ずかしさと申し訳なさで押し潰されそうになっていた私の気持ちが少〜しだけ軽くなった。その後みんなで1時間ほど捜索して、無事、全員救出。北海道行きさえ無ければ経験しなかったであろう苦い思い出だ。
こうしてなんとか私は10万円を手に入れて、1週間分のシフトの代行を見つけるという難関もクリア。準備は整った。
しかし夢の北海道行きの前に、どうしても倒さなければならない敵がいた。
続く
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