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目に見えない大切なもの。18回目「フードロス」。

スーパー、コンビニ、デパート、レストラン、ドラッグストア、さまざまなお店でたくさんの食品が売られています。現在日本では、私たちはいつでも好きな時に好きなだけ食べ物を買えるようになりました。宅配サービスを利用すれば、いつでも好きな時に自ら動かずに食べ物が届けられる。便利な世の中になったものです。

15年前に公開されたディズニー映画「ウォーリー」。好きな時に動かずに食事を摂れるようになった人間は、食べ物を機械的に口に入れ、交通手段は車のような乗り物ばかり。人間は歩かなくなってしまったために丸々と太ってしまい、ついには手足が退化しマトリョーシカのような体型に😅15年前にこの映画を制作していた方はこのような未来が近い将来、来ることを想像していたと思うと、びっくりします。

私たちが多くの食べ物を購入、消費すると同時に、多くの食べ物が毎日のように大量に廃棄されています。環境のことを考えて、フードロスを減らそうと、期限が近いものを割引価格で販売するお店も増えてきました。

薬も毎月のように捨てられていること、知らない人も多いのではないでしょうか。

薬は薬価が決められているため、期限が近いからといって、食品にように値引き販売することはできません。どんなに期限が近くても患者さんには決められた価格以外では販売できないのです。しかし、処方薬の期限が切れれば多大な損失になるため、薬局間のメルカリみたいなものを経営している会社があります。期限が近くなれば、薬が余っている薬局が安い値段で薬の販売価格を決め、売り出す。買った薬局はもとの販売価格よりも安く手に入れることができるので、利益につながる。そのような仕組みも普及してきました。

コンビニよりも多い薬局。薬局は儲かっているんだねーと言われることもありますが、利益はどのような仕組みで出るのかご存知でしょうか?

薬の値段は決められています。決めているのは、薬局に納入する会社(卸)です。薬価と卸との販売価格の差が薬局の利益になります。

価格は薬の種類によって幅があり、高い薬ほど価格差が大きいため利益が出やすいと言われています。

大手薬局であればあるほど大量仕入れが可能であるため、値引率も高くなるとか。そして大手薬局は店舗数も多いため、在庫している薬が処方されなくなっても、他の店舗に移動させることが可能。小さい薬局は店舗数が少ないために廃棄することも多いのです。そのため先程のように薬局間のメルカリの仕組みができました。

私も薬局勤務時代は処方されなくなった薬の取引の担当をしていました。そのような薬は、忘れ去られた薬であるため、パソコン上で調べて、こんなのあったんだーという感じ。忘れ去られた存在のため、見つからない場合も😅

そして近年は国がジェネリック医薬品(後発品)の推奨をすすめているため、薬局もジェネリック医薬品を積極的に使用。薬の種類が増えるため、在庫数もどんどん増えていきます。ジェネリック後発品の種類をある程度増やさないと、国で定められた点数(合格点のようなもの)をもらうことができないため、薬局はなるべく割引率が高い薬を購入します。

徐々に増えていく薬の在庫管理を、日々の業務と同時に行うことはとても困難です。中堅規模の薬局は大手よりも規則が緩いために、期限切れの薬が出て廃棄することがあっても私は責任追及されませんでしたが、大手薬局では、なぜその薬が廃棄になってしまったのか報告書を書かされるとか。大手薬局は薬剤師の異動も頻繁にあるため、廃棄になるときには、その薬を購入した薬剤師が不在の場合がほとんど。日々の業務に追われる中、なぜその薬を廃棄することになったのか、理由がわからず報告書を書かされると聞きました。その報告書の作成は通常業務とは別の扱いになるため残業するのは当然のこと。また、大手薬局では破棄の際に最低2名でのチェック体制が基本。会社の規則で通勤服、髪型、髪の長さ、髪の色など校則が厳しい学校のように指定されます。投薬では1人にかけられる投薬時間、1日に投薬すべき患者数も決められ、多くの薬剤師が疲弊し、数年で退職していきます。

私も、毎月のように多くの薬を廃棄するのをみてきました。その理由としては、ジェネリック医薬品の種類が増え過ぎてしまったため、薬を移動するor買い取ってくれる店舗がない、先生の希望で在庫したもののやっぱり今までの薬がいいなど理由はさまざまです。

コロナになって、解熱剤のアセトアミノフェン(商品名:タイレノール)が品薄になったことをご存じの方も多いのではないでしょうか?ドラッグストアからアセトアミノフェンの在庫がなくなり、薬局でも品薄になりました。

患者さんによってはテレビの報道を見て、そんなに飲むの?と大量に処方してもらっている方もいたほど😅これがきっかけなのか、他の薬も在庫不足になるのを恐れて、薬局では大量に薬を在庫しておこうとする動きが出てきます。

薬局は薬が足りない時、卸に注文します。卸では、いろんな薬局から注文がきて薬が足りなくなるため、各薬局に過去どれだけ納品したのか、履歴を見て、優先度を決め、薬局に振り分けます。卸は実績主義なので、薬局では日ごろから多めに注文しようとするようになります。

薬を処方するのは医師であり、医師に「薬の在庫なくて処方できません」と伝えるのが難しいためか(薬剤師の立場はとても低いのです😅)大量に薬を発注、過剰在庫されます。

私が勤務していた薬局も、こんなに必要?と思われる薬の発注を開始、在庫しました。処方された薬の在庫がないのも困りますが、本当に必要なところに行き渡っていないのではないかと。

その予想は数ヶ月後に予想通りとなります。大量に在庫した薬、使い切れないほど在庫した薬局があったのでしょう。薬局に通常より期限が短いものが納品されます。この場合、納品された薬局で期限切れとなることなく使用できれば問題ないですが、廃棄することになった薬も多かったのではないかと思われます。

フードロスならぬメディスンロス(←勝手に名前を作りました🤣)の事例をご紹介します。

ダンボール箱いっぱいの薬を持ち帰る患者さん。
薬で毎回お腹いっぱいじゃない?と😅「私はいっぱい手術してるし、これがないとダメなのよー」と。生活保護の方なので、お薬代金は0円。本当に全部飲んでるのかな?と思いつつ、0円だとお薬のありがたみを感じないよなーと。

親戚が10年前に亡くなった際に、自宅を整理。持病があったために、お薬をかなりたくさん飲んでいたことは知っていましたが、全く飲まなかった薬、ダンボール3箱近く捨てることに😱😱😱

お薬は永久的にもつものだと勘違いしているご年配の方も。
「10年前の薬、なんだかよくわかんないけど、使っても問題ないよねー?」と😅お薬も食品と同じで腐るので、すぐに捨ててください!とお伝えすると「えーそうなの?もったいないじゃん」と😅飲んだらよくなるどころか悪化しますよ😅😅

薬が変更になったけど、前の薬を捨てるのがもったいなくて捨てられない患者さん。
今までの薬と新しい薬を同時に使ってしまい、症状が悪化したケースも。
ご家族の方にお願いして不要な薬は廃棄して、正しくお薬が使えたために徐々に症状が改善したケースもありました。

私の父、数年前に入院する際に何の薬を飲んでいるか把握するために、引き出しを整理。それまで私はいっさい薬の管理をしていませんでした。引き出しを整理してビックリ!!😳大量に余っている薬やら、何も入っていない薬の袋やら…さまざまのものを捨てました。

このような事例をみると、飲まなかった薬、廃棄した薬を合わせたらいくらになるのだろうかと考えてしまいます。

特に年齢が上の方ほど、お薬は何かあった時のため過剰に在庫する傾向があります。そのような事例が多かったのもあり、近年では「余っている薬があれば調整しますので薬剤師にお伝えください」という広告を薬局で見かけた方も多いのではないでしょうか?

大量に余っている薬があれば、医師か薬剤師に余っていると伝えてみましょう。
医師に言いづらいようであれば薬剤師に相談してみてください。
薬剤師が医師と連絡をとってお薬の処方日数を変更してもらうことが可能です。
残った薬を調整するために手数料が保険負担で30円〜90円(保険負担割合1割〜3割)プラスになりますが、飲まずに廃棄してしまう分の薬の金額に比べたら少額です。

元からある先発品と後発品ジェネリック医薬品で薬の名前が全く違うために、同じ薬と理解できず古い薬をとっておく患者さんもいます。もしわからなくなってしまった場合は薬局にいけば整理してくださるので相談してみてください。

ちなみに、複数の医療機関に行かれている方、病院やクリニックに近い薬局ごとにもらっていませんか?できれば信頼できる薬剤師がいる薬局で一カ所でもらうようにしましょう。なぜなら、お薬同士の飲み合わせなどを総合的に判断してもらえます。
決まった薬剤師からもらうことができる、かかりつけ薬剤師制度もあります。
美容院や床屋さんでもほとんどの方は担当者がずっと変わらないのではないでしょうか。指名料として代金にプラスされたりしますよね。

薬局でも患者さんが薬剤師を指名できる制度があります。これが「かかりつけ薬剤師制度」です。こちらも指名料として保険負担で60円〜100円プラス(3割負担の場合)になりますが、毎回同じ方に担当してもらえます。薬をもらう度に違う人が担当なのもどうかと思いますよね。もちろん担当の方との相性もありますので、いつでも変更することも可能です。その際は言い出しづらいと思わずに伝えてくださいね。

別の薬局でもらう場合のデメリットとしては、薬同士の飲み合わせが悪いことに気づかず、副作用が生じてしまう場合も。
やむをえず違う薬局でもらう場合は、必ずお薬手帳を持参しましょう。
薬局ごとに違うお薬手帳で管理されている方もいますが、これは薬の総合的な判断ができないのでやめてください。全ての薬は1冊のお薬手帳にまとめましょう。
今はスマホのアプリでも管理できます。見えないところで重大な副作用が生じた場合もみてきました。
自分の体は自分で守るようにしましょう。


話は食品に戻りますが、薬の話と同様に食べきれないほどの量の食品を冷蔵庫に蓄えていたりしませんか。そして賞味期限や消費期限が切れたものを大量に廃棄していたりしないでしょうか。

日本全国の食品ロスは年間600万トン。そして世界の食品援助量は約300万トンと言われています。日本では世界全体で支援されている食料の2倍の量を廃棄しています。

600万トンのうち半分の300万トンは食べれる状態で捨てられてしまった家庭ゴミになります。京都市のデータでは家庭から出るフードロスは1世帯で年間6万円相当になるとのこと。スーパーに行けばまとめ買いがお得ですよといって大量にまとめ買い、食べずに廃棄なんてことをしていないでしょうか。チリも積もれば山となるように、年間で6万円の損失になっているかもしれないのです。

そして食品の廃棄によって生まれる膨大なコストは実はあなた自身が払わされていることを忘れてはなりません。粗大ゴミを捨てるときに費用がかかるように、食品にも目には見えませんが廃棄費用が既に組み込まれているのです。

1つ食品を作るには大量に水が使われていることを忘れてはなりません。
例えばハンバーガー1個作るには、2400Lの水が使用されています。1個捨てればそれだけの水が廃棄されることになるのです。日本は水が豊富にありますが、世界標準でみれば飲める水が蛇口から出てくるのはすごいこと。それをハンバーガー1個でそれだけ廃棄している事実をあなたはどう思いますか。

私は大学時代にカフェチェーン店でアルバイトをしていました。そこはお客様にできたてのパンをいつも食べていただくことがコンセプト。
パンの在庫が無くなる前に補充して焼くようなシステムでした。
そのため閉店時にもパンが大量に余るため、多くを廃棄。
会社のコンセプトによって廃棄量もコストとして事前に計算していることが伺えます。

賞味期限は実際よりも2割ほど短く設定されていることはご存知でしょうか?
実際に食べて安全な日数×安全係数で賞味期限をわざと短めに設定しています。
この安全係数は消費者庁が0.8を推奨していますが、お菓子業界は実際には0.3をかけるのが通常のこと。この安全係数、農薬の回に出てきた経験則に似てますね。言い方を変えれば適当なんです😅安全係数が0.3の場合実際に食べれる期限より7割も短いことになります。これは賞味期限を切らして、どんどん新しいものを売るぞという食品業界の裏事情があるのです。

お店に並べられている商品、3分の1ルールで食品が廃棄されているということはご存知でしょうか?メーカーが指定した賞味期限よりもさらに手前の日に商品を撤去。賞味期限全体の3分の2のところに販売期限を設定しそこに達したものは撤去されてしまいます。このルールに則ると300日安全に食べれるお菓子も60日で破棄されてしまう現実があります


期限が少しでも長いものを手に取って選んでいるとしたら、あなたは十分に食べれる食品が廃棄されることに加担しています。私も以前は期限が長いものを手にとっていましたが、今はなるべく期限が短いものを選ぶようにしています。少しでも食品廃棄にならなければいいと思って。

ではなぜこれだけ期限の設定を短くするようになってしまったのでしょうか。


お菓子の安全係数が極端に短くなってしまったのは、お菓子から食中毒の原因菌が検出されたことが社会問題になり、その後、有名菓子メーカーの賞味期限改ざん問題が発覚したことが原因ではないかと考えられます。改ざんはよくないことですが、メーカー側も問題なく食べれることを知っていた上で日付を書き換えてしまったのだと想像できます。それが大きなニュースとなり、日本人はなるべく期限が長いものを買いたがる傾向になってしまった可能性があります。私もこのニュースを見た時は衝撃的で、賞味期限がなるべく長いものを購入するきっかけになってしまったのだと思っています。

賞味期限は美味しく食べられる期限のこと。
消費期限はその期限を過ぎてしまうと急激に劣化が進んでしまうリミットのこと。

この違いをはっきりと理解した上で賞味期限が短いものでも安心して食べれること、期限の短いものから選ぶことでフードロス削減に貢献できることを頭の片隅にいれてほしいです。

ちなみに期限が短い薬を長いのに変えるよう言ってくる患者さんもたくさんみてきました。
本来、薬はすぐに使用するため、長期保存するものではないのです。
何かあった時に怖いから、今は症状ないんだけど、あると安心だからと処方をお願いされる方も。
その何かあった時、それがいつくるのか、未来はどうなるかわかりません。その症状が出た時に、事前にもらった薬がその人の症状に合うとは限らないのです。
そして、事前に薬をもらうような人に限って、日々の生活習慣食生活に気を配っていない場合が多いのです。
食べ物を薬だと思って日々の生活習慣の改善から取り組むようにしてみてはどうでしょうか。

私も以前は原因不明の体調不良が頻繁に生じていました。
何かあったとき、他人に迷惑をかけるから会社は休めない、だから薬を在庫していました。
思い返せば、原因不明の体調不良は日々の生活習慣や食生活が原因だったと。
現在は食べ物に気をつけているので、原因不明の体調不良に悩むことはなくなり、薬はいっさい飲まずに過ごしています。
これから花粉症の季節ですね。私は先天性のアトピー性皮膚炎の他に10年前に花粉症を発症しています。この時期は点鼻、点眼、内服薬が手放せない毎日。今年は薬を飲まずに過ごせたらと思っていましたが、やはり目の痒みに耐えられず😭久しぶりにアレルギー薬を服用しました。それでも1年中服用していたアレルギー薬が花粉のシーズンだけで済むようになったのは日々の生活習慣の改善のおかげかなと😊

食品業界には厳格なルールがありますが、街中やマンション、さまざまなな箇所でルールを記載した貼り紙を見かけます。
特に私は自転車が大好きなので、都内の駐輪場探しに一苦労する場合も。
ルールを守ることできれいな街づくりをしているのだと思いますが、日本人の自主性を削ぎ落としているように感じてしまいます。
海外では高齢者と子供たちが幸せそうに暮らしていたり。
日本ではコロナでそのような光景もみかけなくなりました。

次回の目に見えない大切なものは「ルール」です


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