セレッソ大阪の同期が見た香川真司/【「心が震えるか、否か。」発売記念で毎日更新!2日目】
「心が震えるか、否か。」の制作にあたっては、多くの著名人に取材をさせていただきました。
岡田武史さん、小栗旬さん、小菊昭雄さん、反町康治さん、中村憲剛さん、槙野智章選手、丸岡満選手、三浦知良選手、吉田靖さん(五十音順)をはじめとした方々です。
それ以外にも多くの方の話を聞き、本書は構成されています。そのなかには断腸の思いで、削らせていただいたパートも数多くあります。
多くの方にこの本を手に取ってもらうためにも、販売価格を抑えるためにページ数をしぼる必要がありました(とはいえ、全380ページの長編で、各ページに2段組で文章が入るというかなりの情報量ですが)。
ただ、それらのお話が陽の目を見ないままのは、あまりにもモッタイナイ!
というわけで、関係者にご快諾いただき、noteでその一部を紹介させてもらえることになりました。
今回は、香川選手と同じタイミングでセレッソ大阪に入団した有村直紀さんによる、香川選手についてのお話です。
有村直紀さん(熊本県水俣市出身。秀岳館高校卒業後2006年セレッソ入団、2007年退団)
プロフィールはこちら↓
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僕は熊本の出身なので、入団会見の数日前に入寮したんです。寮に着いたら、食堂でご飯を食べている子がいて。それが真司との出会いでした。
「地味な子だなぁ」というのが最初の印象です。僕も熊本から出てきたばかりで右も左もわからない感じだったので、そのときは「こんちには」と言葉をかわしたくらいでした。
あと、妙に鮮明に覚えているのは、真司が寮で勉強している姿です。「何、してるの?」と聞いたら、「まだ高校生だから!」と言われて、真司は僕らよりも若いんだよなぁと思ったり……(*香川選手は高校2年の終わりにセレッソに入団)。
当時は、舞洲にある現在のセレッソ練習場が出来る前で、南津守の練習場を使っていました。寮から練習場まで自転車でだいたい15分くらいの距離で、真司と一緒に自転車で通っていました。
新人選手は8人いましたが、個性的な面々がそろっていましたね。練習が終わってすぐに帰る選手もいれば、いつまでも残っている選手もいました。
真司、山下(達也)、塁さん(小松塁)、僕の4人はだいたい最後まで残って練習していた記憶があります。真司はグラウンドを最後に出て、グラウンドに向かってお辞儀をしてから帰るようなタイプだった気がします。「こいつ、意識高いなぁ」とひそかに感じていましたね。
僕らは新人だったので、トップチームの試合に簡単に出られるはずがありませんでした。ただ、その状況に対しての態度は様々で。
「俺を出してくれ! 俺の方が良いプレーができるんや」と言うタイプから、「オレはまだまだ試合に出る実力なんてないよ」と考えるタイプまでいました。
真司はそういうことは口にせず、黙々と練習するタイプでしたね。
やはり、高校からプロの世界に入ると、レベルの差が大きいから精神的にもキツイんです。僕も、メンタルはボロボロでした。走るのは苦にしないタイプだったのですが、テクニックはあまりなく、下手な選手だったので。
「もう俺は無理や。ついていけんわ」
そんな風に真司に相談することもありました。真司は一つ下ですけど、なぜでしょうか、相談しやすかったんですよね。雄弁に何かを語るタイプではないですが、こんな風に励まされたのは覚えています。
「無理と思ったら無理やで! 練習するしかないよ」
その後、セレッソを退団してザスパ草津でプレーしたのですが、プロをやめてからは故郷の熊本に帰りました。真司とはしばらく連絡もとっていなかったのですが……。
「香川真司が宮崎に来て、自主トレをしているらしいね。何か知っている?」
宮崎に住む知り合いから聞かれたことがありました。2016年の夏のことです。
僕は熊本県のなかでも宮崎県に近いところに住んでいるのですが、「いや、知らんよ」とそのときは返しました。
ただ、携帯電話をみたら、電話帳には真司の電話番号がまだ入っていました。
もう何年も連絡は取っていないし、あれだけ注目される立場になってから連絡するのもいやらしいかなと悩んだりもしたのですが……勇気を振りしぼって電話してみたんです。
そうしたら、わずか2コールくらいした時点で電話に出てくれて。
「おー、有ちゃん、元気? どうして、こんなに長い間、連絡くれなかったの?!」
僕の電話番号がまだ電話帳に登録されていたみたいで、いきなり、そんなテンションでした。それが、嬉しかった。
真司が自主トレをやっているエリアから、それほど遠くないところに僕が住んでいることを伝えたら……。
「今夜、練習の後にバーベキューするから来てよ!!」
まぁ………
かなり、急な誘いですよね(笑)
ちょうど自主トレをして、一緒にボールを蹴れる人が多ければ、色々なメニューができると考えて、誘ってくれたのかもしれません。
とにかく、そこから僕も急きょ現地に向かうことになりました。僕は結婚していて、子どももいるので「うちの家族と一緒に行ってもいい?」と聞いたら、嫌がることもなく、快諾してくれました。
その日は現地のホテルに泊らせてもらって、次の日からは一緒にトレーニングをすることになりました。
翌日、練習の初めに軽いランニングをしているときでした。
「有ちゃん、オレがこんな風になると予想していた?(笑)」
真司は笑顔でそう声をかけてくれて。
「あぁ、真司って、昔と全く変わってないなぁ」
そう思って、また嬉しくなっちゃいました。彼が有名になったのを知って、いきなり連絡してくるような、”知り合い”も多いだろうから、僕などが気軽に電話をかけたら迷惑だろうと思っていたことも伝えましたが……。
「いや、いや、そんなん、関係ないやん!」
そんな感じで一蹴されました。真司は、僕らが新人の頃と変わらない態度で接してくれたんです。
そこからは、日本での自主トレの手伝いをしてもらうようになりました。翌年の夏に宮崎で自主トレをしたときも、ロシアW杯の少し前、日本代表の合宿が始まる直前の神戸で自主トレをするときなどにも呼んでもらい、一緒にボールを蹴りました。
僕は今もサッカー関係の仕事をしているとはいえ、引退してから時間がたっているので、真司と一緒に練習をする1か月前からは個人的に体力アップのために身体を動かさないといけないんです(笑)
でも、今はそれすらも楽しみにしているんですよ。
*自主トレの打ち上げで魚を持ち上げる有村さん
「心が震えるか、否か。」をお買い求めやすいように、主な販売サイトのリンクを以下に貼らせていただきます。
アマゾン https://amazon.co.jp/dp/4344037227
楽天 https://books.rakuten.co.jp/rb/16680856/
紀伊国屋書店 https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784344037229
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