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最強のチーム #こんな学校あったらいいな(前編)


パタン

ピピピ…ピピッ…ピピッ…ピー……………

「たくみくん、オハヨうござイマす。今日のIDは15-03 デス」

(またモモちゃん先輩といっしょのチームがいいな。頭がよくって優しくて。それに…美人だし)


「よ、たくみ! チームどこだった?」

「あ、けーすけ、おはよー。15だよー」

「なかなか一緒になんねーな。おれは32だ。今日の給食は肉だから、2時間目はなんとしてでもクリアしなくちゃだな」

「だねー笑」


ガチャッ

体育館に入るとすでにいくつかのチームができている。けーすけと別れて「15」と書かれた方に向かう。

(はじめての人ばかりのチームだ)

「たくみ! ひさしぶりだなー」

「あ! ゆうや先輩!」

ゆうや先輩は2つ上の6年生。3ヶ月前にはじめていっしょのチームになったときは、すべての授業をらくらくクリアできた。頭がよくてサッカーが上手で、しかもイケメン。よし、これなら給食は松坂牛確定だ。心の中でガッツポーズをする。


「よし。じゃあみんな、作戦会議をしよう」

まずは自己紹介から。ゆうや先輩(6年生)、ぼく(4年生)、りかちゃん(4年生)、まもるくん(2年生)、もえちゃん(1年生)の5人だ。

「2時間目は国語か…。ま、たくみがいるし、だいじょうぶだろう。給食は松坂牛のステーキで決まりだな」

「ぼく、ハンバーグがいいな。目玉焼きがのったやつ」

「まもるくん、ステーキの方が高級なのよ」

どうやらりかちゃんは、お姉さん風を吹かせたいお年頃のようだ。



キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。

午前8時30分。

さあ、ゲームスタートだ。



1時間目:理科(8:30〜9:30)

ミッション…ウイルスを撃退せよ


試験管に入っている液体は、飲むと笑いが止まらなくなるという全世界を震撼させている恐怖のウイルスだ。液体が透明になればウイルスが無害になったという証だ。タイムリミットは1時間。世界の命運はキミたちの手にかかってる。頼んだぞ!

ヒント:53

「ったく。先生たちは悪ノリしすぎだよな。エヴァンゲリオンかっつーの」

「ね、ね、ゆうや先輩。この53ってなにかな?」

「ヒントは3つ。この番号と、色と、あとは匂い」


いつのまにかもえちゃんが試験管からコルクの栓を抜いている。

「もえ、これ、きらーい。」

「あ、わかった! これ、かぜのときに飲むやつだ!」

年少の3人組から「くちゃい、くちゃい」の大合唱がはじまる。

「正しくは、飲むじゃなくてうがいする、だけどな」

「ほんとだ! イソジンのにおいだ!」

鼻にちかづけすぎて、思わずむせてしまう。


「この匂いと、茶色っていう情報だけでもイソジンに入っているヨウ素だってわかるけど、決定的なのはこのヒント。53はヨウ素の原子番号なんだ」

「で、どうやったら透明にできるの?」

心なしかりかちゃんの目がハートマークになっている気がする。そりゃそうだよな。男のぼくから見てもかっこいいゆうや先輩が、女の子にモテないはずがない。はあ…いつかぼくもあんなふうになれるのかな。


「うん、かんたんだよ。こうやってレモンをしぼれば…」

「わぁーーー!!!」

「すげーーーっ!」

「魔法みたい!エルサみたいっ!!」

茶色い液体が一瞬で透明に変わる。


「これはビタミンCがヨウ素によって酸化されて、同時にヨウ素は還元されてヨウ化水素っていう無色透明の物質に…って、だれも聞いてないか笑」

解答と書かれたロボットに液体をたらす。

ウィーン…ガシャ…ガシャガシャシャシャ…チーン

「オメデトウ! キミたちのおかげで世界は救ワレた!」



2時間目:国語(10:00〜11:00)

ミッション…魔法の呪文を見つけて!


妖精の国ルシアに住むルシアリーナたちは、ポムポムを食べて暮らしています。ところが今年はポムポムができず、ルシアリーナたちはとても困っています。ルシアリーナたちはポムポムをつくる呪文が書かれた魔法の書を持っているのですが、どうやら長い年月のあいだに暗号文の解読方法を忘れてしまったみたいです。みんなで力を合わせて解読してあげてください。

暗号文:papel


「うっわー! いみわかんねー。しかもヒントなしかよ」

「ぼくこれ読めるよ。パペル、でしょ?」

「読めても意味がないのよ、まもるくん。解読しなくちゃいけないんだから」

「かいぞく…? ルフィ? ギアセカンドー!!」

みんなが眉間にしわを寄せて考えているなか、もえちゃんだけは楽しそうだ。まもるくんをワン○ースごっごに誘ってる。


「たくみ、わかるか?」

「…なんか...ひらめきそうなんだけど」

パペルというのは意味がわからない。でもきっとポムポムに関係しているはずだ。それなら。

「ねえ、ゆうや先輩。ポムポムとかポムってもしかして英語じゃないかな?」

「英語かぁ…あ、ちょっと待てよ。フランス語でポムってあったかも。せんせー!辞書かして!」

フランス語の辞書を手渡しながら先生がいう。

「お、真相に一歩近づいたようだね」

「pom…pomme…りんご! これだ!」


「わかった! 呪文はappleだ!」


「ん? どういうことだ?」

「えっと、たしかアナグラムっていうやつだと思う。文字を入れ替えて、違う意味の言葉にするんだ。ほら、こんなふうに…」

紙に書きながらゆうや先輩に説明する。いつの間にかみんなや先生もまわりに集まってきてる。

「ね? appleになるでしょ?」

「ともや、すげーじゃん!」

「名探偵コナンみたい!」

そう、そのとおり。コナンくんが言っていたの完パクしただけなんだけど。女の子からほめられるのはやっぱり嬉しい。


「マホウの呪文をオシエテクダサイ」

「apple!」

「オメデトウ! ルシアリーナたちが喜んで、オレイにパーティーに招待シテくれるようです」

*せんせーの豆知識:papelはスペイン語で「紙」という意味だよ


「お礼ってなんだろう?」

「やっぱ、りんごじゃね?笑」


給食(11:00〜13:00)


お礼は、りんごだった。正しくは、デザートがアップルパイだった。メインはもちろん松坂牛のステーキ。

「ステーキが食べられるのは、ともやのおかげだな」

いや、ちょっとまって、ゆうや先輩。うれしすぎるから。はずかしすぎるから。りかちゃんの瞳もハートマーク…まではいってないけど、少女漫画みたいなキラキラビームがでている(ように見える)。


「…...。」

「まもるくん、どうしたの?」

「ぼく、ハンバークがよかった」

「もー。おこちゃまなんだから。わたしがステーキ食べてあげよっか?」

「ううん、じぶんで食べる」

きょうだいのいないぼくは、学校でのこういう時間がだいすきだ。だってなんか、おにいちゃんになったみたいな気がするからだ。


後編はこちら。





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