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シンガポールに帰りたい

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シンガポールに帰りたい #7

シンガポールに帰りたい #7

Sallyに会うことは、私にとって、人生で大切なイベントだと感じていた。

目標を立てた訳ではなかったけど、その目標を達成するために、私は一生懸命になった。何かに夢中になることは、私にとっては珍しいことだった。

ガイドブックを何冊も買って、シンガポールの観光地を調べた。マーライオンやマリーナベイサンズ、ナイトサファリ、私が知ってることなんてそのくらいだった。

ガイドブックを見ていると、小さい国

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シンガポールに帰りたい #6

シンガポールに帰りたい #6

シンガポールに行くことを決めたけど、そもそもパスポートを持っていなかった。なんせ、最後に海外に行ったのは、14歳の時。とうの昔に期限は切れている。

そう、海外に行ったのだって、18年も前のこと。大学で英語を学んでいた割に、海外に行ってなさすぎた。母親に「何のためにその大学行ったの?」と言われるわけである。

とりあえず、日本の外へ行くために必要なパスポートを取得した。

次に、シンガポールへ行く

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シンガポールに帰りたい #5

シンガポールに帰りたい #5

Sallyとは、Facebookで連絡が取れるようになっていた。

似たもの同士の私たちは、メッセージのやりとりはマメではなく、誕生日や、何かのタイミングで連絡をして、どちらかが返信せずにそのまま終わる、というのを繰り返していた。それが、私たちだった。

とはいえ、最後にメッセージを交わしたのは2015年、その時ですでに4年前だった。本当に長らく連絡をしなかったものだと思う。

早速、メッセージを

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シンガポールに帰りたい #4

シンガポールに帰りたい #4

Sallyとさようならをしてから、私はいつもの大学生活に戻った。日常だった。

それからは、大学で勉強を続け、4年生になる頃には他の人がするように就活をして、無事大学を卒業した。

将来の夢や、やりたいことは特になかった。地元で就職できればよかったから、地元の会社に就職した。別にやりたいことでもなかったけど、自分なりに一生懸命働いた。

新卒で就職した会社は、2年少しで退職した。一生懸命に働いてい

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シンガポールに帰りたい #3

シンガポールに帰りたい #3

Sallyは、私より4つ年上のお姉さんだった。

身長が低くて、とっても細くて、顔が小さくて、屈託のない笑顔が素敵な人だった。メイクは薄くて、さっぱりとした感じ。他のシンガポール人2人は、しっかりメイクしていたからか、1番年上なのに、1番年下に見えた。性格も、さっぱりとした明るい人だった。

彼女たちは、キリスト教の宣教のために日本に来ていたから、一緒にいる時は、“God“の話をすることがあった。

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シンガポールに帰りたい #2

シンガポールに帰りたい #2

Sallyと出会ったのは、2007年の夏。私が大学生の時だった。

大学で英語を専攻していた私は、留学もせずに、大学の授業で英語を話す練習をする日々を過ごしていた。日本人同士で英語を話すことは多く、お互い間違っていてもなんとなく通じる、なんてゆるい感じで学んでいた。

海外からの留学生がいたけど、その人たちの周りにいるのは積極的な学生ばかりで、今でいうパリピ近い雰囲気だった。そんな妙に明るい雰囲気

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シンガポールに帰りたい #1

シンガポールに帰りたい #1

「会いたい人に会いに行くといいよ。」

約2ヶ月間の有休消化期間を前にした私に、苦手だった元上司が言った。その言葉は、ぼーっと生きてきた私を強く突き動かした。

8年間勤めていた会社を、私は辞めることにしていた。多分、そんなにめちゃくちゃには悪い会社ではなかったけど、会社のやり方についていけず、どんどんしんどくなっていった。心はどんどんズタボロに。

「ここにずっといる将来がイメージできない」と、

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