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【なんでもかけるな】

昭和一桁生まれの父は、しつけに厳しかった。特に食事の作法は口うるさかった。4歳くらいの時に、箸の持ち方を毎食後”特訓”させられ、大泣き、父と一緒の食事は恐怖の時間だった。

いいか、出された料理にすぐに、しょうゆやソースをかけるな。まず一口食べて確認して、味が薄かったらかけろ

この言葉は、”人様の家に食事に招待されたら”が前提だ。しかし、田舎に住んでいる子供が、そうそう、他人の家に食事にお呼ばれされる機会はない。だから、父は将来、”お招きされた時”を想定していたのだろうか。

父なりの理由は二つあった。一つは、食べずに調味料をかけるのは、「作ってくれた人に対して失礼だ、まずいと言ってるようなものだ」ということだ。目玉焼きにしょうゆ(人によって、ソース、マヨネーズ、いろいろあるのでお好みで)、とんかつにソース、人間はついつい習慣でやってしまいがち。だが、料理を作っている人も、工夫をして味付けをしてくれているのだから、まずはその料理を味わい、自分なりに、もう少し何かを足したら、もっとおいしく食べらなら、調味料を使ってを調整するべし、と。言われれば理にはかなっている。

二人目は、「あとかたずけをする人が、しょうゆやソースが残ったお皿を洗う手間を省け」ということだ。自分が一人暮らしをして、自炊をするようになって分かる。時間が経った食器、油ギトギトな食器は、余計に洗剤を使うし、時間がかかって面倒だ。また、食べ終わった時、お皿に調味料などが残っているのは、美しくしくないし、もったいない。食器洗いをする人の立場を考えた理由だ。

これをことあることに父に言われた私は、究極「調味料はかけなくなって」しまった。もともと食にあまり興味がなく、食べられればなんでもいいというところがあるので、父の教え通り、まずは食べてみて、まずくなければ、そのまま食べてしまう。目玉焼きやとんかつはおろか、下手をすると刺身まで、”素材の味”で食べる。結果、作り手にも、洗う人にも、優しい(?)行動が身についた。

追記:hurikake_hkmさんの画像を使わせていただきました。ありがとうございました。

「人生経験の引き出し」がいっぱいあります。何か悩み解決のヒントになる話が提供できるかもしれません。