アイドル失踪の真実を暴く『プリコラージュ -IDOLIZED-』で「ネットストーキング」が「すぐそこに」ある怖さを感じた(感想)
アイドル「セナ」が失踪。
その手がかりは、彼女の「SNS」のみ。
画像に写っている物や、それが意図する事、SNSの「タグ」やインターネットの検索から情報を集め、彼女に何が起こったかを暴いていく。
まさに現代の新ジャンル「ネットストーキング・ポイントアンドクリック」なゲーム、それが『プリコラージュ -IDOLIZED-』でした。
ゲームはほぼ、ポイントアンドクリック。
ボリュームはおよそ1時間といったところでしょうか。エンディングは複数あります。私はトゥルーエンディングと思われるエンディングを含めた2つのエンディングしか達成していないのですが、まだいくつかありそうです。全エンディング達成しようとすると2時間以上はかかる気がします。
ただ、どちらにせよ短編であるため、時間が無くてもサクッと遊ぶのに丁度いいゲームかと思います。
ゲームは、アイドルの「セナ」が失踪するところから始まります。
ゲームを始め、プレイヤーが操作可能なのはinstagramのような画面。失踪したアイドルのセナのアカウントであることがわかります。
プレイヤーはそれらの画像、コメント等から気になる点をクリックし、情報を得ます。セナの所属しているアイドルグループ、出演している番組、日常、そして映り込む景色…。
それらの画像から得たワードをインターネットで検索。
その検索結果から新たな情報を得て、徐々にセナの真実に近づきます。
当然、そこには悪意が感じられるような検索結果もあり。しかしプレイヤーは、真実を知るためにどんどんセナの個人情報に踏み込んでいきます。
これを繰り返し、疑念や真実が徐々に浮き彫りに。
架空と言えど、手順は本当にネットストーキングです。
ゲームはほぼPC画面上で展開されるという仕組みから、映画「サーチ」を彷彿としました。
有力な情報を保有している人物に辿り着いたり、秘密の投稿へのパスワードを見つけたりと行動していくことで、最終的には事実が明らかになり、ゲームはエンディングを迎えます。
プレイ時間が短いのでシンプルなストーリーではありますが、このネット社会、SNS全盛期における「ネット上の情報を集め、画像に写り込んだ情報から個人情報を特定する」という視点は非常に新鮮でした。これはもしかすると、8番出口のようにひとつのゲームジャンルとして確立する可能性もあるように思えます。
ポテンシャルを感じるからこその願望
思ったこととして、やはりボリュームがもう少しあると嬉しかったです。
欲を言えばこれが2倍、いや5倍くらいのボリュームが欲しかったなと感じてしまいます。
とはいえ、ネットストーキング的な新鮮な視点でのゲームではあるものの、やっていることは単純なポイントアンドクリック。ギリギリ飽きないくらいのボリュームであったことも確か。
これを5時間繰り返すのはもしかすると苦痛の域に入るかもしれず、時間的に丁度いいと言えば丁度いいくらいかもしれません。
あとは、ワード検索後の画像やホームページなど、もうちょっとデザインがあると良かったとも思います。さすがにニュースサイトを模していたとすれば、白背景にテキストベタ打ちはシンプルさが強く、少し違和感がありゲームから現実に戻された感覚もありました。画像があるとか、スクロールできるとかあるとリアルさが出るのではないでしょうか。
もちろんインディーゲームなので、どのようなゲームでも、ビジュアルや音楽、ボリュームなど大手のゲームと比べたら粗い部分はあります。しかし、このゲームには他のゲームよりも「もしここがこうだったらどんなゲームだったんだろう」と、要望ばかりが出てきてしまいます。
ただ、これは多大な期待があるからこそ、出てきてしまうのです。
それもこれも、あのゲームと比べてしまうからです。
そう、こういった現代社会の風刺的な、そしてインターネットやSNSが主軸となっているゲームで言えば、やはり大ヒットした『NEEDY GIRL OVERDOSE』。
配信者という斬新な視点といわゆるSNSの闇をリアルに描いた作品は、世界中で大ヒットしました。ビジュアルに音楽、演出にボリュームと、インディーゲームでありつつ申し分のない出来でした。
正直なところ、『プリコラージュ -IDOLIZED-』のポテンシャルは、『NEEDY GIRL OVERDOSE』と肩を並べることが出来るであろうものがあると感じています。
特に感じたのが、ゲーム中、ガラスの靴をセナがインスタにアップしている様子。ゲーム内で知りましたが、こういった特徴的なものを道端に置き、それがネットにアップされたことで行動を特定する方法があるようです。確かに理にかなっているなと思いましたし、普通に現実世界でも通用してしまうなと思った瞬間、思わず体が冷えるものがありました。いや、普通に怖かったのです。
現実にあり得る、むしろ既に行われているかもしれない「特定方法」であり、それはもはや「身近に、すぐそこに」あるものであると。普段接しているインターネットの中に、そして行おうとすればすぐにできる悪意が含まれていることを感じ、急激にゲームと現実がリンクした体験でした。
つまるところ、ビジュアルやボリュームで差はあれど、非常に現代社会の「闇」を上手く切り取っているという意味では『NEEDY GIRL OVERDOSE』も、『プリコラージュ -IDOLIZED-』も同じレベルであると感じたのです。
『NEEDY GIRL OVERDOSE』からは強い感銘を受けたと同時に、その深い闇に身震いしていましたが、それ以降同じような感覚になるゲームはありませんでした。
発売から1年が経過し、久々に同じような「寒気」を覚えたのがまさにこのゲームでした。
現代の闇という部分の描写の切り取りは見事と感じたからこそ、もしボリュームがあったら、もし演出がリッチだったら、と考えてしまいます。
新しいジャンルになる可能性があるとも思いますが、それ以上に是非とも続編なんかが出たら嬉しいなと思いますし、これくらい鋭角に、現代の嫌な部分を切り取る作品が生まれたこと、遊べたことを嬉しく思います。
サクッと終わる作品ですが、まさに令和の今遊ぶべきゲームかと感じます。
興味ある方はぜひ、現代的な進化を遂げたテーマのゲーム『プリコラージュ -IDOLIZED-』を遊んでみてください。
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