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親切か偶然か、夏の夜のSF話

平成最後の夏、また不思議体験がひとつ増えてしまったかもしれない。

7月に入ったばかりのある日の深夜、仕事で遅くまでパソコンに向かっていた。時刻はまさに丑三つ時、午前2時~3時頃だっただろうか。自室にはエアコンがないので、扇風機でリビングから冷風を送るようにしている。この日もいつものように、そうしていたのだけれど…

元々、風に当たるのは苦手な方だ。0時を回って気温も下がってきたのか外気の暑さも和らいでいるようで、扇風機の風が少し不快に感じられ始めた。

しかし生来が面倒臭がりの為に、(この風にそのまま当たっていたら体調を崩しそうな…)と思いつつも(いやでも弱風だし止めに立つのも億劫だな…)などと考えて、そのまま放置していたのだが。その少し後に、なぜかパタリと風が止まった。

その時は(ああ。タイミング良く、扇風機が稼働時間をオーバーして自動停止したのか…)素直にそう考えて、振り向きもせずそのままパソコンに向かったまま作業を続けたのだけれど。やはり風が止まると暑い。もう一度扇風機をつけようか…そう考えて振り返って、目を疑った。

扇風機が止まったのではない、ドアが閉まっていたのだ。
静かに、音もなく。

なんだ、これは…と目を疑った。え、どうして?と理解の出来ない事態に少しばかり緊張する。なんなんだ、怖い。怖がりなんだから、わけのわからない事態はやめて欲しい。

いやでも、うん。風でドアが閉まることもあるだろう。万に一つの可能性で何か不思議な力で閉まったにせよ、あんなことを思った直後だ。これは明らかに親切をされている。だから、怯える必要なんてない…怖くはない、これは親切だ…。

そう自分に言い聞かせて、そのまま仕事に没頭した。

だけれども、あまりにも不思議だったので。その日の寝る前と翌日起きてから、何度もドアを確かめてみたのだけれど…いくら角度を変えてみてもどうにも勝手には閉まりそうもなく。全ての窓を開けているときに勢いよくバタンと閉まることはよくあるけれど、この日は雨だったしエアコンの冷気を送っているのだから窓は開けていない。

可能性があるとしたら、部屋の空気が循環して回り込んでドアの背を押したという説だ。風の強さは最弱だったけれど、上下の首振りをしていたので風の動きはあったはずだ。それなら閉まってもおかしくはない、はず…。

と、あれこれ考えてはみたけれど。結局、勝手に閉まった原因はよくわからなかった。

あるのはただ「風が身体に良くなさそうだ」と考えたすぐ後に、タイミング良くドアが閉まって風を遮ってくれたという事実だけ。悪いことはひとつもない。なら、理由は何だっていいだろう。耳元で笑い声が聞こえて、布団の中で震えた時よりはよっぽどマシだ。(これは寝ぼけたにしても怖かった、ウトウトしかけた時に聞こえるような声とは全く別物だったのだ)

こうして平成最後の夏は、S・F(すこし・ふしぎ)体験から幕を開けたのだけれど…願わくば平成同様、妙な体験をするのもこれで最後となって欲しいものである。



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「真夏の夜に涼しさを ~病院の女の子~」
こちらもちょっとした不思議話となっております。


あ、あと広島にいますが…我が地区は幸いに平穏無事で。一部の商品が欠品しているくらいしか、普段と変わることはありません。
けれど、同じ市内で大きな被害が出ていたり。実家のある呉市では、主要道路やJRが土砂により1週間から10日ほど復旧にかかるようだったりと…身近な所で沢山の被害が出ていて。自然災害の恐ろしさ、痛感しています…。

 

  
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