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【万葉週話60】万葉集の望月の歌

こんにちは。
ここ最近、体の声を聞くようになったからか
体と月のサイクルが一致してきて
満月のときは、ぼーっと緩みがちな
絵本&万葉作家のまつしたゆうりです。

月のリズムと呼吸は似ていて、
吸って緊張し、吐いて緩む、の繰り返し。
満月は緊張MAX、そこから一気に弛緩の
ゆるゆるタイム。

デトックスをしたり、何かを手放したり。
付きの満ち欠けの力を借りて、
体や身の回りのことを進めるエネルギーに変えたいですよね!

望月とは

望月とは旧暦十五日の月、満月のこと。
万葉集ではこんな風に詠まれています。

万葉集 1807 高橋虫麻呂

… 斎(いはひ)子も 妹(いも)にしかめや
 望月(もちづき)の 足(たれ)る面(おも)わに
 花の如(ごと) 咲(ゑ)みて立てれば …

《訳》箱入り娘も、この子には及ばない。
望月のような真ん丸な顔で
花のように笑顔で立てば

物語歌の長歌の一部ですが、こんな風に
みんながときめく女の子の顔の
表現として使われていたり。

望月は、特に旧暦八月十五日の月を指していうそうです。

(「満ち月」から「もちつき」へ語韻変化したのかな〜とも思いつつ)

なぜ月で兎が餅つきをしているのかの話は
アーカイブにて🐰


なぜ旧暦八月十五日の月なのか?

旧暦八月といえば秋まっただ中!

【旧暦の暦】
一月〜三月 春
四月〜六月 夏
七月〜九月 秋
十月〜十二月 冬

一番秋の盛り、ピークの時ですよね。

じゃあ、なぜこの時の月が特別なのか。
月を見るには、ちょうどよい条件がいくつかあります。

①気温
②湿度(空気中の異物の無さ)
③月の高さ

①気温
まずは快適かどうか。
あまりに寒いと、長時間、月を眺めてなんて
いられませんよね!

となると冬は微妙。
夏も虫(主に蚊)がしんどそう…。

②湿度(空気中の異物の無さ)
湿度が高いと、月がくっきり綺麗に見れないそう。
空気中の異物が多いときもそうで、春は花粉や黄砂で
霞ってるのが問題に。

③月の高さ
月は冬の方が高く、夏の方が低く登ります。
位置が低い方が輝きが暗くなりますし、
高く登りすぎると見ているあいだ首が痛くなります。(笑)

なので、これらの条件をみていくと
「秋が一番クリアに見えるし、見ていて快適!」
ということに。

1300年前、月を何に見立てていた?

ひとつめは鏡。

万葉集 1079

真十鏡(まそかがみ) 照るべき月を
 白栲(しろたへ)の 雲か隠せる 天(あま)つ霧かも

《訳》澄んだ鏡のように照るべき月を
白い衣のような雲が隠しているのか、
天の霧だろうか

お月見しているときに雲がかかって
「あーーー!」となる感じ、共感します!

確かにあの薄い雲?は
どっちだろうなあ〜と思いますよね。
(見えそうで見えない感がまたもやもや度MAX)

この頃の鏡は、銅を磨いた銅鏡でした。
「まそ」とは「真澄(ますみ)」の音変化で
立派な、や、澄んだ、という意味だそう。

丁寧に磨かれ、ぴかぴか光る鏡は
不思議で神々しいものに感じたでしょうし、
それが空にかかっていると思うと
なおのこと特別なものだったんじゃないかなと。

見立て、ふたつめは?!

万葉集 240 柿本人麻呂

ひさかたの 天行く月を 網に刺し
 我が大君は 蓋(きぬがさ)にせり

《訳》大空を行く月を網で捕り
私の大君は衣笠にしていらっしゃる

この雄大な響き!!
さっすが“ヒトサマ”こと人麻呂様です。

きぬがさとは、貴人のためにお付きの人が
布製の傘を捧げてる…アレです!(検索ください!)

空の月を捕ってきて、それを自分の
日除けの傘にしちゃうなんて…
大君のパワーの壮大さが伝わるファンタジー表現ですよね!

これは天武天皇の皇子、長皇子(ながのみこ)が
猟路の池に狩猟に行かれたの時の歌。

こういう天皇や皇族のいらっしゃる公的な場で
歌を詠むのが宮廷歌人のお勤め。

今でいうなら、オリンピックの開会式で
歌を歌う人みたいな感じでしょうか。

そこで歌を詠むということは
作歌の腕はもちろんのこと、
詠み歌い上げる能力も非常に高かったと思われ…!
(当時の歌は、必ず声に出して詠まれていた)

なので!
ヒトサマは、もんのすごいイケボで美声で
超絶歌上手い人だったと思われます!!!

はー 生コンサート(?!)聴きたかった…
タイムマシンが欲しくてならない毎日です。


万葉集の頃の月、いかがだったでしょうか*
昔と変わらぬ月ですが、今ならではの見立てをして
遊んでみるのも楽しいのでは♪

明日の満月、皆さんは何に見立てますか?
(私はよくお菓子に見えます(笑))


来週の万葉週話は

夏の終りに、寒蝉(ひぐらし)の歌を♪
(万葉集では蝉はヒグラシしか詠まれていないんです。)

先週の放送中でのコメントの遣り取りや、
アーカイブへのコメントがとても学び深くて
「はっ!」という気づきもたくさんで。

「部活動みたいで嬉しい!」と発言したところ
「部長」認定していただいたので
来週は何か部活?っぽいことを一緒にできたらな〜と
思っています。

よかったら土曜日のAM11:00〜
インスタライブを観にいらしてください〜*
アカウント yuuli_illust

インスタライブ📺アーカイブはこちら↓

絵本作家・万葉&民話作家 まつしたゆうり

「心をつなぐ扉を描く」水彩画

共感覚で感じる色と模様を描く。
昔から伝わる物語を、今に届く形にして
お届けしています*

大阪在住、滋賀県長浜出身
大阪芸術大学デザイン学科卒


🌟第5刷 『よみたい万葉集』

初心者から中級者まで楽しんでいただける入門書。


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一面に田んぼの広がる田舎町で、
虫と草花と、本を友として育ちました。

幼い頃から 古典と歴史と仏像と恐竜と特撮と漫画とアニメが大好き!
心に触れることで果てしない空想の旅を一緒にできるような作品を作っています。

ゆったり季節に寄り添う暮らしと、日々 野鳥観察&着物。
鳥は愛でるのも食べるのも好き。

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