見出し画像

ベルリンの街と森で過ごす誕生日

31歳の誕生日を7月16日(ナナイロ)に迎えた。ジェンダーフリーについて考える事が多い私が、七色、レインボーカラーの日生まれなのはなかなか体を張ったボケである。

そんな自分が誕生日に体を張ったボケをするのは割と必然で、朝の思いつきで森と湖におんぼろチャリで向かう事にした。夜には1年ぶりのバーに飲みに行く予定があった為、森と街の欲張りパックで1日を彩る試みだ。

西南に位置するWannsee(バーンゼー)、27kmの距離を、タイヤの潰れかけたチャリで向かい、途中の森を楽しみ、湖を見ながらぼーっとしたら電車で帰る。シャワーを浴びて着替えたら街へと繰り出すプラン。


10時、南へ向かう

私が住む場所は、ベルリンの中心エリアの南に位置するクロイツベルグ。ここから少し南にTempelhof(テンペルホフ)という旧空港跡地が広がり、その敷地を抜けてひたすらに西南に向かう。

画像9

街から次第に田舎の風景になる。

地名やストリート名を覚えるのが苦手な私でも一発で覚えた「アンクルトム ストリート(トムおじさんの道)」を右折する。

大通りを外れグルーネバルトの森へ向かうのだが、森に入ってしまうと食料が買えるスーパーがなくなるので、アンクルトム駅のすぐ横にある小さなスーパーで食料を買うことにした。

普段は飲まないファンタオレンジを買ってすぐに飲み干す、なぜ人は夏の日に炭酸ジュースを飲みたくなるのだろう。

もう一本のファンタオレンジとナッツをリュックにしまい、バナナをズボンのポケットに突っ込む。

Grunewald グルーネバルトの森

バナナをかじりながら漕ぎ始めると、次第に森に入る。

画像1

この森は悪魔の山と呼ばれる120mの丘があり、そのてっぺんにはかつて通信傍受で使用していた廃墟がある事で有名な場所。120mの標高など富士山の足の指ほどにも満たないが、それでも山と呼ばれるほどベルリンには傾斜がない。サイクリングにはもってこいの土地だ。

しばらく森と並行して走るとサイクリングロードにつきあたった。

画像2

サイクリングを楽しむ人たちの端をゆっくり進む。右に広がる森を見ると、上からまっすぐに木の間を抜けて差す光が緑色に生い茂る低い葉を照らしている。

緑が生い茂り太陽が差すのがこんなにも美しく嬉しいのは、あの静かな冬を経験したからだろう。寒く暗く街も森も死んだように静かで、明けないようにも思えたドイツの冬。今は街も森も活気に満ちているがいずれまた冬が来る。だからこそ夏が楽しい。

Wannseeバーンゼー着

森を抜けたら湖が広がる。着いた場所はどうやら船の発着の港のようで、中型船に観光客が乗り込んでいくのが見える。子供の頃、家族で箱根旅行に行った際に観光船に乗った事を思い出した、確かあの時も夏だった。

20210721ふね

https://www.berlin.de/tourismus/dampferfahrten/faehren/1824948-1824660-faehre-f10-wannsee-altkladow.html

水浴びで汗を流したかったがビーチの場所がわからない、調べるのも、今から湖ぞいを自転車で移動するのも面倒くさくなっていた。

私の目標は達成された。27km、チャリでWannseeまで来た。

20210721チャリで来た


画像9

港の前に広がる芝生に座り込む。芝生は少し湿っていて、咲いたシロツメクサの周りでミツバチがうろうろしながら休憩場所を探している。

蜂にとって飛び続けるというのは人間に例えるとどのくらいの負荷なんだろう、徒歩、チャリ、ランニング。あんなに羽根動かしてるんだし、もしかしたら水泳くらいしんどいのかもしれない。

私にはもうチャリを漕ぐ気力は残っていなかった、体力は夜のためにも残しておきたい。ミツバチが花弁で休むかの如く2本目のファンタを飲み、ナッツを食べ、ボケーっとして帰路につく。

ドイツでは電車に自転車も乗せられる(追加2.1€)のだが、今回みたいに帰りを気にしないサイクリングが楽しめるのでとてもありがたい。

画像9


シャワーを浴びたら友達と待ち合わせ、街へと繰り出す。"街"と言えども東京の中心地のような設備や綺麗さ、娯楽施設は全く無いベルリンだが、人が集まる賑やかな場所があればそれは"街"なのだ。久しぶりの賑わいに緊張さえする。

画像9

画像9

シャンパンとカクテルを飲みながら、旅行や恋愛や前世や宇宙の話をする。人と喋る機会が減ってから、こうして他愛もないことを真剣に喋るということが楽しくて仕方がない。

抱負「バランス」

31歳の抱負を聞かれた際、「バランス」と答えた。言い方を変えれば「極端に振り切る」

静かな冬を知り、賑やかな夏を知る。運動をして体を知る。平地を知り山を知る。孤独を知り愛を知る。森を知り街を知る。色も性別も感情も全て。

中間を探すのでなく、両極に振れて初めて実感するバランスがある。今後もとことん突っ走っていこうと思う。