2024年度予算案を巡る「異例の土曜国会」の持つ意味は何か

昨日、衆議院本会議において2024年度予算案が与党などの賛成多数により可決しました。これにより、憲法の第60条第2項の規定に基づき、予算案は参議院に送付されてから30日で自然成立するため、今年度中に成立することが確定しました。

今回は、通常は平日に行われる国会審議が土曜日に開催されたことで、種々の対応に追われる国会や各省庁の職員が出勤せねばならず、いわゆる「働き方改革」に逆行するとの指摘があります[1]。

確かに、衆議院では火、木、金曜日の13時から、参議院では月、水、金曜日の10時から本会議を開くことを原則としており[2]、土曜日の本会議の開催そのものが異例であることが分かります。

また、一人ひとりの職員には公務員としての務めとともに日々の生活があり、慣行とは異なる日に国会審議が行われることはそれぞれの生活に少なからぬ影響を与えます。

そのため、今回のような土曜日の国会審議が続くようなら、そのような開催形式を前提とした勤務形態に改める必要があります。

一方、本会議の開催日は原則であり、あらゆる原則には例外が伴う以上、必要であれば異例の対応も職務の一環としてなさなければならないという見解もあることでしょう。

しかも、予算案という国政の根幹となる事項の審議であるため、原則にとらわれることなく充康何な対応がなされるべきであると考えることもできます。

ただし、今回の場合は、与党側が能登半島地震からの復興支援のための費用を含む予算案を速やかに成立させるべきだと主張し、野党側はいわゆる政治資金問題を巡り国会審議が停滞したことが原因であると指摘しており、党利党略を優先させた結果であることが推察させます。

実際、岸田文雄首相は2月29日(木)に衆議院で開催された政治倫理審査会に現職の首相として初めて出席することで「首相の説明責任」を求める野党側の要望に応え、これによって暗に来年度予算案の年度内成立への協力を求めたと言えますから、ここにあるのは政治的な駆け引きのみであるといっても過言ではありません。

それだけに、もし今後も各党派の利益や個利個略が優先され続けるなら、人々は政治への不信感ではなく無関心へと傾き、結果として政治から活力を奪うことになりかねません。

与野党ともそれぞれの主張はあるとしても、その一つ一つが日本の国政の将来に直結していることに、今一度自覚的であることが求められると言えるでしょう。

[1]異例の「土曜国会」. 日本経済新聞, 2024年3月3日朝刊5面.
[2]本会議の基本原則. 衆議院, 公開日未詳, https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/kokkai/kokkai_gensoku.htm (2024年3月3日閲覧).

<Executive Summary>
What Is the Meaning of an Unusual Saturday Deliberation in the House of Representatives? (Yusuke Suzumura)

The budget bill was approved at the Plenary Session of the House of Representatives on 2nd March 2024. It was an unusual deliberation, since yesterday was Saturday which was originally a day of no deliberations. On this occasion, we examine the meaning of this unusual situation for the future of Japanese politics.

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