モイモイ!フィンランド紀行(四)

普段見慣れているものと、そのものの本当の姿はまったく違う、という話。

茨城の田舎で高校生まで過ごした僕にとっては、東京の空はなんだか明るすぎる。もっと正確には、明るすぎるとも思わない、というか、特になんの感想もない。田舎が好きなわけじゃないし、東京の空は東京の空で全然好きだけど、こと夜空に関しては、何の感慨もない。それよりも、東京タワーとか人工的な構造物の方がまだグッとくる。このソフィスティケートされたメトロポリスの夜空に、特段価値はないと思う。「星の数ほど」という形容は、だからそのうち、東京においては、数が多いことを意味しなくなるのかもしれない。

2日目の晩は、寝ながらオーロラが見えると評判のガラスイグルーに宿泊することになっていた。スノーヴィレッジからイグルーのある場所まで移動。その間も外は全くの白銀世界。本当にびっくりするくらい、雪と針葉樹しかない。イグルーに着いたら夕ご飯。前菜が、サーモンの燻製に、エビとカニとキュウリのカナッペ。メインは魚料理。マッシュポテトと鱈のグリル。デザートはラズベリーパイ。まあまあ。食べ終わったらイグルーに戻ってオーロラが出るまで待機。オーロラは、夜10時過ぎくらいから出る可能性が高くなるそう。ただ、自然現象なので何とも言えないそうな。

この日の夜は快晴。ひたすらに月がキレイだった。まるで太陽のように輝いていて、月だけで雪の上に影が出来た。そして月と同じように、星々も美しかった。ひとつひとつの星が粒立っていて、ストイックにシンプルに主張していた。オリオン座、北斗七星は特に明るく見えた。北極星を中心とする夜空の回転が速い。あっという間に星座がクルクルと移動してしまう。

夕食を食べ終えたのが8時。そのあと、仮眠をとって10時に起きたら、なんとオーロラが見えていました。相方と二人、急いで服を着込み、外へと飛び出す。目の前にあったのは、紛れもなくオーロラでした。それは僕らが写真で見ているようなくっきりとした緑のカーテンではなく、風に揺らめき、ぼんやりと色を変えながら夜空に漂う、不思議な靄のようなもの。この旅に出る前に読んだ『TRANSIT』に書いてあったけど、オーロラは昔の人にとっては、不吉なことの予兆だったらしい。そう思えば、幽霊、あるいは狐火のようにも見える。

相方と奮闘し、といっても僕はほとんど何もしていないが、オーロラをカメラにおさめる。寒い中、ISO感度やシャッタースピードを変えながら、何も見えない虚空にピントを合わせ、何度も調整を繰り返して写真を撮る作業は本当に大変です。2人で頑張って撮れた写真がこちら。オーロラをつかまえることができました。


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