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超ド級地すべりの、魔の巣窟?!:山形県中部高山地域【災害から身をまもるvol.29】

山がちで起伏の多い山形県。
実は全国的にも地すべりが多く、国に指定されている地すべり防止区域の総面積が約13000haで、県の面積に占める割合が1.43%です。
東北地方で2番目に地すべりが多い秋田県でも、総面積約6000ha0.53%ですので、突出していますよね。
そんな山形県の中に、特別すごい地すべりがありまして・・。
長年地すべりを見てきた私でも「なんじゃこりゃ?」と思うような
スーパー地すべり地帯を見に行ってみましょう!

場所は?

再確認しましょう。

06_周辺都道府県

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

山形県は東北地方の南西部に位置します。

06_地形区分

中部高山地域は図のです。

0607_地域範囲都道府県

ご覧のように多くの市町村の一部地域となっています。
今回は鶴岡市が舞台です!


地形を見る

では行ってみましょう!

0607_月山位置

とても山深い地域ですが、ところどころに住みやすような土地が・・。
月山(赤丸)の北西にも比較的なだらかな地形が見えませんか?

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まるで火山から噴出した溶岩か火砕流堆積物のような??

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灰色に塗られてますが、これは岩屑(がんせつ)なだれ堆積物という、月山火山が大崩壊を起こして堆積したものなんです。

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なだらかというか、斜面がなめらかな感じで平坦なイメージですが、山は山ですよね(;^_^A

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もうちょっと拡大してみると・・・
全体的にはなだらかですが、南東の月山本体の西がえぐれてて、浸食も進んでいる雰囲気ですね。

でも、この縮尺あたりから、私は地すべり地形が見えてきました。
もうちょい拡大してみましょう。

0607_月山北西地すべり地形_01

だいたい、赤線で囲った範囲をズームしますね。

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うおおおおお!!
すんごい地すべり地形だし、北の方はスパッとした亀裂のような??

0607_月山北西地すべり地形_02

こんな感じです。
赤の実線が、メインの地すべり。デカいですね。
斜面の長さで3kmくらいなので、まさに超ド級の地すべりです。
1km超でも、人間が止めようとしたら、ウン兆円以上かけても、止められる保証がないくらいなのです。

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国土地理院地図をかぶせました。
道路や建物は見当たらず、ここは幸い、人里離れた場所のようです。
でも地すべりのど真ん中に青い線。これは「水路」のようです。
これについては、後ほど詳しく(※だいぶ後の記事になりそうですが・・)
でもやはり、ダイナミックな地形ですよね。

ですが、超ド級の巨大地すべりはここだけではありません!
もう少し西を見てみましょう。

0607_月山北西地すべり地形_03

この四角の範囲を拡大してみますよ~。

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どうでしょう?
かなり「乱れた地形」のように見えませんか?
けっこう、凹凸激しいですよね。
おそらくですが、最初に紹介した地すべりよりも、もっと活発に何度も動き、分裂したために凹凸が激しいのだと考えられます。

それに加え、人が住み着いたので田畑やら何やらつくり、さらに小刻みな地形になりました。
この地域は実は、近年は地すべり災害があって全国的にもニュースになった地域なのです。

0607_月山北西地すべり地形_04

超ド級地すべりの全体を考えると、こんな感じ?
でも実際には、今はもう少し細切れ(でも大きい)で動いてるので、それを見ていきましょう。


「七五三掛地すべり」はほんの一部

はい。
まず、何て読むの??ですよね(笑)
もちろん、私も最初は読めませんでした。
「七五三掛→しめかけ」と読むようですね。

上図の北西部をさらに詳しく見ると、恐ろしい事実が・・・

0607_月山北西地すべり地形_05

大枠の地すべり地形の内部に、もっと細かく地すべりが分かれているんですね。でも地形はゴチャゴチャしてて耕された雰囲気。色々と記号もあって、人が住んでそうな雰囲気ですね。

そうなんですよ!!

まさに、この地域は人が古くから住んでいる地域。

赤線の範囲は、平成21年に地すべりが活発に動き出しました。

これが七五三掛地すべりで、農政局が対応しました。

私も当時、関係者の一人として、現地調査に入りました。
地すべりとしては動きがかなり速くて、同業者の方々の話を聞いて、ビックリしたのを覚えています。

この地域は、もともと即身仏で有名な注連寺(ちゅうれんじ)がある、歴史的な農村なんですよね。
そういう場所が、何故、地すべりに??と皆さんは思うかも知れません。

でも私の考えは逆です。

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この地域は山奥ですが、地すべりで地面が動いたからこそ、土地が乱れて軟らかくなり、水も豊富で農耕と住居に適した土地となりました。だから、人が住み始めたのです。

でも、長い地球の歴史の中で自然と人との関りのかなで、色々な条件が揃うと、災害になる

0607_月山北西地すべり地形_06

上の図に、地すべり範囲を入れてみました。
これは私が地形を見て「こうかな?」と描いたので、正確ではありませんが、だいたいこんな雰囲気と思っていただければ幸いです。

これを見て頂ければ感じて頂けるでしょう。
畑や田んぼ、池もあって、神社や寺もある!しかも有名な寺!
長くから人が住んでたの??・・・と。

日本人は、国土の中でも限られた土地を上手に利用して、命をつないできたのです。
地すべりは災害を起こしますが、水が多い場所ですし、崩れてグチャグチャになった土地は農耕に適した土地になります。

つまり日本人は、昔から災害と背中合わせで生きてきた、逞しい民族なんですよね。
日本人はもともと、自然と上手に付き合い、災害を巧みに避けてきた??
このワザ、是非、学びたいものですよね♬

私自身、noteを通じて日本各地の地形・地質をお話しするうちに、いつも日本人の逞しさを思い知らされ、感動しています。

この気持ち、もっと上手く表現したい!!
ってことで、今回はありがとうございました。

次回以降も、よろしくお願いいたします。

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