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ドイツの森で狐に遭遇

先日お気に入りの森、グルーネヴァルドに散歩に行った。
冬の静寂はどこへやら、緑も人も大繁盛だった。

ベルリンの中心地から電車で20分くらいだろうか、広大な森と湖があり、丘もある。
丘からの眺めは平らな地形のベルリン周辺を眺めるにはもってこいの場所で、
第二次世界大戦で出た瓦礫を集め埋め立ててできた丘というのも、なんともドイツらしい。

森を進むと湖があり、年中この湖に通っては水と木々と空をぼーっと眺めるのが習慣だ。
冬の寒い頃は大量の鳥と、近所に住むおばさんくらいしか出会わないが、暖かい時期になると裸の人間が集まり、ひたすら湖を泳いだり寝っ転がったりする、人間と自然の憩いの場になる。

デッサンをしようと紙を広げて湖のほとりに座った。
入水する人、
水から上がる人、
布を纏わない人間をぼーっと眺める。

老人、成人、子供、様々な肌の色、様々な肉と骨の形をした人間がいる。

人間って改めて自然の中で見るとあまりにも弱い見た目をしている。
なんか妖精みたい。

毛のない剥き出しの肌はプリプリで植物にも虫にも敵わなそう。
牙のある動物に遭遇したら一発でガブリだ。

普段服を着て靴で歩き、壁と天井のある家で寝て、スーパーで買ったものを食べて生活していると忘れてしまうが、人間って自然の中だと生き残れないんじゃないか。
少なくとも私は様々なアレルギーを発症して持病の喘息ですぐに死ぬと思う。

こんな弱い人間がこんなにも増えちゃった現実って、やっぱりファンタジーだよなあ。
ファンタジー人間地球。


しかし考えてみれば毛むくじゃらのマンモスは滅び人間は生き延びている、
マンモスが蔓延るマンモス地球にはならなかった。

人間は人間なりの強さで地球に生き残ったんだろう。
現代でもジャングルに住む人間もいるが、街で生まれ街で死ぬ人間も多い。

ここドイツ(主に東ドイツ)のFKKという裸文化は、近代化に伴って産業が盛んになり始めたドイツ帝国の頃
自然回帰を提唱した人々が裸で自然と触れ合うことを文化として昇華し、
こうして今でも憩いの場を残している。


街で生きる人もみんな、マンモスを狩っていた頃が恋しいのかもしれない。
街や服をなくした時、人間は人間になるんだろうか。




犬が飼い主と共に入水した。
“犬かき”って犬の泳ぎ方から名前がつけられたんだ、と納得のおよぎっぷりだ。

犬は古代、野生の狼が人間の食べ残しにありつくようになり、狩の手伝いもすることから共存し始め、狼から犬に進化していったという説を読んだ。
犬特有の上目遣いができる眉上の表情筋も、人間との意思疎通の過程で発達したという。

人間が生き残った人間地球になっていなければ、この地球に犬も誕生しなかったということか。



犬地球、ありがとう!


肌色の二足歩行の哺乳類を見すぎて気持ち悪くなってきた、

隣で寝ていたおじさんがしつこく声をかけてくる鬱陶しさもあり
さっさと荷物をしまって小道を歩くことにした。


湖から離れ道に向かって歩く、
バレーをしているおじさんやおばさんの横を通る。

高いところから落ちてくるボールを両手を上げて待ち構えているが、腹の前面と股間を剥き出しに晒している。
動物にとって腹を見せるというのは急所を晒すということなんだな、と再確認した。

裸にサングラスというのもなんだか面白い、
目ん玉隠して腹隠さず、だな。


湖ゾーンを抜けて大きい道を歩き、そこから延びる人気のない小道を見つけて少し進んでみた。
右手はなだらかな斜面になっていて足を踏み外さないように歩く。

植物の棘が膝周りの皮膚を持っていき、
ああ、半ズボンを履いてきたことを後悔する。

前方からカサカサと音がして雑草の間から動物が顔を出した。
リードなしで散歩している犬か、と思ったが人間の気配はなく、どうやら単体の様子。

キツネがトコトコと向こう側からこちら側に歩いてくる。

なんともシュッとしている出立ち、
道の端で腰を下ろし後ろ足で首周りを掻き始め、痒かったのか気持ちよさそうな顔をしている。
犬や猫みたいな仕草、キツネもするんだな、と思ったところで後ろ足を上げたままいきなり真顔でこちらを見つめてきた。

どういう感情?


どういう感情?



そのまま私の横をトコトコと通り過ぎていったキツネ、
軽く弾む四足歩行、
スラットのびた脚はバネのようで
顔つきは精悍だ。

イヌ科の動物といえど野生で生きてきた彼らはシンプルでいて逞しく優しい目をしている。

雑草を掻き分けくっついたのであろうひっつき虫を身体中にくっつけていたのがなんだか可愛かった。

そういえばイヌ科で思い出したが、狼は犬の先祖であるにも関わらず、イヌ科という分類名なのはなんだか不思議である。
英語でもイヌ科はCanine、犬という意味の言葉だ。


この後腹が痛くなったのですぐに帰った。
帰る途中の道で湖で話しかけてきたおじさんに再会し、しつこく付き纏われたのでブチギレたりもした。

全く人間地球というのはファンタジーだ(怒)


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