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3.11を多角的な視点で振り返る:『Picturing the Invisible~冥々を写す~』【全文無料】

今年もこの日がやって来ましたね。皆さまそれぞれの思いがおありかと思います。福島およびその他の被災地の復興を心から願い、今日は特別に全文無料で公開します!

今回ご紹介するのは、昨秋にロンドンの王立地理学会で開催された写真展『Picturing the Invisible~冥々を写す~』。東日本大震災の被災地で活動を行う7人の写真家たちの作品を集めたものです。これが、日本のメディアやニュースが一般的に取り上げるのとはまったくと言って良いほど異なるアプローチで、とっても素晴らしかったのです。

この日は色鮮やかな型染めの小紋で。11月ながら、イベントのテーマである3.11の季節にふさわしいピンクの帯にしました🌸

こんな感じで行ってきまーす♪

ちなみに11.11はイギリスでは戦没者を悼むリメンブランス・デー。1918年11月11日に第一次世界大戦が終結したことに由来しています。その日に近かったことからポピーの花のつまみ細工を胸に。それぞれの国にそれぞれの大切な日があります😌

会場のあるサウス・ケンジントン界隈には、わたしはV&A博物館やロンドン自然史博物館、ロイヤル・アルバート・ホールといった文化施設が目当てで訪れることが多いのですが…。

実はその他にインペリアル・カレッジ・ロンドンや王立音楽大学などの世界に名だたる名門大学、さらには各国大使館も並ぶエリア。そのため、右を見ても左を見てもどっしりと重厚な建物が続きます。

そんな中でまた独特の存在感を放っているのが王立地理学会。その名の通り、地理学の発展のために1830年に設立されたもので、世界の地理学の中心的な存在です👩‍🎓✨

言うまでもなく学術的な施設であるものの、2004年以降は地理学に興味のある一般人も学会に入れるようになったり、今回の写真展が開催された一般公開用のギャラリーを併設したりと、広く門戸を開いています。

この写真展の主催者は、ミュンヘン工科大学科学技術学部の講師、Dr. Makoto Takahashi。上の写真の中央に写っている男性です。ハーフの方だと思うのですが顔立ちや物腰はほぼ西洋人。わたしとの会話は終始英語だったので、きっとほとんどこちらで育たれたのだろうと推察します。

今回の写真展では、彼がほとんど趣味で集めていた3.11関連の写真コレクションが、彼自身が案内を行うガイド付きツアーで公開されています。

こちらは展示室から少し離れたところに飾ってある、高さ2メートルほどの巨大な作品。元金融トレーダーという異色の(?)経歴を持つアーティスト、川久保ジョイさんによるもの。彼は今はロンドンを拠点にされています。

これは福島原発事故によって汚染された土壌にフィルムを埋め、1か月後に取り出して現像したもの。フィルムの一部は完全に溶けてしまっていたそうですが、このように端から焼けたような不思議な写真がプリントできたものも。残酷で、しかも幻想的な美しさを持つ作品です。

2016年にRebecca Bathory(ロンドン在住のイギリス人写真家)が写したこの写真のように、ある意味で正統派な作品もあるにはあったのですが、それはこの展覧会ではごくごく一部で…。

とても幻想的で、そうと言われなければ3.11と結びつかないような作品がほとんどでした。

こちらの足跡の写真は、「放射線像」をテーマとするMasamichi KagayaさんとSatoshi Moriさんの作品。キラキラと光る放射線に恐怖を感じると共に、ひとつの方向、しかも上に向かって歩いて行くさまざまな足跡には希望も感じられます。

イギリス人写真家Giles Priceが、福島県浪江町の「希望の牧場」を赤外線カメラを使って撮影したもの。

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、福島原発からわずか14kmのところにあったこの牧場の家畜を、政府は殺処分するように指示。しかし、これに反対した人々が被爆した家畜たちの飼育を続けています。熱のある部分が赤く写るという赤外線カメラの特性を通じて、牛たちの「いのち」が見る者の目に突き刺さります。

まさにこの写真展のタイトル『Picturing the Invisible』、つまり「目に見えないものを写す」にふさわしい作品かと。

Thom Daviesはイギリス人地理学者であり、写真家でもある人物。チェルノブイリ原発やフランス・カレーの難民キャンプなどの写真も手掛けています。

こちらは2014年に福島県の相馬野馬追を写したもの。勇ましい拵えに目が行きますが、少年らしさを残した男の子のやや途方に暮れたような表情も印象的。「福島」を背負っていく彼らは今どのような思いでいるのでしょうか。

他にも印象に残る素晴らしい作品が多数。この日の見学者で日本人はわたしだけとあって、他国の方々に東日本大震災について質問も受けました。なかなか言葉にするのがむずかしい部分もありますが、じっと真剣な目で聴いてくださったのがとても心に残っています。

そもそも地震も津波も極めて稀なイギリス。あの時に実際に日本で何が起こり、人々がどのように感じたのか想像しづらくて当たり前かと。それでも知ろうとしてくれること、話を聞いてくれることに大きな意味での希望を感じました。この展覧会は今年6月にミュンヘンに巡回しますが、その他の国からも打診があるそう。いろんな方に「見て」「考えて」いただきたいですね😉

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