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【漫画×倫理】デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション×デカルトで考える、"絶対"はありうるのか。

〈この記事を読んで欲しい人〉
安定思考で、公務員を目指す大学生。
「絶対やめたほうがいい」が口癖のひと。

タイトルから世界観を感じる、わたし一押しのマンガを、倫理します。

漫画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』9巻での、小山 門出(こやま かどで)の名言を考えます。

私はあなたの、絶対なの。

この作品は、『ソラニン』の作者、浅野にいお先生の作品です。
そして私の考え方を根底から崩すことになった作品でもあります。

一言でいうなら、世界観。


あらすじ

突如東京都に巨大な空飛ぶ円盤がやってくる。そこから侵略者が登場する。自衛隊と侵略者の戦闘が行われることが日常。その中で青春を謳歌する小山門出と中川凰蘭たち。ところで、地球を侵略しているのはどちらでしょうか。


作中の”絶対”

1〜3巻までごく普通の日常が繰り広げられます。
高校を卒業したら次のステップに進学する。女子高生が恋をする。
普通ですよね。ぼくらも絶対とまでは行かずとも、大概そうします。

誰も、あの猫がまさか言葉を話している。
あの機械から出ている変な音が言葉だ、なんて思っていません。
漫画の中でも、人があたりまえのように絶対としている日常が描かれます。

そして、ぼくらが思い描いている絶対。

人間が正義。侵略者は悪。

でも人間が地球を侵略していたらどうでしょう?

本作品を読んで、前提である「絶対」が崩れます。


各キャラクターの”絶対”

小山門出(こやまかどで)が主人公。メガネのショートカット少女。
漫画を1巻から読む限り、今回とりあげた「私はあなたの、絶対なの。」発言をするタイプではない。

中川 凰蘭(なかがわ おうらん)は門出の同級生、通称おんたん。「はにゃにゃフワーッ!」が口癖の変な女の子。主人公のグループを引っ張るお天馬っ子。


ここからネタバレが含まれます。


8巻までこのキャラ設定が続きます。
しかし、本来この2人は紹介したような性格ではありません。
全ての事実は過去編で明らかになります。

この人生は誰かによってつくられたものだとしたら。
隣にいるその人が、一度死んでいるとしたら。

8巻までに描かれる彼女たちを
「このキャラクターはこういう性格」という”絶対”を頭に入れてしまう。
このマンガではその絶対が全てがひっくり返されます。


私たちの”絶対”

僕たちは、この人はこういう人間であると思い込んでいます。
僕たちは、空が青色であると思い込んでいます。
僕たちは、あらゆるものを絶対としすぎています。

その人の過去に何があったのか、このモノは本当に普段使っている用途でしか使えないのか。考えることもなく信じ込んでいます。

そもそも、なぜ私たちはあらゆるものを”絶対”としているのか。
そもそも、絶対なんてものは存在するのか。
そもそも、

この世に疑えないものなんて存在するのか。


デカルトの思想

「絶対が存在するか」を示した人物として、デカルトを紹介します。

デカルトは全てを疑った人物です。
「我思う、故に我あり」が名言。

デカルトは少しでも疑えるものは偽りとし、疑います。
そして残ったものが絶対です。(方法的懐疑

・感覚は、目の錯覚のように、時に間違えるから疑える。
・知識は、1000年後には変わっているかもしれないから疑える。
・経験も、それが夢であると証明できないから疑える。

じゃあ、なになら疑えず、”絶対”とできるか。

今考えている自分です。
疑うという思いは存在している。そしてその思いをもつ身体も存在する。
=我思う、故に我あり。

つまり、この世で絶対と言えるのは、考えている自分です。

見えている世界。友達の性格。
それらは絶対ではありません。


デカルトの思想で『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』を、倫理する。

デカルトが絶対とするのは、考える自分のみ。

「私はあなたの、絶対なの」ということは
門出は、おんたんの考えそのもの、ということになります。

もしくは
門出は、おんたんに絶対を押し付けている、のどちらかです。
他人に自分の”絶対”を押し付ける。
これほど絶対的でないものはありません。

デカルト思想で絶対としていいのは、考える自分のみ。

思考を停止させ、絶対を強制する門出の姿勢は、絶対から程遠いものです。

つまり、門出は絶対ではないということになります。
おんたん自身が考える、それこそが絶対。

現実でも「絶対そっちの方がいい」と押し付けられることありますよね。
他人から押し付けられる絶対なんてないのです。

8巻・9巻で明らかになりますが、
漫画の世界は、おんたんがつくった世界といっても過言ではない。
ある意味、絶対の具現化・現実化がされています。
もしかして、デカルト思想も込められてる漫画なのでしょうか…。


デッドデッドデーモンズデデデデデストラクションは
”絶対”を壊していくストーリー。
過去の”絶対”を壊してから始まるストーリーです。

僕たちも、今見ている「絶対」世界をデストラクション(破壊)すると
新たなストーリーが始まるのではないでしょうか。


この漫画は、シンプルに画が圧巻です。
私の考え方を大きく変えてくれた作品を倫理させていただきました。




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