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「詩 その他」から分離して、詩のテクスト情報を掲載します。
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#現代詩

陽のコラージュ(改

陽のコラージュ(改

芥子の花ひっそりと思い出す。
この詠う子宮に
押し出される前の
ヒソヒソと泳ぎ出した魚は
束縛の中に眠るだけで
抵抗は細やかな呼吸だ
微睡の中、光と影が響き合う
「煙れ、意味を破壊した発想よ」
月の泡腫れ上がる体が
詩の糸で記憶に塞がれている。
剥離する途端、音もなく追いかける
斜めの涙が溶けるから
砂濡らす私は
泳いでいる穴だ。
追いついてくる針を止めて
屈折して広がり詩詠う
眠りは冷蔵庫で性交

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スズムシ

スズムシ

感傷を嫌う君が夕暮れに黄昏れる時、
欺瞞や身勝手さが鮮血のように滲む。
白鷺は私達を警戒しながら虫を食べて、
秋に仮装する人々に君の苛立ちは育つ。
自由を愛するなら公平を憎むべきだ、
愛はいつだって身勝手なものなのだから。
身を震わせて鳴いてみればわかる
高揚に靡かず毎日震えていれば、
いつか歌になれる。
だが書かれた言葉はいつか消失する、
絶望に耐えられない祈りは宙吊りにされて
残るのは簡素な足

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フォトグラフ

フォトグラフ

 私達は海辺に閉じ込められている。
 雨の予感、通り過ぎる風、何もかもが繋がりを断たれた
 いくつかのリズム、
 テトラポット、人工的なダンスで波が砕かれる。

 私は君と繋がりたいと思い、写真を撮る、
 でも、見てごらん、これは私と君の傷口でもある。
 悲しいとか、虚しいとか、
 そういうノスタルジアすらない、空中分解の苛立ちだ。

 暴力が変化をもたらすなんてたいした幻想だ。
 それを振るい下

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幻肢痛

幻肢痛

欠落した肉体が残像を求める。休日の虚脱感。なんとかして動かねば、意味もなく時間を消耗してしまう。生きることを意味化しようと必死に回転して、文字に起こし、自分を慰めて、納得させて諦める。歩み出して初めて思い知らされる、如何に自分が無思考的だったのか。

曇天の下、洗濯物を持ってコインランドリーを行き来する。君は論文を書いているだろう、僕は写真についてレポートを書こうかと思っている。でも、どの写真につ

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切断

切断

リストカットをやめられないあの子を
今日ブロックした。
結局、あの子のことはわからなかったけど、
最初から、わかるとか、わからないとか、そういうことではなかったのかも知れない。
あの子の絶望感とか、わがままとか、
有象無象の戯言、袋小路の世迷言。
私が冷たいのか、あの子が意固地なのか
その周りが分裂的なのか、確かめる術もない。

雨でびしょ濡れになった私の感情が、踏み潰されて、
「別に最初から同情

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夜灯りのスケッチ

夜灯りのスケッチ

遅れてきた男が云う「そんな簡単にセックスするな」
二人連れは呂律が回らない様子で、柳通をまっすぐに歩く
ちょっと行けば荒木町の谷で、もしかしたら階段につまづいて死ぬかも知れないが、彼らはまっすぐに歩いた。
誰かが歩きタバコをする。誰も責めはしない。
町の悪臭と習慣と無関心さ、何処とない同調圧力と街の闇がそうさえる。

なんなら態々理性を捨てにきている
働いて金を稼ぎ、今日もコロナを回避した
酔っ払

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喪失の物語

喪失の物語

疲れて帰ってくる
地下鉄の中で足が棒になる
胃の中で煮えたぎる風景、
物語は消失する。

走り回る日常、大量に運ぶテクスト
頭に入れるべき情報、
本を読みました。
誰か私を抱きしめてくれ。

読書をするのに孤独は必要だ
でも、孤独を読み切るには温もりは必要だ。
この造景に如何なる物語を繋げる?
私はこの景色で喪失する

春の嵐

春の嵐

君の弱虫がただのワガママだったらいいのに。
甘い蜜に誘われて、小鳥の番が叫んでいる、夜が来ると呼んでいる。
狡猾な打算と雨音の裏付けで上手に思考停止して、
話を逸らして、煙に巻いて、甘い声を吐き出す事には長けて来た。
そして、どうしてだろう?時に寂しげだ。
弾丸の音がして、耳鳴りが響いている。どれだけ真剣に語っても戯けてしまう道化師が踊っている。
寂しさなんてその程度の装飾品なのか?
春の嵐が来て

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氷姿の歌

氷姿の歌

長い夢と膨張する疲労の夜
躁状態の幽霊を追いかける。
春より悪い季節はないさ
鼓動も不要な音鳴らす。

痛みに何の理由があるか?
君には何もわからない。
下らない労働と賃金
摩耗しているのを思い出す。

船をゆっくり漕いでくれ
それからそっと止めてくれ
浅い水面に写る影が
現実で沈んでしまわぬように…

ミルクティーを飲みながら

ミルクティーを飲みながら

地雷を踏んだ女が空から落ちて来る、幾つもの雨を食べ、もうお腹いっぱいだと嘆きながら。ヒヤシンスが咲いている。女はゲームを続けている。広がる空き地、瓦礫の山。アルコール消毒にご協力下さい。青の可能性と不毛な席。日々の終わりの続き。
×
君の夢が儚く散ればいい。思い描いた何もかも、望み欲したあらゆる事から見放され、疲れ果てた姿で砂浜に落ちればいい。怒りを駆り立てる言葉を吐いて、ピアノを弾いて祈ればいい

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ユリノキ

ユリノキ

いびつになりたい君達は
鋭利に尖って人を刺す
目立ちたいよと、羽根をはばたき
ところ構わず色落とす。

移動する。右と左と奥行きに
若い体を貼り付けて
若いからだとこの世を憎み
踊り狂って人待たす。

《僕達の痛みには意味なんてない》
君はふと、画面の枠組みつまずく
何かが消費されて行く音が聞こえて
すり減る靴に諦める。

明るい夜に凍えながら
今日も寂しさに訳を見出せない君達は
常に、いびつな秘

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魂の在処に付いて

水平線に追い付けない思考が、波間で溺れて息を絶つ。泡は過去と未来からなり、幾千もの可能性の痕跡として忘れられる。懐かしさは一陣の感傷に過ぎない。おやすみ、魂の在処よ。幽霊よ、悲しみは何色だ?境界線をまたいで転がり落ちて行く感覚、人間性が失われて、私は肉体に依存して懐かしんでいるのだろうか?若さは死にたくなる。老いると生きる事がどうでも良くなる。そして、生きる確証を失い、枯れた魂を不死にしようとする

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瞬間と消費

瞬間と消費

僕の魂の欠片に火が灯され
ジリジリと音を立てながら燃やされている。
生きる事は消耗なのか?消耗は快楽なのか?
そう問う時も、問わない時も時間は静止しない。

丸で、なす術のない敗北の様に、
今この瞬間は分解されて行く直前で、
流れ去ってしまった破片について、恐らく、
何一つ思い出さないだろう。

或いは、思い出すものとして今この瞬間があり、
消耗された血液と唾液と魂の欠片達とが、
想像と共に不死身

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耳鳴り色

耳鳴り色

梅雨の間の青い空、耳鳴り色が降ってくる。沢山の三角形を落として、僕の言葉は埋め立てられる。詩を落としたんだ、でも、見つからない。どの寂しさが僕のもので、どの孤独が君のものなのか、もう分からなくなった、どの水溜りに涙が溶けたのか忘れたのと同じように。誰かが赤い無駄口を叩き、誰かが黄色い説明をする。或いは嘘で塗り潰し、真っ青な吐物を吐き出す。僕は灰色のスランプだ。もう、どれが自分の思考なのか分からない

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