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偶然なのか必然なのか。まあどっちでも


元々お酒はそんなに飲めるわけではない。学生の頃はおいしいと感じたことがなく酔って楽しくなるために飲むものだと思っていた。ただ不思議なことに社会人として働き始めてからは、何が変わったのかは分からないが、お酒がおいしいと感じるようになった。お酒との関係はそんなところだろうか。

ある冬のこと、出張で北海道の釧路に行くことがあった。以前真冬の旭川と北見に行ったことがあったのでそれと比べればましだが、2月になったばかりの釧路はそれでもマイナス10度を下回るという大阪に住む自分がまず体感することのない世界だった。

現地で東京と横浜から来た会社の先輩と久々の再会を果たし、仕事が終わってから夜に一緒に飲みに行くことに。せっかくなので名物が食べたかったが、全員釧路は初めてで、何が名物かもよく分かっていない。趣味でよく食べ飲み歩きをしていて、20代なのに痛風予備軍だというグルメパイセンの勘に任せて街に繰り出した。

店の料理の写真を見ればうまいかどうかがすぐに分かるという特殊能力を持つその先輩が調べて、間違いないと言う店に向かうことに。数軒回ったが、どうやらどの店も観光客らしき人はおらず地元の人で賑わっているようだった。

シンプルだけど素材が新鮮で素晴らしく、それが存分に生かされた料理ばかりだった。海鮮が有名なだけあって、オヒョウ、ししゃも寿司、真タチの天ぷらなどなかなか道外ではお目にかかれないものばかり味わえ、地元でしか流通しないというその日の朝獲れた鹿の刺身、真鴨などの貴重なジビエも臭みが1ミリもなく、うまみが溢れ瑞々しかった。

それまでわいわい喋っていたみんなが料理に手をつけ始めると、思わず全員顔を見合わせ、目だけでその感動を伝え合い、黙って味わい尽くしていた。自然とお酒も進んでいく。結局滞在中三日三晩飲み歩いてしまったが、そのおかげで色々なお店を回ることができた。

二日目の途中、どこにでもある居酒屋チェーンに入り、枝豆と唐揚げを頼んで「そうそう、普段俺たちってこれなんだよなー。なんか安心するわ」と一息入れる一幕もあるほど、それまでの店が "強い" のだ。時々そういう慣れた店で "薄めて" いかないともたない。

料理とお酒が美味しいだけでも感動するのかもしれないが、より特別なものにしてくれたのは人だった。釧路のあれこれを教えてくれるお店の人たち、「どこから来たの? 寒いでしょ今の季節!(笑)」と気軽に話しかけてくれる地元のお客さん、自然と会話が生まれるようなお店の親しみやすい雰囲気がその体験を思い出深いものにしてくれた。

自由な時間があったのは夜だけで昼の様子はあまり分からなかったが、また来たいと思った。こうやってまた行きたい街が増えていく。知らない土地に来たらあえて余計な予備知識を入れずに、時には野生の勘に従ってみるのもいいかもしれない。いつもその時その場での出会いを楽しめるようになれたらいいな。







#ここで飲むしあわせ

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