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女性外科医の方が男性外科医よりも、患者の術後死亡率が低いことが明らかに

私たちの研究グループは、アメリカの65歳以上の大規模医療データを用いて、(1)手術後の死亡率は、女性外科医が執刀した女性患者で一番低く、男性外科医が執刀した患者で一番高いこと、そして(2)男性外科医と比べて女性外科医の方が予定手術において死亡率がわずかに低いことを明らかにしました。この研究は、2023年11月22日に国際的な医学雑誌であるBMJにオンライン掲載されました。

患者と医師の性別の一致は、より効果的な患者–医師間のコミュニケーション、(意識的もしくは無意識的な)性別に基づいた偏見の軽減、患者と医師のより良い信頼関係を通じて、医療の質の向上に関連することが分かっています。しかしながら、外科手術を受ける患者において、患者と外科医の性別の一致によって術後死亡率が異なるかについては十分に分かっていませんでした。

そこで、私たちは、アメリカの全国規模の医療データであるメディケアの診療報酬明細データを用いて、患者と外科医の性別の一致が術後死亡率と関連しているかどうかを評価しました。

2016年から2019年の間にアメリカで外科手術を受けた65歳から99歳の約300万人において、患者の特性(年齢、人種、併存疾患など)、外科医の特性(年齢、経験年数、手術の症例数など)、および手術が行われた病院の特性を統計的に調整し、患者と外科医の性別の一致と術後30日死亡率(手術を受けたあと30日以内に死亡する確率)の関連を評価しました。

その結果、(統計的な補正をした後の) 術後30日死亡率は、男性患者-男性外科医の組合せで一番高く(2.0%)、男性患者-女性外科医の組合せで1.7%、女性患者-男性外科医の組合せで1.5%、女性患者-女性外科医の組合せで一番低い(1.3%)という結果でした。男性患者-男性外科医の方が、女性患者-女性外科医よりも約53%死亡率が高いという結果でした。

さらに、予定手術と緊急手術を分けて関連を評価したところ、予定手術においては、上記のような結果(男性患者-男性外科医で死亡率が高く、女性患者-女性外科医で死亡率が低い)でしたが、緊急手術においては、患者と外科医の性別の一致によって術後30日死亡率に違いがあるという結果は得られませんでした。

また、この研究では、外科医の性別と術後死亡率の関連も評価しました。その結果、女性外科医は、予定手術では男性外科医よりも術後30日死亡率がわずかに低い一方で、緊急手術では男性外科医と術後30日死亡率に差を認めませんでした

今回の結果を説明するメカニズムを解明することによって、患者のケアを改善する手がかりが得られると考えられます。外科医と患者それぞれの性別および(人種などの)その他の特性が、どのようなメカニズムで医療の質に影響するかを明らかにする質的および量的な研究の結果が待たれます。

原著論文(BMJ):Wallis CJD, Jerath A, Ikesu R, Satkunasivam R, Dimick JB, Orav EJ, Maggard-Gibbons M, Li R, Salles A, Klaassen Z, Coburn N, Bass BL, Detsky AS, Tsugawa Y. Association between patient-surgeon gender concordance and mortality after surgery in the United States: retrospective observational study BMJ 2023; 383 :e075484 doi: 10.1136/bmj-2023-075484

https://www.bmj.com/content/383/bmj-2023-075484 (URL)

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