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恋の終わる音⑤

それから付き合うに至るまでに、時間はかからなかった。

お互いの気持ちを確認しあい、二人の関係は恋人同士となった。

やはり二個上ともなると、自分の『子供っぽさ』が露呈する。

私は大学生、相手は社会人。

この差は一体どう埋めればいいのか、考えては悩む日々を送った。

会える日を大切にしようと、毎回会うときにそう心に決めていた。

しかし、社会というのはとても厳しいのだろう。

デートの最初は元気だが、段々と次の日の仕事だったり

やらなくてはならないことが頭に浮かんでくるそうだ。

それが話の節々から感じられて、楽しめないことがお互いに多かった。

一年目だったからなおさらなのかもしれない。

切羽詰まった中で、「自分という存在は邪魔でしかないのかな」と思った。

そんな気持ちを抱くのが辛かった。

しかし、その感情には目をつぶった。

『別れたくないから』

『また一人になりたくないから』

好きな人に愛されない寂しさ、必要とされない苦しさ

恋愛を経験したことがある人は誰もがあるだろう。

そして抜け出すには、新しい愛を探し求めることだということも。


こんな状況で付き合っても終わりが来るのは明白だった。

バイト帰りにポケットの中のスマホが鳴る。

少し前までは嬉しかった音も、今は私の胸を締め付ける。

開くのが怖かった。

未読にしたまま、内容だけを読んで悟る。

『また振られるんだ、』

食らいつこうと、返信の言葉を考えて打つ。

『まだ別れたくない、私はまだあなたのことが大好きだよ。』

どれだけ考えても、結局はこれが言いたいのだった。

「ありがとう。でも、ごめんなさい。

あなたは何も悪くないから気にしないで。

そんなのずるいよ。

恋人関係において、自己完結は時に相手をひどく傷つける。

最後の最後に信頼されてなかったと、レッテルを張られるからだ。

自己完結。

聞こえはいいがこの言葉を私は好かない。

嫌いだ。ただの自己中心な考えじゃないか。

そんな言葉で捨てられる自分が嫌いだ。













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