見出し画像

書評 #40|欧州 旅するフットボール

 フットボールは風であり、空気である。その風に乗り、世界中の空気に触れる。僕はそんな旅を続けたい。豊福晋の『欧州 旅するフットボール』は理想の旅を疑似体験できる。

 色彩に満ちた冒険はバルセロナから始まり、世界中を駆け巡る。軽やかでありながら、その文体には著者の内からほとばしる感情が詰まっている。それはフットボールに対する哲学であり、愛情である。紹介される地の酒と郷土料理の数々。それらの描写によって、血流が早まるような感覚を覚えた。「生き生き」とする。月並みだが、そんな感想が頭に浮かぶ。

 フットボールには不思議な魅力がある。それは魔力とも言える。フットボールには歓喜があり、悲劇もある。その包容力は雄大なる大地のようであり、人生に置き換えても違和感はない。

 豊福晋はその繊細なる空気の浮き沈みを的確に切り取っている。自分にしかできない形で。織り込まれた写真の数々をカラーで眼にしたいと願ってやまない。しかし、色の濃淡で本著の魅力が損なわれることはない。この風にいつまでも乗っていたい。


この記事が参加している募集

#推薦図書

42,581件

#読書感想文

189,685件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?