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『INDIKA』感想:こんな変なゲーム見たことない!!!!変!!!世にも奇妙な物語!!!

なんか……変!!!
変なゲームとしか形容が出来ないゲームでした。
でも、この『INDIKA』というゲーム。変だけど、「変じゃないゲーム」には無い魅力がプンプン匂い立つような……そう、やっぱり変なゲームでした。

舞台は19世紀末の架空のロシア。
主人公の修道女インディカは、1年も修道院から出ることを許されていませんでした。

ところが、ある日「手紙を届ける」という用事を任され、修道院の外へ。
目的地に向かう途中で様々な人との出会いやトラブルに見舞われながらも、ロシアの大地を進み続ける……というゲームです。

プレイしてまず感じたのは、そのグラフィックの凄さ。
インディーゲームというくくりのようですが、AAAタイトルにも引けを取らない美しさ。キャラクターはリアル寄りな描き方をされており、ちょっとだけ不気味の谷を抜け切れていないような、人間っぽさの中にどこかロボット的な雰囲気のある不気味さ。
これは通常、ゲームの邪魔になる不気味さなのですが、こと本作に限っては、物語…というかゲームそのものに漂う不気味さを、いい意味で助長していたと思います。

ゲームシステムはウォーキングシム+謎解きといった感じです。
私は5時間弱でクリアしましたが、正直その倍くらいはプレイしたような濃密さと疲労感。
プレイ時間の割に感情を歪まされる回数が多いというか。
とにかく、「よくある一般的なゲームのギミック」を遥かに凌駕した、「奇妙な」演出が多く、いちいち心が立ち止まってしまいます。

例えば、「うわ! このゲームやばいぞ」と思わされたのが下記の演出。

動画を見てもらうとわかる通り、このインディカには頭の中(心の中?)に悪魔がいて、悪魔が語りかけてきます。
このシーンでは、「祈る」(ボタン押しっぱなし)にすることで悪魔の囁きを黙らせることができ、一方で祈りをやめると(ボタンを離すと)悪魔が喋り出します。

そして、悪魔が喋り出すと、(完全に謎なのですが)地面が割れ、地形が変化します。悪魔を黙らせると、地形は元に戻ります。
この段階で物凄く奇妙なのですが、この地形を変化させたりもとに戻したりといった2つの環境を利用し、インディカは先に進むのです。
地形が離れれば、通常行けなかった場所へと上がることができ、そしてまた地形が元に戻れば足場がくっつき先に進める…。

仕組みとしてはよくあるスイッチ式の地形操作のようなものなのですが、こうも奇妙な演出が加えられると本当に「変」な気持ちになります。
このシーンは奇妙さがとても強いのですが、ゲームを進めるともはやシュールさが溢れるようなシーンも多々。

また、ゲーム性自体も、パズルからレースから2Dアクションと様々に変化することで、まさに掴みどころのないゲームであるという印象をより強くしています。「なんなのこのゲーム?」と思わずにはいられませんでした。

本当に、ここ数年で1番変なゲームだと思います。
じゃあ、その理由はなんなのか。
色々とあると思うのですが、私が最も奇妙に思った…というか、あえてゲームとしての完成度、整合性を崩しているなと思ったのが、「音楽」です。
先ほどの地形変化イベントのときもそうですが、明らかに音楽が「ちょっとふざけている」感じなんですよね。
恐怖心を煽るわけでもなく、「場違い」な音楽。
そのミスマッチが余計に奇妙さを増長させていました。
銃を向けられ逃走するシーンでは可愛い電子音がピコピコを鳴っていて、(場面的にもコメディっぽいのですが)コメディ感が強くなっていたり。
序盤、別のキャラクターの口から小人が出てくる、妄想のようなシーンでは、厳かなシーンなのにドラムが激しく鳴ったり。

この辺り、状況に「合わない」音楽が使われている、言い換えると音楽が目立ち、BGMではなく演出の主役級になっているところが、このゲームの特徴であったと思います。

さらに言えば、その音楽、BGMが急に流れ始めたり、急に止まる=静寂になる、そのメリハリが異常にはっきりしています。これがまた、ゲームの中の物語の演出となっていました。
先ほどの地形変化の演出も、インディカが祈っている間は静寂ですが、祈っていない間は低いベース音のような音が流れます。プレイヤーの行動で、インタラクティブに音楽が変化します。
そんなシーン、つまり演出に強く音楽が寄与しており、バッサリと流れを切るようなシーン。
一気にプレイヤーの集中は途切れ、音に注意が向いてしまいます。この、意図的に違和感を覚えさせ、集中を切らせるような、音を使った演出が素晴らしいのです。
どうしても文章だと伝えにくいのですが、この強制的とも言えるような音楽のメリハリと、それに加えた場違い感。
このゲームの大きな特徴でした。

そして、いい意味で一貫していないストーリーもまた奇妙さに拍車をかけます。
話の展開が早く、また唐突かつ超自然的な演出も相まって、プレイヤーは先の展開が読めません。もともと、手紙を届けるという目的だったはずが、徐々にインディカにとってのアイデンティティや宗教観という根本的な、行動の原理の部分に迫る物語が展開されます。
主目的が変わって以降、まるで暗闇の中を歩き続けるかのような、先が見えない展開。
突飛なアクションゲームも相まって、不思議な気持ちのままプレイ。そして、「そこで終わり!?」というエンディング。
おそらく、一定数の方は「なんて適当で投げっぱなしのストーリーなんだ」と思われるかもしれません。私も正直、説明の少なさに戸惑いを覚えました。
しかし、それでもなぜか心に残っているのです。
集める必要のないアイテムを集めさせられ、願いが叶うというアイテムを探し、そしてインディカの中にいる悪魔との対話。
全てが奇妙で不思議、一般的なゲームでは考えにくい仕組み。
それは理不尽と言うよりもやはり奇妙。
テレビ番組の「世にも奇妙な物語」のような奇妙さ。
万人に勧められるとは口が裂けても言えませんし、ここ数年で最も面白かったなんてことも言えません。
ただ、明らかに心と記憶に残り続ける、どこか濁った感情。
このゲームはそんな気持ちを残し続けています。

また、ゲーム全体を通して宗教批判、体制批判といったシーンが描かれています。敬虔な修道女のインディカに対し、悪魔はロジカルに宗教を批判します。
なぜそのような体制批判、宗教批判のようなテーマになっているか。
その理由の一端を、開発者がYoutubeで発信しています。

もともと、宗教への違和感をもとに製作されていたようですが、その途中にロシアのウクライナ侵攻が発生。ロシア正教会への明確な批判があります。
動画の中では、「ロシア正教会がプロパガンダとなっている」というような内容もあり、そこがひとつのテーマとなっていることは、十二分に感じられます。
また、このゲームの収益の一部をウクライナ侵攻によって被害を受けた子供達の支援にあてると報じられているため、ウクライナ侵攻への強い思いを感じられます。

そんな背景もある、とても不思議なゲーム。
奇妙な気持ちになりたい方はぜひ。
あなたもいつの間にかインディカの虜になるかもしれません。



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