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撮影のお手伝いをした時の話

そういえばもう随分前になるけれど、広告撮影をするカメラマンさんのお手伝いをしたことがある。

とはいっても撮影に纏わる部分では無くて、使いっ走り的なアシスタントだ。商業施設のチラシ制作の為の撮影だったから、各店舗から商品や料理を借りて返して…をしながら横目でチラチラと撮影を見ていた。

顧客や撮影対象が違うと、撮影スタイルも全く違うもので。まず持ち込みの機材がすごい。三脚は10本くらいあるし、光源は最大5灯、ディフューザーも数種類準備してあった。その他にもレフ板やテープ、バッテリーと準備や持ち運びだけでも大変そうだ。

これだけ機材を準備してきていたのは、複数種類の物撮りがあったからかもしれない。若い頃に同じカメラマンさんの企業パンフレット制作の撮影にも、エキストラとして立ち会ったことがあるのだけれど…記憶が確かならば、その時はもっと軽装だったはずだ。

撮影自体もその時より、商品の撮影の方がずっと大変そうだった。

施設内の店舗の各商品を…となると、まず数が多い。さらに複数の構図を撮っておく…となると、これはもうなかなかに時間がかかる。全ての撮影が終わったのは、予定時刻よりも3時間もオーバーしてからのことだった。

当時の自分はまだ趣味でしか撮っていなかったから、プロというのはなんて大変なんだろう…と思ったものだ。

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今の自分は人物専門で撮影をしているけれど…それでもサロンの撮影などで、たまに物撮りも頼まれたりする。そういった時は、いつも少し緊張する。人物を撮るのと物を撮るのでは、勝手が違うからだ。

写真というのは、被写体が異なると要求される知識も変わってくる。人物写真、風景写真、ストリートフォト、物撮り、広告撮影…撮る対象が変われば、それぞれに注意を払う部分も違うはずだ。

物撮りの場合は、どう配置するか…というセッティング。それから物によっては映り込みに気を払う必要もある。ライティングも人物とはまた異なってくる。

この中で1番困るのは、自分の場合は物の配置だろうか。撮り慣れていないので引き出しのストックが少なく、その場の閃きとなけなしのセンスに縋るハメになるからだ。

それでも「あなたのセンスが好きなので…ぜひ物撮りも良い感じにお願いします!」なんて持ち上げられては、「いやいや実は、自信がある方では…」なんてとてもじゃないけど言えやしない。だからそういう時は、にっこり笑って「ふふ、頑張りますね!」と言う。

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もちろん出来ないことは断る。環境的に手持ちの機材では無理、と思えばきちんと事情を話してお断りしている。でも出来る出来ないじゃなく、やるかやらないかの問題であれば自分を追い込んでやるしかない。

そもそも思い返せば、仕事として引き受けた最初の撮影からそうだった。マタニティフォトなんて、撮ったことも聞いたこともなかったけれど「ぜひあなたにお願いしたい」って魔法の言葉だ。じゃあ、自分なりに何とかしてみせよう…と思ってしまった。

それが、全ての始まりだった。

大体「出来ない出来ない、無理だ不安だ…」と言っていては、いつまで経っても出来るようにはならない。だから「出来るかも…」と思うならば「やります!」と宣言して、必要な知識を身につけて実際に出来るようになってしまえばいいのだ。

経験上「出来るかも…」と思うことは、きちんと下準備さえしていればなんとか出来る。ただ不安というのは拭いがたいものだ。絶対、というものはないのだから。そういった時は「幸運の女神には前髪しかないんだから」ということわざを、思い浮かべるようにしている。チャンスはそう何度も来ない、出来ると思うんならやろう。

泥臭いかもしれないけれど…そうやって一歩一歩、不規則な歩き方ながらも少しずつ前へと進むのだ。自分の可能性を信じたいから。


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