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【読書】心理的安全性のつくり方

リクルートで求人広告の営業をしていた20代の私は、スキルも実績もないところからのスタートで、自分に自信もなかったので、どうすれば、経営者の方に「いい提案だね」、「君はよく経営者の視点に立てているね」、さらには「さすが坂口くんだね」というような言葉をもらいたいということをモチベーションに仕事に没頭していた。(恥ずかしながら人に評価されたいという自我ばかりが大きかったように思う。若気の至りではずかしい)

だから、毎日深夜までオフィスで仕事することで、自分は成長できているのではという気持ちになっていた。そのうちに、必死で考えた企画提案がお客さんに評価してもらい、よい仕事ができた!という貢献実感があると、それがまた次のがんばりのエンジンになるというサイクルとなっていた。

そうした自分には、「自ら機会をつくりだし、機会によって自らを変えよ」というリクルートの社訓はキラキラと輝いて見えて、会社の為ではなく”自分のために働く”ことがなにより自信や貢献実感と言う見返りとして自分に還ってくる確かな手ごたえがあった。そうした仕組みに乗せられて、20代は背伸びして頑張っていけたのだと思う。

リクルートのすごさとして言われる、”圧倒的当事者意識”というのは、このようなサイクルを回すことで培われていくものであると思う。

そして、ここからが今回、本を読んで私が言いたいことなのだが、圧倒的な当事者意識が一人ひとりの中に育ち始めた組織では、人は、率直に意見を出すことができるようになる。

自分に対する有能感や自信を一人ひとりがもっているので、会議などでは「私はこう思う」ということを積極的に意見する人が多く、議論が活性化していく。

また、「あいつは面白い提案して目立っているな」「いつも高い目標を達成し続けているな」とチャレンジする人が一目置かれる。そうしたことが日常になることで、変な躊躇をせずに、積極的に主張し、新しい行動ができるという風土ができあがっていく。

心理的安全性は、「他者からの反応に怯えたり、羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分をさらけ出すことができる状態」と定義されている。

この定義を知ったとき、「ああ、これはまさにリクルートが会社としてうまく実現させていることだな」というのがまず最初に私の頭に思い浮かんだことであった。まさに、前述したような私をつくりあげた組織の雰囲気こそ、心理的安全性のある状態ではないかと。

このことは、リクルートの後にいくつかの会社を経験してみてこそよく実感できる。ほとんどの会社にはそこかしこに忖度があるし、率直にものが言える風土はあまりない。そんな心理的安全性がない職場にずっといて、その状態しか経験したことがない人には、なかなか実現できている状態というのがどんなものなのかはイメージするのは難しいのではないだろうか。

「一人ひとりが、個として自立した当事者意識を持てている」ということは、心理的安全性をつくる上で前提として相当効いてくるのではないかということ。

多くの会社でこの観点がないまま、どうすれば意見が言いやすくなるか。どうすればチャレンジしやすくなるかというノウハウに目がいっているように思うところがある。多様性を認める必要があるとか、失敗を許容する必要があるとか、確かにそうなんだけど、それってかけ声やマネジャーの意識だけで到達できるものなのか、、、と疑問に感じてしまうのが率直なところ。

おそらく上意下達で指示を遂行するだけの役割であるとか、自分で工夫できる余地のない仕事などをさせている場合、そうした社員には心理的安全性を感じてもらうことは難しそうである。

個々人の受け持つ領域が、他の領域と優劣なく対等に価値が認められていて、その仕事を責任を持って完結できる裁量が与えられていることで、当事者意識は持てるようになる。    

本の内容では様々具体的アプローチが紹介されているが、その裏には、個を尊重したマネジメント観と、それを可能にする仕組みが用意されていることが、重要な観点だと感じられた。


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