【字数が多く、字画が多い方がいい】

父方の祖父は、私が生まれる直前に亡くなった。父方の祖母は、私が生まれて間もなくに亡くなった。父からすると、自分の娘が生まれた時、両親がともに亡くなったのだから、”不吉な子供”だったかもしれない。

なので、物心ついた時から、曾祖父の似顔絵が欄間に飾られた仏間に、仏壇があり、その中には曾祖父の位牌がまつられていた。母は毎朝手を合わせ、お供え物をした。盆に毎年迎え火、送り火を欠かさずした。そんな時、父は言った。

戒名は、字数が多くて、字画が多い方がいいんだぞ

生まれてこの方、我が家、親戚以外で、この”戒名”が会話の話題に上がったことなどない。むしろ、戒名という単語すらを知らない人の方が多いかもしれない。

戒名とは、簡単に言えば、仏教とが死んだ後につけられる名前のこと。一般的には、位の高い人ほど、この字数や画数が多いと言われている。我が家は、武士の家系だが、なぜが異常ににこだわる。確かに、父方の曾祖母の戒名は、画数の多い、難しい漢字が多くつかわれていて、単純に”箔がある”。なので、テレビドラマなどで、位牌が移ったりすると、「この人字数はあれだけで、ああいう感じか」などと、無意識に戒名を判定している、恐ろしい子供だった。

そして父が亡くなり、この戒名を付けられる立場になった。結局は「お布施(=お金)」の金額によるものだと、父の葬儀の前に、母とお寺のお坊さんの会話で知った。母はいくら払ったのはは知らないが、父の戒名は、曾祖母に比べて、パッと見が”シンプル”だ。もし父が夢枕に立ったとしてら、この戒名が気に入っているかなど、怖くて聞けない。

私もアラフィフ。そろそろ”終活”を考えてもいい年ごろだ。一人身の私の火葬って誰がするんだろう?そのあとの遺骨はどうなる?残念ながら、父の望むような、立派な戒名などつけられず終わるだろう。私はそれでも全く構わないけど。

ついたvoice_watanabeさんの画像を使わせていただきました。ありがとうございました。


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