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2024年3月の記事一覧

「博士人材活躍プラン」を考える際に重要な論点は何か

3月26日(火)、文部科学省は「博士人材活躍プラン」をまとめ、人口100万人当たりの博士号取得者を2040年に現在の3倍にする目標を公表しました[1]。

計画では、大学院教育の改革や大学院生の支援を強化することで博士課程への進学者を増やすとともに、産業界と連携して博士号取得者の就業の機会を拡大するとのことです。

分野による違いがあるとはいえ、博士号の取得者が課程を修了した後にただちに大学で任期

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文化の比較の観点から考える大谷翔平選手の声明の持つ意味

現地時間の3月25日(月)に大リーグのロサンゼルス・ドジャースに所属する大谷翔平選手が行った「野球賭博疑惑」に関する記者会見について、本欄の理解は昨日ご紹介した通りです[1]。

ところで、大谷選手の記者会見についてありがたくも報道各社から見解を求められた際、私は「完全に米国向けの声明であり、記者会見である」とお話しました。

もとより米国内で起きた出来事だけに、米国の報道機関が様々な報道を行うの

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「野球賭博疑惑」に関する大谷翔平選手の声明を理解するために重要な観点は何か

現地時間の3月25日(月)、大リーグのロサンゼルス・ドジャースに所属する大谷翔平選手が記者会見を行い、専属通訳であった水原一平氏による違法賭博疑惑に関する声明を読み上げました。

捜査が行われている状況のため、話せる内容に制限があるという趣旨の前置きをしたうえで、「送金を頼んだことも許可したこともない」と自身の関与を全面的に否定し、水原氏に騙されたと強調しました。

事件の発覚後に大谷選手が自ら声

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米球界で起きた「大規模窃盗疑惑」についてわれわれが忘れてはならない点は何か

現地時間の3月20日(水)、大リーグのロサンゼルス・ドジャースに所属する大谷翔平選手の弁護士が、同球団に所属し大谷選手の専任通訳を務めていた水原一平氏を違法な賭博に関与し、大谷選手の資金について「大規模な窃盗」(massive theft)を行ったとして告発したことを明らかにするとともに、球団も水谷氏を解雇したことを公表しました[1]。

本件は、球界を代表する「スーパースター」[1]である大谷選

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「大リーグの韓国開幕戦」で考える大リーグの海外公式戦が持つ意味

明日から2日間、韓国の首都ソウルで大リーグのサンディエゴ・パドレス対ロサンゼルス・ドジャースが公式戦を行います。

韓国で大リーグの公式戦が行われるのは今回が初めてであり、アジアでは日本に次いで2番目の公式戦開催国となります。

今回の2試合は、パドレスにダルビッシュ有選手と松井裕樹選手が、ドジャースに大谷翔平選手と山本由伸選手が在籍しており、日本でも注目を集めています。

現在、大リーグ機構は大

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東横線渋谷駅の地下化11年目に際して考える長期の再開発計画が持つ計画と現実の乖離の問題

本日、2013年3月16日(土)に東急東横線渋谷駅が地下に移設され、東京地下鉄副都心線との相互直通運転を開始してから満11年が経ちました。

いわゆる渋谷再開発について、利用者が様々な不便を忍ぶことで成り立っている点については昨年の本欄で指摘した通りです[1]。

ところで、現在の渋谷駅が抱える問題の一つが、利用者の増加による移動の困難さです。

これは、通勤や通学で日常的に渋谷駅を使用する利用客

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「4地区での解禁」で注目されるライドシェアの今後

昨日、国土交通省は一般の運転手が有償で乗客を送迎するライドシェアについて、東京23区や京都市など4区域を対象に4月から解禁する方針を明らかにしました[1]。

ライドシェアについては、配車アプリの情報に基づいて算出した車両不足の地域や時間帯に限り、タクシー会社の管理の下で解禁されます。

首都圏や日本屈指の観光地である京都市内のタクシーの利用は、時間帯によっては乗車できる車両を見つけることが難しく

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「『君たちはどう生きるか』と『ゴジラ-1.0』のアカデミー賞受賞」はいかなる意味を持つか

現地時間の3月10日(日)、第96回アカデミー賞の授賞式が行われ、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が長編アニメーション賞を『ゴジラ-1.0』の山崎貴監督ら4人が視覚効果賞しました。

日本映画としては2003年の『千と千尋の神隠し』以来、21年ぶり2度目の長編アニメーション賞受賞であり、視覚効果賞はアジア圏の作品として初めての受賞となります。

『君たちはどう生きるか』については、日本国内では

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2024年度予算案を巡る「異例の土曜国会」の持つ意味は何か

昨日、衆議院本会議において2024年度予算案が与党などの賛成多数により可決しました。これにより、憲法の第60条第2項の規定に基づき、予算案は参議院に送付されてから30日で自然成立するため、今年度中に成立することが確定しました。

今回は、通常は平日に行われる国会審議が土曜日に開催されたことで、種々の対応に追われる国会や各省庁の職員が出勤せねばならず、いわゆる「働き方改革」に逆行するとの指摘がありま

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