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「書き下ろし」の楽曲がコンテンツには永遠に不可欠だと思う話


フリーの音源は「複数のコンテンツで使わせない」という制御ができない


以前、下記のような記事を書きました。

要は、ゲーム音楽にフリー音楽(著作権がフリーで、誰でも自由に使ってよい音楽)を使用したとき、もしかするとその楽曲が別の用途で使われていたり、または今後別の用途で使われたりしたとき、ゲームでその音楽が使用されている場面に対しても何らかの影響が発生してしまうのでは、という話です。

そして今回、また新たに似たような体験をし、これはゲーム音楽に限らず全てのコンテンツに通ずることであると実感しました。

きっかけは、とあるYoutube広告です。

どこかで聞いたことのあるBGM…。
ゲーム配信をよく見たり、FPSストリーマーに詳しい方ならわかると思いますが、これはトップ配信者:Stylishnoob氏のYoutube動画でのBGMとして使用されているものです。

上記のフリーランススタートというサービスのCMが2019年11月にYoutubeに投稿されていて、Stylishnoob氏がこのBGMを動画の最後につけるようになったのは2021年7月(ZETA DIVISIONに所属してから)。
業界も、再生数も異なる両者(両コンテンツ)が、別の時期に同じBGMを使用したという偶然。これはおそらく、今後Youtubeなど動画コンテンツが発達するほど多くなると思います。



ちなみに、使用された曲は下記の曲です。No Copyright Audio、つまり著作権フリーで使用できる曲です。

実際、この曲のかっこよさから、サービスの広告でも動画のエンディングBGMでも非常にぴったりで、動画制作者の方のリサーチ能力、権利関係の把握、そして選曲、素晴らしいチョイスであると思います。

その結果、同じ曲を使用する2つのコンテンツが生まれてしまったのです。

当然ながら、これは動画制作を行った方に何の落ち度もありません。この世の全ての動画をチェックするのは不可能ですし、どう頑張っても曲が被ることはあるでしょう。


気になるのは、今回のように社会的にしっかりした会社ではないところが、同じBGMを採用した際のことです。
ゲームだけではなく、様々なコンテンツにおいても、そのコンテンツとBGMは密接に関わります。それは、習慣化して聞く音楽ほど、無意識にコンテンツと結びつくものであると考えます。

万が一、このBGMが変な陰謀論や詐欺的な情報商材のCMに使われたら(実際に最近のYoutube広告にはこういった怪しい広告も多く見受けられます)。既存の真面目なコンテンツが反社的なコンテンツと(視聴者の意識の中で)紐づく可能性はゼロではありません。

分かりやすい例を出すとすると、例えばゲームの主題歌やドラマの主題歌、映画の主題歌として有名になった曲が、投資詐欺広告の主題歌として使われるような感じです。当然、著作権で管理された曲はそのような事態になることはありません。権利保有者は音楽の権利を管理しますし、また差し止めを請求することが可能です。(Youtubeの中にも、著作権違反で消された動画を見つけたことがあると思います。)

ゲーム音楽やゲームの動画利用、配信規約の中に、「非商用利用」「個人での配信に限る」という条項が含まれることがあるのは、そういった理由かもしれません。勝手に企業の変なコンテンツに使うなよ、企業として使いたいならこっちも企業として対応するから、筋は通せよ、と…。

話が逸れましたが、結論、こういったコンテンツ同士の曲被りは避けられません。場合によっては何らかの悪影響を及ぼすリスクとなる可能性も0ではありません。

ではどうするか。
これはやはり、作曲家の方にオリジナル楽曲を作ってもらうのが一番安心です。
なかなか自社の社員で…というのは難しいかもしれませんので、外注で作ってもらうとか。または、逆に動画に使って欲しい音源を募るのもいいかもしれません。テレビやラジオの「〇月度オープニング曲(エンディング曲)」といったように、動画を音楽の広告の場として活用してもらうのも面白いかもしれません。

しかし、そこに必要なのは「他のコンテンツにその音源を使わせない」という制限を遵守するための契約です。音源の交渉、契約締結、それらは確かに手間ですし、フリー音楽を使うほうが楽です。

でも、いつかのリスク、いつかのトラブルが発生したときのほうが何倍も手間ですし、影響も大きいです。むしろ、フリー音楽の縛れなさ(契約の無さ)から、イメージダウンの解決が見いだせない可能性も十二分にありえます。

そのためにも、オリジナル、つまりそのコンテンツの為の「書き下ろし」楽曲は不可欠ではないでしょうか。それが、最も安心する方法ではないでしょうか。
芸能人や企業のYoutubeでも、フリー音楽を使用している例をよく見かけます。
もしその音源を使用した最も有名な動画が、炎上したとしたら。かかる火の粉はゼロではありませんし、そもそもその音源を使用した自分の過去の動画を消すという行為も難しいです。

動画配信、動画投稿が一般化してきた昨今。
予算や時間の問題もありますが、手軽なフリー音楽だからこそ、そしてこんな時代だからこそのリスクというものも考えないといけないのではと思うと同時に、作曲家の方の仕事は未来永劫、無くなることはないのだろうなあ…。そんなことを思う今日この頃でした。

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