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書評 #43|検事の本懐

 読者は前へと進み続ける。『検事の本懐』の文体にその前進を促す力がある。着飾ることのない、実直な魅力を佐方貞人は持ち合わせている。高いIQとEQを兼ね備え、事件の核心を探し求める。

 物語が魅力的であることは間違いない。しかし、真実の探求に垣間見える、主人公の凛とした佇まいが作品に揺らぐことのない芯を通している。組織、個人、過去。それらに絡まった複雑な糸を佐方は解いていく。その描写に本著の力が宿る。

「人間性に年齢は関係ない。その人間が持つ懐の深さは、生きてきた時間の長さではなく、そのなかで培われた価値観や倫理観によるものだと思う」

 秋霜烈日の厳かさを体現する佐方の一挙手一投足。本質を求める姿勢に魅了された。


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