「蒲団」 田山花袋
久しぶりに、昔の小説を読みたくなった。
現実に面白みを感じなくなると、今の時代に生きにくさを思うと、読みたくなる。
太宰治の書物に惹かれて以来、明治期の小説が好きになった。
今回は、
「田山花袋」 の 「蒲団」 である。
昔の小説は、少し読みにくいとこがあるが、この書物はとても読みやすかった。
スラスラと内容が入ってきて、一瞬で読んでしまった。
夕方授業終わりに学校のベンチに腰掛けて読んでいたら、日が暮れそうになっているくらい面白い小説だった。
< ネタバレ含む >
読み終わって知ったのだが、この作品は、田山花袋自身の日常を描いたものである。
ここまで、鮮明に自分の気持ちを書くことができるのに驚くが、それ以上にこの時代だからこそ書ける作品だと思った。
〜内容〜
妻と子供がいる小説家(男)が女弟子を取るところから始まある。
男は、女弟子に恋を抱き、性的な面でも彼女のことを見るようになる。
弟子として可愛がっているところに、女に彼氏ができることを知る。
男は、嫉妬を抱き、女弟子と彼氏を別れさせようとするが、断固拒否を両者は続ける。
男は処女だと信じていたが、女弟子の告白により、裏切られる。
女弟子を故郷へ帰して、一人寂しく物思いに耽る。
最後には、女弟子が使っていたリボン、蒲団、夜着の匂いを嗅ぎながら顔を埋めて泣いて終わる。
短くまとめるとこんな感じの内容である。
どうでしょう。
今の時代にこんなこと書けますかね。批判のオンパレードのような気がします。
では個人的見解を。
この小説では、人間の「欲」と言うものを綺麗に書いているように思います。
人間は制限をかけなければ、どこまでも堕落します。堕落しないために、法律やルールが定められ、大多数の人が生きやすい世の中が作られています。
しかし、この小説では、そのルールと欲が鮮明に映し出されていてとても魅力的でした。
師弟の関係ではありながらも、恋心を抱く。しかしルール上は師弟の関係を貫きながら、欲求を満たすことがないままこの恋は終わってしまう。
まさに、人間だと思いました。
人間ならではだと。
幸せを追い続けても幸せを感じることの少ない「人間」の姿だと思いました。
動物と人間の違いはまさにここにあるのではないかと思いました。
弱肉強食の世界ではなく、誰もが平等に生きやすい社会を構築している人間なのだと思いました。
要は、自らの欲求を制限をかけながら生きている人間の美しさと儚さを綺麗に描いている素晴らしい小説だと言うことです。
久々に、こんなに面白い小説を読ませてもらいました。
ありがとう。 田山花袋。
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