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書評 #57|カルチョメルカート劇場 世界一クレイジーな移籍市場の秘密をすべて教えよう

 セリエAのカルチョメルカート(サッカー移籍市場)にまつわる狂騒劇の数々が『カルチョメルカート劇場 世界一クレイジーな移籍市場の秘密をすべて教えよう』に綴られている。

 答えのない問いに対し、クラブ、代理人、選手、記者、時にはレストランの皿洗いやローマ教皇までもが喜怒哀楽に満ちた行動を繰り広げる。駆け引き、罵り合い、懐柔。ナポリ会長のアウレリオ・デ・ラウレンティスや著名代理人であるミーノ・ライオラらが繰り出す二枚舌は極上の油を火に注ぐ。大袈裟かもしれないが、登場人物の多さも相まり、フョードル・ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を連想した。

 読者は登山のように本書に綴られたさまざまな起伏を楽しめるだろう。しかし、山頂から眺める澄んだ青空のように、筆者であるジャンルカ・ディ・マルツィオが残したこの言葉は新鮮な風を胸に届けてくれる。

「誠実な姿勢を貫く方が、長い目で見れば得られるものはずっと大きい。サッカー界、とりわけカルチョメルカートのように、口約束はおろか契約書へのサインですら時には守られないような世界ではなおさらだ」


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