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【万葉週話61】万葉集の蝉はヒグラシのみ

こんにちは、京都と奈良の境とはいえ
大阪に越してきてからクマゼミしか聞いていない気がする
絵本作家・万葉作家のまつしたゆうりです。

大阪ではクマゼミが7割、アブラゼミが2割強、
他は2%ほどということですが、
お住まいの蝉事情はいかがでしょうか。

地元の滋賀、湖北地方ではミンミンゼミ、
アブラゼミ、ツクツクホウシ、ニイニイゼミと
いろんな蝉の声を聞き、捕まえてまわったのを
懐かしく思い出します…!
(もちろん、ヒグラシも!)

蝉といえばヒグラシ♪

こんな風にいろんな種類の蝉がいるにも関わらず、
万葉集で詠まれた蝉の名前は「ヒグラシ」のみ。
「カナカナカナ…」と切なく鳴く、あの子です!

蛙も、詠まれているのは、鹿のように鳴く
「カジカガエル」のみなのをみると、
どうやら万葉人の好み的に
「高く、やわらかく、美しく」
歌うように鳴く生き物が良かったよう。

万葉人の歌う歌も、低く響くよりは
高めの鳥のような歌だったのかしら…と、
妄想を膨らませています。

あなたはどう思われます?

夕方に鳴く♪

ヒグラシといえば夏の終り、夕方に鳴くイメージが
ありますが、いかがですか?

インスタライブ中、リアタイしてくださった
万葉部員(先週から発足、脱入会自由(笑))の
皆さまの情報によるとヒグラシは
夏の初めから秋まで、朝も夕方も鳴くそう。
(薄暗い光が好みなのかしら…?!)

万葉集では朝と限定したものは無く、
夕方に鳴く景色を詠まれたものが何首かあります。

万葉集 3589

夕されば ひぐらし来鳴く 生駒山
 越えてぞ我が来る 妹が目を欲り

(訳)夕方になればヒグラシが来て鳴く生駒山を
僕は越えてきました。愛しいあなたを一目見たくて。

これは何回か前にご紹介した“遣新羅使の歌”群の
ひとつ。
これから新羅に行く前の、別れの歌なのでしょうか…。

大阪から奈良への道は、竜田川を越えて来る
比較的なだらかなまわり道と、険しい山道を超える
この生駒越えの道とがあったそう。

この人は、その険しい方を選んででも、
できるだけ急いで会いに来た、っていうのが
伝わります。

こうやって地名から、詠んだ人の気持ちに
近づけるのも、探偵っぽくてちょっと面白いですよね。

秋の花と合う鳴き声♪

万葉集 作者不明

萩の花 咲きたる野辺に
 ひぐらしの 鳴くなるなへに 秋の風吹く

(訳)萩の花が咲く野辺に、ヒグラシの鳴き声とともに秋の風が吹いている

“なへに”は“〜と同時に”という意味の言葉で
ここではヒグラシの鳴き声と同時に
秋の風が吹いていることを表しています。

小さな萩の花が、涼しさの増す秋の風に揺れるなか
ヒグラシの高く粒のように鳴く声が
ボリュームといい色合いといい、
非常にマッチしていて風情がありますよね。

他にも秋の花と詠まれた歌がありますが、
“夏”と一緒に詠まれた歌は無いようです。

聞き飽きない声♪

共著書『よみたい万葉集』内、「万葉新聞 動物号」
でも取り上げているのがこのお歌。

万葉集 2157 作者不明

夕影に 来鳴くひぐらし
 ここだくも 日ごとに聞けど 飽かぬ声かも

(訳)夕影に来て鳴くヒグラシは、こんなにも毎日聞いても飽きないものだなあ〜。

「聞けど飽かぬ」は「見れど飽かぬ」と同じく
素晴らしい景色の表現として良く使われ、
万葉集では皆お気に入り、ヘビロテで使われています。

確かに、ヒグラシの声って景色と馴染んで
ずーーーっと聞いていてもしつこくないというか…
むしろ夕空と一緒に「ずっと聞いていたい!」。

1300年経っても、同じ生き物の声を聞いて
「同じだね」と共感できるのって、
この生き物が残っている環境があるからですよね。

そして、何よりこの『万葉集』を「いいね」と思って
1300年間もの長い間、たくさんの人たちが
伝えて、残し続けてくれたからだなあ〜と。

そう思うと、文化と言語が途絶えなかったことに
心から有難く思うし、これからも
次の世代の人達も楽しめるよう
環境も、文化も、言語も残していきたい。

自分たちのこともですけれど、
他の国のに対しても、同じように
大切にしていけたらと思いつつ。

万葉部、発足?!

先週のインスタライブ内で、皆のいろんな情報を
教えてもらえたり、感想を伝え合ったりできるのって
「部活みたいで楽しいですよね〜♪」とお話したら
部長認定をしていただいたので…
ゆるり何か部活っぽいことが出来たら
「日々のわくわくになるかな?」と
今日はひとつご提案を*

でで。
まずは部員ナンバーを決めません?

ということで。
なんというか…部員番号とかって、楽しくないですか?!
「部員番号○○番」とか言ってみたい!!

ということで、でも最初から順番に付けていっても
面白くないので、イチオシの万葉歌の歌番号を
部員ナンバーとして自己申告していくのはどうでしょう♪

大好きな歌の、歌番号も覚えられて一石二鳥!

ちなみに…
私は万葉集に落とされた、ヒトサマこと
人麻呂歌集のこのお歌!!

万葉集 1068 人麻呂歌集

天の海に 雲の波立ち 
 月の舟 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ

(訳)天の海に雲の波が立ち、月の舟が星の林に漕ぎ隠れるのが見える。

と、いうことで、私は部員ナンバー1068番です!(笑)

イチオシ歌が被ることを考えて、歌番号のあとに
申告してくださった順に、漢数字(壱、弐、参…)
を入れようかなと*

この難しい漢数字は“大字”といって
古くは8世紀の大宝律令にて公式文書の帳簿類に
使うことを義務付けられていたそう。
(時代的にもぴったり!)

「いろは」を振る案もあったのですが、
いろは歌は平安時代末期に流行した『涅槃経』の一部
「諸行無常 是正滅法 生滅滅己 寂滅為楽」を表すと言われているので、ちょっと万葉集のテイストと
ズレるかな〜と今回は見送りで。
(平安っぽい何かがあれば、使ってみたい!)

どうでしょう*
こんな無駄なことが、何よりの贅沢で
楽しい遊びじゃないかな〜と思うこの頃です。

まあ、部活といっても、日々万葉集の歌を読んだり
万葉集の頃のように季節の花や鳥を愛でたり
そんな暮らしを一緒に楽しみませんか〜という、
一緒に楽しむ人がいるっていいよね〜という
ゆる〜い感じです。

よかったら、ゆるゆる部活遊びに
お付き合いくださいませ〜♪
(幽霊部員も大歓迎!)

来週のインスタライブは“露”

来週は二十四節気の白露(はくろ)間近ということで
万葉集の露の歌をご紹介します*

部員番号申告もお待ちしてまーす♪
(ここか、インスタライブのコメント欄へぜひ*)

今週のインスタライブは、通信が安定せず
アーカイブ残せなかったので、部員番号のお話を少しの
動画のみですが↓📺アーカイブ


絵本作家・万葉&民話作家 まつしたゆうり

「心をつなぐ扉を描く」水彩画

共感覚で感じる色と模様を描く。
昔から伝わる物語を、今に届く形にして
お届けしています*

大阪在住、滋賀県長浜出身
大阪芸術大学デザイン学科卒
🌟第5刷 『よみたい万葉集』

初心者から中級者まで楽しんでいただける入門書。


中見パラパラ見れます📖✨↓
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一面に田んぼの広がる田舎町で、
虫と草花と、本を友として育ちました。

幼い頃から 古典と歴史と仏像と恐竜と特撮と漫画とアニメが大好き!
心に触れることで果てしない空想の旅を一緒にできるような作品を作っています。

ゆったり季節に寄り添う暮らしと、日々 野鳥観察&着物。
鳥は愛でるのも食べるのも好き。

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