もりた夕貴

1995年生の虚弱社会人 ▶︎小説を書きます/ 本も読みます / 歌詞に惚れがち 日記📓…

もりた夕貴

1995年生の虚弱社会人 ▶︎小説を書きます/ 本も読みます / 歌詞に惚れがち 日記📓「今日も、必死に瀕死」始めました 🦋https://bsky.app/profile/yuuki3o3.bsky.social

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【創作大賞2024 恋愛小説部門】甘く、酸っぱく、君らしく #4【最終話】

――二十年後 『わたしの将来の夢は、パティシエールです。わたしの家は、ケーキ屋さんです。お父さんとおじいちゃんが、毎日ケーキを作っています。お母さんとおばあちゃんは、おいしいコーヒーや紅茶を淹れて、お客さんに出しています。  わたしが、パティシエールになりたいと思ったきっかけは、お父さんとお母さんの、昔のお話を聞いたからです。お母さんが、中学校を休んでいたとき、お父さんがお見舞いにケーキを持って行ったことがあります。それから、二人はとっても仲良しになったそうです。  わたしは

    • 【創作大賞2024 恋愛小説部門】甘く、酸っぱく、君らしく #3

       三日ぶりの学校、教室は、もう知らない場所のように感じた。確かに背中は押されたが、それで全てを乗り越えられるわけじゃない。今日は登校できただけでも上出来じゃないか。教室でひとりぼっちになる自分を想像して、気分が落ちていく。愛奈にも、合わせる顔がない。 「やっぱり今日は、保健室に行こっかな……」 教室に行くのを諦め、人の流れに逆らうように振り返る。すると、後ろから愛奈が歩いてきた。一瞬、緊張が走る。隠れたくもなったが、そんな場所もない。愛奈と目が合うと、驚いたように大きな声で私

      • 【創作大賞2024 恋愛小説部門】甘く、酸っぱく、君らしく #2

        「じゃあ、お母さん仕事行ってくるね。ゆっくり休んで。何かあったら連絡してね」 「……うん」  これは仮病だろうか。仮病でもなんでもよかったのだから、この問いに意味はない。私は、布団を頭まで被って目をつむった。お母さんが車のエンジンをかける。出発すると音は遠ざかっていく。静かになった部屋で、私を笑う声だけが耳にこびりついていた。気持ちがずんと下がっていく感覚があった。  お母さんが作ってくれた朝ごはんも喉を通らず、不意に涙が溢れた朝。普段、新聞紙から目を離さないお父さんが「どう

        • 【創作大賞2024 恋愛小説部門】甘く、酸っぱく、君らしく #1

           小さい頃からお母さんと通っているケーキ屋さんがある。そのケーキ屋さんは、家から歩いて通える場所に佇んでいる。この町の雰囲気によく馴染む、水色の屋根をした小さなお店『スイーツ サトウ』。パティシエのおじさんと、その奥さん、数人の従業員で切り盛りしている。一人息子の佐藤章くんは、私と同級生だ。たまにお店で顔を合わすことがあった。  佐藤くんと、初めて同じクラスになったのは小学校五年生の時だ。教室で顔を合わせた時は「あ、ケーキ屋さんの子だ」と思っただけだった。けれど、いつも通りお

        【創作大賞2024 恋愛小説部門】甘く、酸っぱく、君らしく #4【最終話】

          そして一人になる【短編小説】

           結婚することになった。  お風呂上がりに、通知音が連続して聞こえた。こんばんは、と頭を下げる猫のスタンプと、簡潔にしかし理解に時間のかかる文章が送られてきた。裸のまましゃがんで、何度も何度もその文章に目を滑らせる。膝で押さえつけた胸は、ぐにゃりと形を変え、その奥で心臓がどくどくと走っていた。  結婚。そうか、隆二は結婚するのか。スマートフォンの画面が暗くなった。  最後に顔を合わせたのは、一年前になる。皆の休みが被った、GWのとある一日だった。唯は、その頃は妊娠をしていてお

          そして一人になる【短編小説】

          かれんの友だち【短編小説】

           小野花蓮ちゃんは、私の憧れだ。まず、名前が可愛い。「かれん」なんて可憐な響き、とびっきりの美人にしか似合わない。私はそれを痛感している。 「あ、加藤さんも、かれんって言うの? 同じだね!」  花蓮ちゃんは、にこりと微笑んでいた。同じ名前とか、とボソッと嘲笑したクラスメイトとは違って。私にも微笑んでくれた。  あまりにも個体差が違うことは、誰より私が一番分かっている。さらさらの黒髪も、うるうるの二重の目も、シュッとした輪郭や体型も、きらきらの笑顔も、リンリンと弾ける美しい声も

          かれんの友だち【短編小説】

          『癖』【短編小説】

          「一(にのまえ)くん、友だちになろう!」  握手を求めるように右手が伸びてくる。 「僕は佐々木」 「知ってる、同じクラスだし……」  佐々木は学校の有名人だ。一年生の頃から、全国模試はトップを維持し、運動神経は抜群。ただ、人とのコミュニケーションは苦手なようで、友だちはいない。今でも、らんらんと光る瞳で俺を見つめているが、人によっては恐怖を感じるかもしれない。 「なんで俺?」  窓の外で蝉が鳴いている。特進クラスの夏期講習が始まるのは、あと一時間後だった。 「僕は変な奴が好き

          『癖』【短編小説】

          今日も、必死に瀕死【24.07.02】

          会社にいるのが苦しい。 厳密に言えば、リモート勤務なのでその場には居ないのだが。 年齢層が若いこともあって、元気で活動的で仲が良くて……と言う雰囲気がしんどい。 別に、私だけ歳が離れてるわけでもないのに。 いわゆる『社風が合わない』ってやつです。 あと、チームワークも向いてないです。 業務は頑張れるのに、社風が無理で辞めるって勿体無いのだろうか。 毎日苦しくて仕方ないのに、こんな事で辞めるなんて、と普通の人は思うのだろうか。

          今日も、必死に瀕死【24.07.02】

          今日も、必死に瀕死【24.06.27】

          いわゆる、社会不適合者ってやつです。 成長が見られないのも、これといった得意分野がないのも、私が不出来だからです。 全て力不足です。期待しないでください。 でも、やれといわれたらやります。信頼してください。 ただ、「みんな出来るからあなたも出来る」は違います。私は平均よりずっと何もできません。 比較しなくても、私の実力などわかるでしょう。 お願いだから、母が作ったご飯を美味しく残さず食べられる生活を送らせてください。 必死でした、今日も。

          今日も、必死に瀕死【24.06.27】