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鳥籠の中にいた頃の記憶

今回は、わたしの過去のお話。


高校生の時、ある友達ができた。
入試当日、大事なものを忘れちゃって試験が受けられるどうか困っていた時に、その子は助けてくれたの。
その時に「この子とならずっと仲良くできるかも」って、そう思ったんだ。


その子のことをこれから「花子」って書くね。


花子とは、入学してすぐに仲良くなった。
明るくて笑顔がかわいくて愛嬌があって、同級生や先生みんなから好かれてた。


わたしとは全然違うタイプだったから、自分の持ってないものを持ってるところにすごい惹かれたし、花子の1番の仲良しでいることが当時の自慢だったの。


どこに行くのも一緒だったし、休みの日によく遊びにも行った。
花子のこと信頼してたし、わたしの事もそう思ってくれてる感じがして嬉しかったんだ。


わたしは、いろいろあって高校入学時から心が不安定だった。
2年生の時は症状が悪化して学校に行けなくなった。
その時も、花子はマメに連絡をくれ続けていたの。
元気がいい時しか返信はできなかったけど、心の支えになってたな。


花子が一緒にいるならもう一度学校に行ってもいいかなって思ったの。
当時のわたしは心が弱くて、脆くて、誰かずっと一緒にいてほしかった。
成績の事もあるしずっとは休めないからって、勇気を振り絞って学校に行ったんだ。


でも、もうわたしの居場所はなかった。
花子はもともと友達が多かったから、わたしのところには来てくれなくなってた。
前いたポジションには別の子がいて、他の子と仲良さそうに話してるのを、わたしは眺めることしかできなかったんだ。


花子は、うつ病のわたしとどう接したらいいかわからなかったんだと思う。
でも、こんなわたしと仲良くするのがもう嫌になったんだって本気で思った。


他の子といる時も花子はなんとなくわたしを避けていた気がする。
わたしもまわりの輪になんとか入ろうとしたけど、上手くできなかった。
当時は感情が麻痺してて、意味もなくただ泣いてばかりだった。
〝辛い〟がわからず、誰にも言えなかった。


誰かにいじめられてた訳じゃなかったけど、
花子とのことがずっと引っかかって教室にいるのが嫌だった。
他の子が気にして声をかけてくれたけど、あまり心に響かなかった。


わたしは、花子に依存してたんだと思う。
心の支えがなくなって、生きるのにも必死だった。


親も先生も「どうして学校に行きたくないの?」って聞いてくれたけど、一度も上手く答えられたことがない。


ウジウジしてる自分が悪いんだって、なんとか立ち直って、3年生からは明るく振舞った。
取り繕った自分のおかげで、時間が経ったらみんなと前みたいに仲良くなれた。嬉しかった。
でも、嬉しい気持ちより虚しい気持ちの方が全然大きかった。
結局、心のモヤモヤは晴れないまま高校は卒業したんだ。


卒業後、専門学校で好きな事を学んだ。
高校はあまりいい思い出がなかった分、専門学校はすごく楽しかった。


花子は、卒業してからも連絡をちょくちょくくれて何度か会った。
高校生の時と同じで全然変わってなくて、思い出話で何度もゲラゲラ笑った。


楽しいなと思う反面、それと同時に「なんであの時一緒にいてくれなかったんだろう。」という気持ちが強くなった。
それを聞く勇気は無かったし、その答えでより傷つくのが怖かった。
自分の中にあるウジウジした黒い感情が湧き上がってくるみたいで本当に嫌だった。


高校の頃も少し感じてたけど、花子と会う度、友達に対しての考え方が全然違う事を痛感した。


花子にとってわたしは数多くいる友達のうちの1人なんだって気づいた。
そりゃそうだろって思う人もいると思うけど、そこから花子からあまり大切にされている感じがしなくなった。
わたしは花子のためならいくら時間を使ってもいいと思ってた。
花子の1番が心地よかったし、ずっとそうでありたかった。
でも、花子からしたら1人の友達に対してそこまでの感情はなかったのかもしれない。


結局、花子とは会わなくなった。
わたしはこれで良かったんだって思ってる。
ずっと仲良くしてたら、自分の黒い感情に飲み込まれて壊れてしまってたんじゃないかな。


それから、わたしは友達が多い人に対して苦手意識を持つようになってしまった。
この人には代わりがたくさんいるんだって、もちろんそんなつもりがない事はわかってるんだけど、そう思っちゃうんだよね。
友達との適切な距離感もわからなくなって、どう接したら嫌われないかばかり考えるようになった。


わたしは不器用だから広い交友関係を持つ事が苦手。
時間は有限だから、限られた人に時間を使い、大切にしたいなって思ってる。
花子とはそもそもそこの感覚がズレてたのかもしれない。


花子を悪者にしたい訳じゃない。
むしろすごくいい子だ、だから友達もたくさんいて好かれてるんだろう。


学生の時って限られたコミュニティから逃げ出すことが出来ず鳥籠みたいだ、って大人になってから思った。
籠の中でしか仲間を作れないなら仲良くなろうと必死になるよね。
でも、籠の外に出てみると、想像より世界は全然広かった。
狭い世界の中で生きてたんだなって、気づいたの。


もしかしたら、花子もわたしとの付き合い方で悩んだのかもしれない。
心が未熟なうちの人間関係は、本当に難しいな。


眠れない夜は、鳥籠の中にいた頃をよく思い出す。
今でもどうするのがいちばん良かったかわからないし、辛かった気持ちは今後も消えない。
もっと上手に選択できてたら、結果は変わってたのかな。
自分の選択に全く後悔がないと言ったら、それは嘘になる。


でも、その過去があって今の自分があるんだ。
もし過去に戻れるなら、わたしは昔のわたしになんて声をかけるんだろう。


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