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食レポ|支那麺 はしご 本店

 その味は、過去と現在をつなぐ。「はしご」の始まりは醤油味の「太肉麺」だった。幼い自分にとって「担々麺」の辛味は刺激が強過ぎた。少なくとも、母親はそう思っていた。

 「担々麺」を初めて口にした時の記憶は欠落している。しかし、始まりのない旅は今も続いている。その味を求めて、僕の身体はうずく。

 用事があり、新橋に出向いた。平日の昼下がり。様変わりした世界に呼応し、新橋は人々が忽然と姿を消したかのような印象を受ける。そんな街並みを抜け、「支那麺 はしご 本店」に入店した。どこの「はしご」に入っても木の温もりが僕を出迎えてくれる。表面には艶があり、大人びた気配に意識が同化する。

 「排骨担々麺と御飯」と口にし、遅れて「焼賣」も注文した。丸々とした四つの「焼賣」。「はしご」の焼売を超える焼売はないと思っている。弾ける肉感と肉汁。それは幸福の塊だ。

 「御飯」に「龍馬たくあん」と「排骨担々麺」のスープを注いだ。「排骨担々麺」を抜きにしても、それだけで「御飯」が進む。箸は一杯へと向かう。カレー風味の肉を求めていた。硬く揚がった食感と刺激的なスープが絶妙に共鳴する。

 麺は他店と比べると柔らかい。店ごとに存在する個性も、「はしご」を楽しむことができる要素だ。全てを食べ終える。そして、名残惜しくも、僕は丼からスープをすくった。ここにしかない刺激。この旅をずっと続けていたいと僕は思う。


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