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テレビ報道の「土砂災害の予兆」について気を付けるべきこと 【災害から身を守るvol.16】

雨台風として警戒されていた台風14号は南へ逸れましたが、伊豆諸島を中心とする島しょ地域ではまだまだ土砂災害に対する警戒が必要です。

そのような中、問題と感じる報道を目にしましたので、皆さんと一緒に防災について、より踏み込んで考える切っ掛けになればと思い筆をとりました。
(※トップ画像は政府広報オンラインより)

テレビ報道の「土砂災害の予兆」の是非について

これまでもテレビのニュース番組では「土砂災害の予兆」を伝える場面は多々ありました。
これについては私はかねてから問題視していました。
私自身の記憶が定かではないこと、全てのテレビニュースを見てないことから断定はできませんが、確かある時、番組に出演した専門家が指摘したことで、それ以降は安易に「これが予兆です」と報じなくなったと感じていました。

しかし、残念ながら昨晩(2020年10月11日)に「テレビ朝日のサタデーステーション」(※改善していただきたいので敢えて名前を出しました)で、安易な報道がなされてしまいました。


土砂災害の予兆とは?

報道等で良く取り上げられる「土砂災害の予兆」は、主に以下の3点です。

・山から異常な音(根が切れる音など)が聞こえる
・普段水が出ていない場所から水が噴き出す
・生臭いにおいがする

この他に「小石などがパラパラと落ちて来る」も言われる場合があります。

これらは確かに土砂災害が発生する前兆現象としては正しいです。
そして一般市民が前兆現象を知ることも重要です。

しかし一番問題なのは、がけ崩れ崩壊と言われるような土砂災害は「突発的に起こる」のが一番警戒すべき点だと報じない事なのです。

前兆現象事例

前兆現象の解説図の事例:国土交通省より


安易な報道がなぜ問題か?

上述した「土砂災害の予兆」は確かに正しい。
しかし例えば「ブチブチ・バキバキと根が切れるような音がする」というのは、すでに「土砂崩れ現象が始まっている」ことを意味しています。
人間の目では判別できないだけで、既に山が崩れ始めているだから「音が鳴る」のです。

異常な出水にしても同様です。
そういう場所は、実は専門知識のない一般の人が気づいていないだけで、普段からジワジワと水が出ています。(水を好む草が常に生えているなど)
そこから水が噴き出すということは、崩れる寸前と言って差し支えない状態です。

また生臭いにおいは、山のどこか見えない場所で、既に崩れているということを示している可能性が高いです。
生臭いのは、地中で分解された動植物の遺骸によるもので、要は地中のものが地上に出たことを示しています。
崩れるまではいかなくても、崩れる寸前の現象として地割れが起き、そこから臭ってきているのです。

以上のような現象を確認した場合、次の瞬間にドサッと来る危険が高いです。ですので、「予兆があるかどうか?」を確認するために裏山を見に行く行為は、自殺行為にも等しい危険な行動です。

以上のような「予兆を確認してから逃げるのでは遅い」という最大の注意点を報道せず、単に予兆のみ報道すればどうなるか?

今でこそ早めに避難する人は増えてきましたが、それでも避難をためらう人はまだまだいるでしょう。
そんな人がこの報道を見れば「では予兆が出てから逃げよう」と考えますよね。そして頻繁に裏山を確認に行くという行動をとりかねません。

警戒レベル

出典:国土交通省


土砂災害の予測は困難

地すべりのようにジワジワと動くものとは違い、「がけ崩れ・土砂崩れ・崩壊」突発的に起こるので、専門家でも事前予測は困難です。
専門の観測計器を事前に設置し、データを分析することである程度の予測をするのがやっとです。

専門知識を持たない一般の方々の場合は、予兆が出る前に避難するのが最善です。国や自治体からの警報(警戒レベル:上図参照)を参考に早め早めの避難をする。
これが第一です。

予兆に関する報道をするなとは言いません。
ですが報道する場合は、「予兆を確認した時は既に遅い可能性があり、一刻の猶予もない状態」だということ、その前に逃げるのが第一だという報道もセットで行うこと。

報道関係者の方々の安易な報道で、逆に人々を危険にさらすことになると肝に命じてください。

この記事が当事者に届くかは分かりませんが、テレビ朝日の報道関係者をはじめとする報道関係の皆さん、以上のことを良く考え、報道内容にはくれぐれも気を遣っていただきたいと願います。


お読みいただき、ありがとうございました。

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