「『君たちはどう生きるか』と『ゴジラ-1.0』のアカデミー賞受賞」はいかなる意味を持つか

現地時間の3月10日(日)、第96回アカデミー賞の授賞式が行われ、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が長編アニメーション賞を『ゴジラ-1.0』の山崎貴監督ら4人が視覚効果賞しました。

日本映画としては2003年の『千と千尋の神隠し』以来、21年ぶり2度目の長編アニメーション賞受賞であり、視覚効果賞はアジア圏の作品として初めての受賞となります。

『君たちはどう生きるか』については、日本国内では肯定的なものから否定的なものまで様々な評価があり、その声価は定まっていないというのが実情です。

私の身近な話ながら、昨年12月の米国での公開を受けて鑑賞した同地の友人や学生からは「哲学的な作品」「素晴らしい」「こういうのを待っていた」という声が聞こえていました。

いわば日米の観客の間で『君たちはどう生きるか』に対する評価の傾向が異なっており、米国において前向きな評価が多かったことは、今回の受賞を考える上で興味深いところです。

『ゴジラ-1.0』については、「ゴジラ映画が好きで、全部観ている」という、日本の映画を研究している米国人の友人は、昨年12月の米国公開時に鑑賞した感想を、「ゴジラを初めて怖いと思った」と寄せてくれました。

わずか1人の意見ではあるものの、こうした受け止められ方は、同作の視覚効果の水準の高さを物語ります。

その一方で、近年のアカデミー賞が、受賞作や受賞者の選考に際して多様性の尊重を重視する姿勢を示していることも、今回の結果に繋がったと言えるかもしれません。

あるいは、アカデミー賞は作品の質の高さをそのまま示すものではなく、米国の映画芸術科学アカデミーという閉じられた世界での話であるという意見もあることでしょう。

しかし、たとえどのような状況にあるとしても、作品そのものが優れていなければ候補作とならず、作品の存在を広く訴えるための手段としてアカデミー賞の持つ価値が大きいことも事実です。

その意味でも、改めて2作品の今回の受賞をお祝い申し上げます。

<Executive Summary>
What Is the Meaning of Two Japanese Pictures' Winning at the 96th Academy Awards? (Yusuke Suzumura)

Mr Hayao Miyazaki's picture "How Do You Live?" and Mr Takashi Yamazaki's "Godzilla Minus One" won the 96th Academy Awards on 10th March 2024. On this occasion, we examine the meaning of these two Japanese pictures' achievements.

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