Hiroaki Yutani

読んだ本のこととか聴いた音楽のことを書きます。

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    モジュラーシンセ初心者によるモジュラーシンセ関連のメモ

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意味のない文章を書きたい。

相づちのポイントは、何も言わないことにある。 俺は関西人なので、相づちの音は文字にすると、 「おん」 みたいになる気がするけど、正直なんと書き表せばいいか興味がない、ほどに相づちは意味を持たない。相づちは、実質何も言ってないからこそ無限の可能性があるし、未来にパスをつなげる戦略的な一手だし、くるりは君の弱さを探せる。 文章もそのようであるべきだと思っている。意味のあることを書いてはいけない。いや、意味のないことを書け、と言っているのではない。我々は、うっかり意味を踏み

    • 最近聴いた曲(2024年5~6月)

      2か月だけだけどなんかいっぱい聴いてた気がするのでメモっておく。今回は割とアルバムで聴いてたのでアルバムの名前で書いておく。 Broadcast - Spell Blanket - Collected Demos 2006​-​2009Broadcast の未発表曲集。Broadcast は大学生のころに聴きまくっていたのでつい聴いてしまう。思い出補正みたいなところあるけど、まあでもこういう未完成な感じが Broadcast のわりと好きなとこなのでいい感じな気はする。

      • 樋口恵一郎『良いFAQの書き方──ユーザーの「わからない」を解決するための文章術』

        はじめに書いておくと、この本、タイトルを見て「おっ、面白そう、買ってみようかな」と思う人はそこそこいそうだけど、書かれている内容はたぶん多くの人にとっては直接は役に立たない。この本は、そこそこの規模のFAQを念頭に書いていて、「チーム内のノウハウ共有のためにちょっと FAQ を作ってみようかな」という程度の気持ちではちょっと取り組めないレベルのものになっている(し、たぶん相手がユーザーなのとチームメンバーなのとでは取るべき態度も違ってくる)。 でも、だからこそ、普段は接する

        • カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

          (これは、2017年に昔のブログに書いたやつをほぼそのまま移してきたものです) という本題とはまったく関係ないところで出てくる一文がなぜか印象に残った。 この本は「存在しないはずの問題」について語る本ではない。存在しないはずの問題は存在しない。人間とは、とか、平等とは、とか、そういう小難しい問題は、この本の中には出てこない。 主人公たちに不利な社会の仕組みは、当たり前のものとして存在していて、ことさらに解説されたりはしない。彼女たちは、その社会を、待ち受ける死を、当たり

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          ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』

          (これは、2016年に昔のブログに書いたやつをほぼそのまま移してきたものです) ある本を「読む」というのはいったいどういうことなのか、という命題を掘り下げていく本。冒頭でバイヤールは、「読んでいない」という言葉に対して切り込みを入れる。 こうしてバイヤールは、「読んでいない」を擁護するばかりではなく、「読んだ」という概念に揺さぶりをかけていく。 本は、著者の意図通りに読まれるわけではない。さまざまに読まれ、あるいは読み飛ばされ、解釈され、伝聞され、さらには忘れられ、記憶

          ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』

          最近聴いた曲(2023年末~2024年春)

          わりとアルバムで聴いてるけど適当に1曲選んだり選ばなかったりしてメモっておく。 group_inou - HAPPY実はあまりリアルタイムで聴いてなかったので復活嬉しい。ミーハーなのでライブも行きたい。 Elephant Gym - WORLD大象體操。台湾のスリーピースバンド。今回のアルバムはほとんどの曲にゲストがいて、これまでと違う感じの音が聴けて面白かった。 Sam Wilkes & Jacob Mann - Perform the Compositions of

          最近聴いた曲(2023年末~2024年春)

          『Citizen Sleeper』の日本語版がついに出る。

          『Citizen Sleeper』は2022年5月に発売されたテーブルトークRPG風のアドベンチャーゲームだ。発売から2年、ついに2月1日に日本語版が出る。ゲームの紹介は書きなれてないけど、最高のSF小説なのでおすすめしたい、というこの気持ちを文字にしてみる。 「スリーパー」。人格をエミュレートし、ロボットの身体を持つ主人公は、この世界でそう呼ばれる存在だ。 スリーパーは、その心も体も自分のものではない。人格は元の人間のコピーであり、ボディは巨大テクノロジー企業・エッセン

          『Citizen Sleeper』の日本語版がついに出る。

          2023年にやったインディーゲーム

          特に書くほどのことはないけど、なんとなくメモっておこうと思い。ネタバレがあるものについては(ネタバレあり)と書いたので注意してください。 14種のマインスイーパーバリエーションLayerQさんの配信で知ったパズルゲーム。詰め将棋ならぬ詰めマインスイーパー。「14種」というのは追加ルール(例:地雷マスは必ず隣り合う、数字が嘘)の種類で、ただでさえ難しいのに、ルールごとに思考のモードを変えないといけなくて、頭がパンクしそうになる。それだけに解けた時には快感がある。 UIがおし

          2023年にやったインディーゲーム

          今年の10曲(2023年)

          毎年書いている、この1年で聴いた曲の個人的な備忘録。去年のはこれ。 Sampha - Spirit 2.0今年いちばんを選べ、と言われれば、さすがに Sampha でしょう。長らくゲストシンガーとして名を馳せた孤高の天才が、ついに主役として羽ばたいた歴史的瞬間だった。 Sampha は昔からすごかった。一声聴けば唯一無二だとわかる。わかった。12年前に SBRKT の『Hold On』という曲を聴いて、俺はわからされた。いやー、ゲストでこんだけ存在感あるし、ソロを出した日

          今年の10曲(2023年)

          川越宗一『熱源』

          近所にいい感じの居酒屋を見つけたので、のんびりおでんを食べていると、恰幅のいいおじさんが隣の女性に向かって、 「北海道は、開拓されてまだ200年も経ってないので、文化がない」 などと持論を語り出した。よりにもよって、この本を開いているおれの横で。 熱源、というものがこの冷めた自分にももしあるとすれば、それは、この時、胸の奥に灯った「は?」みたいな気持ちなのだと思う。「開拓」されるずっと前からそこに人は生きている。文化もある。なのに、そのディテールをなかったことにするよう

          川越宗一『熱源』

          RRRの感想メモ(ネタバレあり)

          2か月前にRRRを観た。 感想としてはこれに尽きるし、すばらしい映画なのでみんな観てほしいけど、若干もやもやしたので感想を書き残しておく。まだ観てない、という人は、おれのこの駄文を読むより前にまず逆噴射先生の檄文を読み、今すぐ観に行く(あるいは、1月20日からドルビーシネマ上映らしいので、それを待つ)とよいと思う。 RRRの舞台は、1920年、大英帝国の過酷な植民地支配にあるインドだ。1920年というと、第一次世界大戦の2年後。第一次世界大戦でイギリスは、戦争に協力する見

          RRRの感想メモ(ネタバレあり)

          2023年(に出るはずの)期待のインディーゲーム

          個人的に気になってるタイトルをメモっておく。はたしてこの中で何本が実際リリースされるのか…。 Hades IIギリシャ神話の神々が闘う爽快ローグライク・Hadesの続編。正式リリースはたぶんまだ先だが、アーリーアクセスは2023年予定。個人的に一番期待しているタイトル。 Steam: https://store.steampowered.com/app/1145350/ SCHiM影から影にぴょんぴょんするゲーム。とにかく絵と音楽がいい。まだ20歳のオランダ人がほぼひと

          2023年(に出るはずの)期待のインディーゲーム

          スイーツ激戦区北千住でおすすめの店(2022年末)

          思い立ってメモっておく。順不同。だいたい今月出たoz magazine 北千住特集号に載ってるのでそっちを買って読むといいと思う。 いのこ菓子店路地にあるふつうの一軒家みたいな店。知る人ぞ知る名店、みたいな風情から察せられる通りに、なにもかもがおいしい。素朴だけどワンランク上の味。圧倒的におすすめ。 BUoY cafe2階は元ボウリング場、地下は元銭湯、という廃墟を改装してできたアートスペース、の元ボウリング場の方にあるカフェ。 とにかく居心地がいい。というのは、セオリ

          スイーツ激戦区北千住でおすすめの店(2022年末)

          今年の10曲(2022年)

          毎年書いている、この1年で聴いた曲の個人的な備忘録。去年のはこれ。 Citizen Sleeper soundtrack今年はインディーゲームのサントラを聴くことに目覚めた年でもあった。中でも、このCitizen SleeperというSFテーブルトークRPGのサントラは、今年一番聴いたアルバムだ。うたた寝から覚める時のぼんやりした気持ちよさに、広大な世界に放り出される時の不安感が付きまとってくるような感覚。作者のプロフィールを見ると、「Boards of CanadaやBr

          今年の10曲(2022年)

          来年はインディーゲーム配信系ユーチューバーとしてがんばりたい

          というタイトルは釣りだけど、インディーゲーム用のYouTubeチャンネルをつくったのでよかったらどうぞ。あんまりがんばるつもりはなく、積んでいるインディーゲームを消化するためのチャンネルです。 インディーゲームとは何かゲーム産業は巨大化していて、いまや大手ゲーム会社が出すゲーム(AAAと呼ばれる)は数百億円もの開発費を投入してつくられている。一方で、そうではない、小規模で開発されたゲームもある。こうしたゲームが、インディーゲームと呼ばれている。とはいえ、「ではない」系の概念

          来年はインディーゲーム配信系ユーチューバーとしてがんばりたい

          「コピペプログラマの心得~この大AI時代を生き抜くための三箇条~」みたいなものが書きたくなった時のための下書き

          ChatGPTでプログラムも書けちゃうからもうプログラマは失業じゃん、みたいなことが巷で囁かれている。 と聞いて不安になるのは二流三流で、一人前のコピペプログラマとして生き抜いてきたおれは、ふーん、くらいに思っている。「コピペプログラミング」という概念の射程は広い。AI様にプログラミングさせたコードをコピペするのも、ググって出てきたコードをコピペするのも、本質的にはそんなに変わらなくない? コピペは、ガラス細工のように脆く儚い。コピペとはアートなのだ。 それがコピペで済

          「コピペプログラマの心得~この大AI時代を生き抜くための三箇条~」みたいなものが書きたくなった時のための下書き