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麒麟じゃなかったのか?!:明智光秀逃避行ルートの地形・地質part4【歴史と地質:其の1】

大河ドラマ「麒麟がくる」の最終回、ご覧になったでしょうか?
私自身、色々と考えさせられました。
実際の織田信長がどのような人だったのか?は別として、ドラマでは、信長自身が「良かれと思って」実行したことが、光秀をはじめ周囲の反感を買い、それが蓄積していった・・と私は感じました。

その清算をしたのが光秀ですが、最後は「生きてるかも?」と、颯爽と馬を駆る姿で終わりましたね。
個人的には、鷺山で帰蝶様とお茶を飲むシーンで終わって欲しかった(笑)

・・・さてと!!
油坂峠を越えれば、そこはもう越前。
一乗谷(いちじょうだに)はもう少しです!

おさらい

前回までのルートは下図の通りです。

岐阜ルート

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

越前_ルート

今回は県境を越えて福井県内の大野市、福井市を通って行きます。


逃避行ルート④:油坂峠~野尻~九頭竜

油坂峠を越えて九頭竜川に沿って西に進んでいきます。

油坂峠ー九頭竜_地形

だいたいこんな感じです。

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九頭竜湖(くずりゅうこ)はダム湖ですので、当時はもちろん存在せず、野尻という集落があったのでしょう。今は地名と神社だけが残り、湖の底でしょうか?
ちょっと悲しいですね。

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周辺の地質はこんな感じ。
中央から西にかけて分布する紫色の地質は古生代ペルム紀(約3億年~2憶千万年前)玄武岩溶岩類です。

また周辺の濃い黄色や黄色は中生代ジュラ紀の砂岩です。
地層の名前は手取層群(てどりそうぐん)。
そう!!あの有名な(?)恐竜の化石が産出する地層です!!

もしかしたら光秀、越前に逃げる途中で恐竜の化石を見た??
それを「これは麒麟では?!」と言ったとか言わないとか(笑)

冗談はさておき、九頭竜の集落を見てみましょう。

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このあたりは堆積物がたまって平野が広くなっています。
山深いところでは、やはりこのような場所に人が住むんですね。

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西に見える濃い青色の地層は、石灰岩がマグマに焼かれて変成した石灰質片麻岩です。非常に硬くて浸食に強く、狭窄部になっているので土砂が溜まりやすかったのでしょう。


逃避行ルート⑤:九頭竜~大野

九頭竜の下流を抜ければ大野盆地です。

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楽な盆地までもう少しなのですが、蛇行が多くV字谷になっていて道は険しそうです。

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大野盆地側から九頭竜方面を見た3Dです。なかなかキツそうですよね。

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中心に紫があり、それを取り囲むように薄いオレンジ色がありますね。
このオレンジは約2000万年~1400万年前に噴火した安山岩溶岩類です。これは硬いです。
そして紫色は同時代の閃緑岩。つまり安山岩のマグマが地下でゆっくり冷えてできた岩石です。
花崗岩や閃緑岩は風化が進みやすいのですが、ここの閃緑岩は新しめの時代のものだからか、風化があまり進んでいないようです。
これら安山岩と閃緑岩が硬いために、険しいV字谷になっているようです。


逃避行ルート⑥:大野~美山~市波~一乗谷

大野盆地での束の間の休息の後は、最後のひと踏ん張りです。

一乗谷付近_地形

またしても狭いV字谷が立ちはだかります。

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なかなか険しそうですよね。

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それもそのハズ。この辺り一帯の山は、先ほどと同じ約2000万年~1400万年前に噴火した安山岩溶岩類なのですから。

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でもアップで見てみると、案外そうでもなさそうです(笑)
谷には土砂が溜まり、狭いながらも平坦地がつづいています。

美山周辺

谷を抜けると美山(みやま)という集落に至ります。
それにしても途中の狭窄部(赤丸)はかなり狭い谷ですよね。おそらく、これがあるために上流に土砂が溜まりやすかったのでしょう。

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美山は周辺と違って下の古い地層(ジュラ紀の砂岩泥岩互層)が出ています。古い地層で硬めとは言え、安山岩よりは柔らかく削れやすいので広めの谷がつくられたと考えられます。


そして一乗谷へ!

市波という集落を抜ければ、ついに一乗谷(いちじょうだに)に到着します。

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ここも同じ地層(安山岩)なのですが、岩質が違うのか、広めの谷で平坦地が出来ています。
下流の狭窄部を乗り越え・・・

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ここが一乗谷です!
やや広めの谷なので城下町をつくれますし水田もある。そして狭い谷に兵を配置すれば守りやすい(武士目線、笑)。繁栄したのも頷けます。

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北から見た3D(空中写真)です。
緑が綺麗ですね。
約500年前、ここに城があって城下町が栄えてたと思うと感慨深いものがありますよね。


4回にわたってお送りしたシリーズはこれにて終了です。
お読みいただき、ありがとうございました。

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