幸田文『台所のおと』
この本の表題作『台所のおと』は、鷲田清一の『「聴く」ことの力 ― 臨床哲学試論』という本で〈ふれる〉と〈さわる〉という概念の違いについて説明する中で、題材に使われていて知った。『台所のおと』について紹介する前に、まずはこの鷲田の『台所のおと』の紹介を紹介したい。とてもぐっとくるので。
「ふれる」のと「さわる」のはどう違うのか。ここで鷲田はもっと多義的な、厚みのある説明をしているが、平たく言えば、「ふれる」というのは相互に干渉がある(「ふれあい」)が、「さわる」はさわる側とさ