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詩 / 平和

平和 それは
お母さんの愚痴
おじいちゃんの長話
ぽちゃっとした私のお腹
きみの臭い靴下

青い空 赤い夕日
誰かの笑い声
しずかな夜
つなぎあえる手

***

平和とは、あたり前の日常のこと。そんなことを表現したくてつくった詩。谷川俊太郎さんの『平和』という詩から、着想を得てつくった。

その詩のなかの、「平和/それは花ではなく/花を育てる土」という一節がとっても好き。本当にその通りだ、って思う。特別な一瞬を下支えする、当たり前の日々こそが平和なんだと。

今こうして、鈴虫の声を聴きながらパソコンに向かっていること。友人から他愛もない連絡がくること。まだ洗っていないお皿たちがシンクに積み上がっていること。ああ、なんて平和なんだろう、幸せなんだろう。でもそれを、あえて意識して特別に感謝する必要はないんだよなあとも思う。意識できないほど当たり前の日々をこそ、きっと平和と呼ぶのだから。

平和
それは空気のように
あたりまえなものだ
それを願う必要はない
ただそれを呼吸していればいい

平和
それは今日のように
退屈なものだ
それを歌う必要はない
ただそれに耐えればいい

平和
それは散文のように
素っ気ないものだ
それを祈ることはできない
祈るべき神がいないから

平和
それは花ではなく
花を育てる土
平和
それは歌ではなく
生きた唇

平和
それは旗ではなく
汚れた下着
平和
それは絵ではなく
古い額縁

平和を踏んずけ
平和を使いこなし
手に入れねばならない希望がある
平和と戦い
平和にうち勝って
手に入れねばならぬ喜びがある

谷川俊太郎『平和』

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