見出し画像

私の「上京」について

思えば、二十年前なのだ、と思う。
私も十八とか二十の時があり、東京への憧れはあった。
私は千葉の町に住んでおり、文字通り息苦しい生活だった。

母と別れた父が東京に居たから、ある日突然、電話一本を入れて、リュックを背負い、東京に来た。
それから、また父と東京で暮らし始めた。

父はタバコを吸い料理もせず、米も炊かなかった。
だから私が炊飯器を買って来て、ジャーでお米を炊いた。
あの頃の東京は、よく覚えている。
小泉氏が総理で、毎日様々なニュースが流れていた。
靖国神社は、父の家から通っている大学の近くにあった。

父から怒られた記憶はほとんどないが、一度だけその記憶がある。

生活費は父から貰っていた。そのお金で缶ビールを買って、とても暑い夏の日に、同居している家の部屋で飲んでいた。
帰って来た父に、「なんでビールを飲むんだ」という事を言われた。
私は、何と言い返したかは忘れたが、父がお酒が嫌いだということを初めて知った。

東京の事はよく覚えている。一人で行った中野ブロードウェイとか、飯田橋の名画座のギンレイホールのこと等を……。

あの頃は色々輝いていた。
部屋でTVドラマの『電車男』を観ていたら、父の部屋からも、同じ音がして、同じ電車男を観ていた。

その後私は大学もやめて、故郷の千葉の町へと帰った。
その後、父は病気になったが、今でもあの時の東京は覚えている。
そういう懐の広い街であって欲しいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?