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【読書】チームワーキング-ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方

エイミーエドモンドソンさんが「チームが機能するとはどういうことか」でチームではなくチーミングだとの概念を提示してから数年。

今回、中原先生と田中先生が著した「チームワーキング」でも、チームを「working」な状態からにする、つまりワークし続けなければいけないという視点で書かれていることにエイミーさんとの共通点を感じてしまう。

皆様もご経験のことだろう。期初に立てた目標、方針、ビジョン、あれこれのことは日々業務の中で忘れ去られ、しかも忘れ去られるだけではなく、もはや途中からは現実的でないものに変わり、意味をなさなくなってまた1年後がやってくるというサイクル。

私も幾度も、そのような経験をしている。

チームを機能させて結果をだすために、組織は計画づくりに労力を費やす。質の高い分析をして、適切な意思決定をすることが大事なので、熱心に方法論を学び、情報収集、議論して、綿密に資料をつくりこんでいく。

だけど、それだけ力を入れて、よい目標設定をしたはずなのに、うまくいかないことは頻繁に起こる。個人に割り振られた役割、目標が達成されずに期が終わるのはなぜなのか。

1on1などを通じて日々の振り返りを行い、達成に向けて伴走していくという取り組みは増えているものの、それもあくまで個人のパフォーマンス発揮を支援するための取り組みにすぎない。チーム全体がうまく機能していくという観点での取り組みには足りない感じがする。

もう少し、「どうすれば成果の出るチーム運営ができるのか」ということに正面から向き合って、基本的なチーム運営の考え方を知る必要があるのではないか。そうしたうっすらと誰もが感じていた疑問に切り込んだ新鮮な本である。

この本では、データとケースを用い、科学的に、成果の出るチームは以下の特徴があると明らかにしている。

1)チームメンバー全員が動き、
2)チームの状況を俯瞰する視点を持って、
3)共通の目標に向かってなすべき事をしながら、お互いの仕事に対し相互にフィードバックをし続けている

この定義自体が非常に興味深い。

なぜなら成果の出るチームとはどんな状態が実現している必要があるか、そもそもわかっていなかったのではと思うからだ。

皆様はこの定義をみてどうお感じになるだろうか。

私は1)は当然のこととして今も意識されているが、2)の俯瞰する視点を持たせる取り組みをしているかという点は、今のマネジメントに非常に不足しており、かつ、そのこととも関連して3)のお互いの仕事にフィードバックし合うということが実現されていないというのが多くの組織にあるように感じた。

2)チームメンバー全員が、「チームの状況を俯瞰する視点を持つ」という考え方は、実はマネジメントの考え方の転換が求められる。

というのも、従来はマネジメントのみが知っている情報があり、全体を把握しているのはマネジャーだけであるとの前提があった。そのため、意思決定をすることができるのはマネジャーであり、メンバーに指示を下ろしていくのはマネジャーにしかできないことになっていたと思う。程度の差はあれ、今もそういうマネジメントがなされているところは多いだろう。

それに対して2)が示していることは、マネジメントのポジションにない人であっても、(すべてではなくとも)マネジメントと同程度の情報を持つことが必要であると示唆している。でなければ、チームを俯瞰する視点をもって意思決定をしていくことはできない。これは現場での意思決定へ権限を委譲していくということだと私は捉えている。

上記のような経営を実現するにはどうしたらいいだろうか。私は今チームに対するコーチング、チームコーチが必要になってきていると思う。

チームコーチングとは、いろんな定義があるとは思うが、組織にいるメンバーに今考えていること、見えている現実を本音で語ってもらい、チームが今どういう状態にあるかを見える化していく取り組みのこと。中立な第三者が関わることで、声の大きい人もそうでない人も安心して声を表明でき、そのことによって現状がきちんと可視化され、何をすべきかが見えてくる。

前述したように、今個人レベルでの日々の業務支援としては、1on1が盛り上がりを見せ始めている。1on1の中では個人コーチングの手法が積極的に取り入れられるケースも多く、内省、気づきを促し、主体的に次の行動につなげていくことを支援している。そのことが、目標、タスクを握り直し、成果へ向けて効果的に動き続けることにつながっている。

一方で、チーム全体が今どうなっているかを定期的に振り返ることで、俯瞰する視点を持ち直し、自分が今取り組んでいることがチーム全体にどう影響しているのか、その立ち位置を理解するという機会がない。このチームの現状理解が、個人の日々の業務の振り返りの動きと連携してこそ、チーム全体として効果的な動きへとつながる。

チームを「一人の人間」だと見立てたら、チームに対しても、定期的な1on1の機会、コーチングを受ける機会が必要なのではないだろうか。

チームが気づき、チームが次の動きを決めていく。そのようなイメージ。

中原先生は、チームワーキングに必要な「チームを見つめる3つの視点」として、メンバーに欠かせない「チームの捉え方、チームの見方」は以下3つだと提示している。

①チーム視点:チームの全体像を常に捉える視点
②全員リーダー視点:自らもリーダーたるべく当事者意識を持ってチームの活動に貢献する視点
③動的視点:チームを「動き続けるもの、変わり続けるもの」として捉える視点

この3つの視点をチーム運営のOSとして持つことに、これからのマネジメントは投資していくことが必要だと感じました。

是非お手にとってみてください。

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