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一杯の、ミルク珈琲

<ぼくの大好きなのは>

お爺ちゃんの手が、僕は大好き.
お爺ちゃんの手は、ゆっくり動くんだ.
ミルク珈琲を口に運ぶ手も
とっても
ゆっくり.
街をママの手に引かれて、
歩く.
いつも早足さ、
僕はいつも走ってる.
黒いシェパードが、ワンワン吠える.
ママは、
いつだって忙しそうだ.
「お茶碗あらわなくっちゃいけないの」
「夜よ、お片付けして寝るのよ」
パパは、家ではのらりんたらりん.
「パパの言うこときかんこは悪い子だ」
せわしなく動く世の中で、
僕とお爺ちゃんの時間の流れが、
時々世界から解離する.
僕は、光速でロボを組み立てるんだ、
お爺ちゃんは、その間に、
いっぱいのミルク珈琲を飲む.
骨骨ゴツゴツして、
干からびた斑点模様がついた手で、
ゆっくりゆっくり飲むんだ.
お爺ちゃんと僕の時間の進みかた、
ナン万コウねんの差があるみたいに思えるでしょ?
そうじゃないんだ。
僕とお爺ちゃんは、
同じ時間を生きていて、
ママとパパと、
それから、
電車に居合わせた人も
パパとオンライン会議している人も
僕たちとは、違った時間を生きている.
ね、お爺ちゃん、
この意味、わかるよね?
だから、お願い、
長生きしてね.
僕はお爺ちゃんの手が大好きなのさ.

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