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文法って素晴らしい
日曜日の夜は前から楽しみにしていた食事会だった。女友達ふたりと、美味しいインド料理を食べに行く約束をしていたのだ。台風の影響でそもそも行けるのかが心配されていたが、雨はかなり強く降っていたもののレストランも営業していたし、電車もきちんと動いていた。
料理は美味しく、それぞれキャラクターの違った知的なふたりとの会話も楽しかった。全員が全く違う業界に属していたことも、その会のいいスパイスになっていたようだ。
「何か新しいことを始めるにあたって、英語以外の言語が必要になるとそれがものすごい高い壁に感じてしまって諦めてしまうから、フランス語をゼロから学んでそこからフレグランスの世界に入ったことがすごいと思う」
ひとりからそんな評価をもらった。彼女に関しては、英語ができてしまうからこそ、あえて他の言語を習得するというのが“億劫”に感じてしまう、という側面もあったのかもしれない。
このnoteでは何度か書いているが、語学の学習というのは得てして“コスパ”の悪いものだと思料する。習得するための時間や労力は途方もない一方、ネイティブのレベルに到達することはほぼ不可能だ。私にしたって、語学学校に1年半、フランスの大学院に1年半通って、ようやくビジネスレベルのフランス語が身についた程度なのだ。
ただ、その語学学習の中で、私は大きな気づきを得た。それは、「文法の素晴らしさ」だ。
大人になってからの語学の勉強で蔑ろにされがちな文法であるが、ある程度以上の年齢になってから未知の言語を習得するにあたっては本来避けて通れないものだ。パリに長いこと住んでいる外国人の中にも、特段文法事項の勉強をしてこなかったが故に全くフランス語を話せないという人が多数いる。
文法の勉強が嫌厭される背景には、やはり「めんどくさい」ということがあるだろう。確かに文法事項はめんどくさい。覚えることは多いし、自然言語であるために必ずしも合理的な設計にはなっていない。
ただ、私が文法を素晴らしいと感じるのは、それがその言語を通して世界を見る際の“見え方”を示しているからだ。フランス語は世界のどのように捉え、そして表現しているか、ということが、フランス語文法にはしっかりと反映されているのだ。
例えとして適切かはわからないが、フランス語というカメラの各機能が文法事項といってもいいかもしれない。どこまでズームできるのか、絞りやシャッタースピードはどうなっているのか、動画は撮れるのか、等々、カメラによって世界の切り取り方が異なるように、言語によって世界の表現は変わってくる。それが凝縮されているのが文法なのだ。
言語を習得するということは新しい世界の見方を獲得することに他ならない。その時に、文法は新しい見方をもたらす新しいカメラの説明書のようなものだと考えていいだろう。それがあることで、それまでそのカメラを使ったことがない人も、きちんと操作できるようになる。
問題は、その説明書が長くて難解である、ということではあるが…そこは、頑張って解読しましょう。
文法を勉強する際は、まずは母語で中級レベルくらいまでを習得することを個人的にはおすすめする。フランス語の学習の際に最初からフランス語のみで挑戦しようとする人がいるが、文法事項の理解度が下がるのであまりいい方法ではないと思う(もっと酷いケースはフランス語を母語ではない英語等で学習すること。絶対にやめた方がいいと思う)。文法事項がある程度頭に入ったら、今後はその学習している言語で勉強するとより理解が深まる。上級文法はそれ以外の言語だとどうしても説明できない部分が出てきてしまうからだ。
いずれにしても、大人になってからフランス語を学習した私が声を大にして言いたいのは、語学学習における文法の重要さはもちろんのこと、それ以上に文法を知ることの楽しさである。文法を知ることで、この複雑な世界が、少しだけ簡単になる。それは、数学や物理の定理を知った時のあの感動に通じるものがあると、私は思うのです。
ところで、今年はイタリア語の勉強をしようと思っていたのだが、9月に入った今もまだきちんと手をつけられていない。
そろそろやり始めようかな、文法事項から。
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