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夏 / つまり『ビリーバーズ』を観にいった。

『ビリーバーズ』とは。
 2000年に発行された山本直樹の漫画であり、2022年に映画化された。


『ビリバーズ』2000年初版

 7月8日にこの映画は封切りされた。

 この漫画ってカルト宗教の信者が3人登場して孤島のなかで生きてゆくことに、メインストーリーが進行してゆくんですよね。そして、地面に掘った穴に入って『浄化』される為に修行するメンバは熱い環境に朦朧としながらこんな言葉も発する。

「総理大臣もさっきやってきてくれたんですよ。次期の国会は任せると云ってくれたんです」

 そして、カルト宗教の教祖は事実上謀反を起こした信徒に銃殺される。

 えっ。あべさんが統一協会の信徒2世に撃たれた2022年7月8日に公開するこの話……まんまじゃないか。やべーな……と冷や汗をかくというよりも、俗っぽい云い方をすれば、「やっと20年して時代がビリーバーズに追いついたんだな」とも云える。まあ私は云ってないんだけど。

 それで、8月に家のひとに原作の漫画を貸したらがっつりはまって、「観に行くしかないでしょう」ということになって、観にいきました。行きがてには、尾道ラーメンを食べました。


尾道らーめん

 尾道らーめんは美味しい。というより最近ひしひしと感じているのですが、最近SAのラーメンはどんどん美味しくなっているのではないか、と思っています。麺も良いし汁も良い。

 そんなことをビリーバーズの話に持ち込まなくてもいいんですよ。

 家のひとは、事前にショップからビリーバーズのTシャツを買ってしまい、無精髭まで真似をして、すっかりコスプレイヤ状態で現地に乗り込みました。現地が何処かってはっきり書けばいいんですけど、映画館が特殊過ぎたので書きません。

つまりこれから起きる衝撃を知らない笑顔。

 この映画館にはチケットもぎり氏が存在せず、機械で観覧券を買ったひとたちは自分で定時に入場しなければいけない。私は自分が障害者手帳を持っているので、家のひともその付き添いということで、障害者割引の観覧料を払っているのですが、普段行くような映画館ならそこで私の障害者手帳と私を見較べて是非を見極めるという儀式があるのですが、そういったことはありませんでした。だって係員のひとがいないんだもの……。

 会場は地下1階。噂によるとエレヴェータもあるらしいのですが(無いそうです)、階段をふらふらしながら降りました。件の障害者手帳とは別に、私は足首の靭帯に傷があって、階段の上り下りが出来ないというハンディキャップもあるのです。 

怪盗クイーン

 怪盗クイーンの映画を観たいキッズもこの映画館に来るのだろうか。なかなか素敵な少年少女時映画体験となるので、是非行って欲しい。単館系映画館に慣れっこの筈の私も、あまりの係員のいなささにびびったし、家のひとはシネコンにばかり行くひとなので普通にびびっていた。

 取り敢えず時間らしいので、それぞれ入るそれぞれの観客約10名。もうちょっと居たのかしら。本当にめっちゃソーシャルディスタンシングで観覧することが出来ました。
 私は彼と映画館に行くとき、ばらばらの席を取ることを希望するので、今回も無事ばらばらの席で映画を鑑賞していました。

魂を抜かれたオペレーターさん(のコスプレ)

 ……さて、観終わり。

 泣いたかっていうと、泣きましたよ。でも大事な作品について「泣いた!」という単語で埋め尽くすのってばかげていると思うのですよね。

 というか本当に、漫画再現率高過ぎた!!!!! 本当に凄かった。

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  • 『みんな』のために頑張るには『僕ら』の為に頑張るしかない

  • 『副議長』さんやっぱり死んでしまうとき悲し過ぎる

  • 『議長』さんおかしくなったほど喋りまくるときのリアル唾とリアル涎がマジ過ぎて凄い

  • 『オペレーター』さんって宗教2世なのかな?

  • パンフレット、やば過ぎてもとい、公の場に出すことが憚れ過ぎてパブリックな場所に写真が出せない

  • でもパンフレット絶対買った方が良いです

  • 知らない会場では「紫色の何だか分からない飲み物」も売っていたらしい

  • ぼんごれ〜

  • 家のひともハマった「ぼんごれ〜」

  • 読書当時の中学時代の友だちに連絡したら、彼女もやっぱり云った「ぼんごれ〜」

  • 俳優さんたちはパンフレットによると、本当にぼんごれ〜(うどん)が美味しかったらしい

  • ぼんごれ〜

  • 曽我部恵一さんのロックミュージックが合わないのではないかと思ったけれど、良い方に転んでありよりのありよりだった。『みんな』のためにがんばりましょうの歌がよかった。『みんな』の為に頑張って生きていく為には『己』の為に頑張らなければいけないんだな、と思った、ということを私はひとつの回答とした

  • 3人は最初から結構、『先生』のお言葉を歌でうたっているのだが、そうだよね、宗教と云えば歌だよね、とチャーチで賛美歌を歌いまくった歴史を刻む私は改めて頷いた

  • じゃあ曽我部さんもぴったりハマるわけだ

  • 前へ後ろへそれから上へ。

  • 『副議長』さん、からだがというより、視線や唇がエロい

  • 『オペレーター』さんに欲情するというより、『副議長』さんエロいようようと感じる為のエロティックだったんじゃないか(R15指定だし)

  • エロシーンはそこまで激しくない(R15指定だし2回め)のだけれど、実は瞬発的に挟まれるスプラッタ場面がキツい

  • でも予告篇を観て感じる若干の違和感をくつがえして云おう、殆ど原作のままだから信じて観て欲しい

  • 第三本部長さん良いよね

  • 第三本部長さんの俳優さん良いよね

  • 信者が島に集まって『先生』の指導で『安住の地』へゆく過程で起こる出来事、すべてを目撃したのは『副議長』さんが庇った、そして向日葵の群れから見ていた、子どもだった

  • 向日葵のなかの子どもの演出は映画版オリジナルでしたね。これくらいしかオリジナルの点は無かったのでは。あと『議長』さん特製浄化装置の場面が無かったくらいかな

  • 海辺で性交するの、砂、痛そう、頑張ってる。『副議長』さんの腕から背中に掛けて張り付いた砂がリアルに痛そうで

  • 海付近での性交、しょっぱそう

  • 『オペレーター』さんの勃つところ、普通にその描写だった

  • リアルエロシーンが撮れないときの現場って、結局ディープキスのヴァリエイションに行き着くんだな、批判ではないけれど

  • 男性だけでなく女性もイク感じの息遣いがよかったな

  • だからエロエロしていなくても全然良いです!

  • 「みんなのためにがんばりましょう」と「みんなのためにがんばりましょうね」は違う、私は『副議長』さんの最期の言葉にそれを考えた。この瞬間『副議長』さんは聖処女だった

  • 紫色の何だか分からない物体は、最後のシーンで「紫色の何だか分からない液体」になるという布線になっていたわけだな

  • 「名前、菱子さんっていうんですね」→「飲むなーッ! 飲むと死ぬぞ!!!」

  • 私(泉自身の話)だって生まれた家がまあまあ普通のカトリックだったからまあ良いのだけれど、いっこ間違えば、ちょっとカルト宗教の二世だったかも知れない

  • 私は「カトリックの家に生まれたからカトリック」なのではない、なんだ、私も「宗教2世」なのだ、という気づきを得た

  • 『みんな』のために頑張りましょう、は教義、『みんな』のために頑張りましょうね、は言葉

  • 「向こう岸までさ」は『オペレーター』さんが初めて自発的発意した場面ではないのだろうか

  • 画面には変わらず亀

  • 私としてはYouTubeでは納得していなかった「……強制終了」の発語さえ納得させてくれたのは良かった

  • 山本直樹さんが『先生』で良かったな〜

 というか本当に、漫画再現率高過ぎた!!!!! 本当に凄かった。

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 映画館のロビーにいる、『オペレーター』さんの恰好をした彼に声を掛ける。
「大丈夫? 尼崎まで運転、出来る?」
 彼は能面みたいなかおをしていて、さっき映画で泣いたんだな、と分かった。

 そのあと我々は映画館のうえ、1階にあるカフェで、早口のおたくそのものとなりつっかえながら話し続けたのでした。

フライヤー

 帰りに家のひとの車の駐車場まで歩いていったら、お祭りのタイミングで浴衣の方々が大変華やかでした。土地柄か、お祭りだからかは判りませんが、出店も美味しそうでした。お好み焼きっぽいのがあったのは土地柄かしら。焼肉のタンが売っているの美味しそうだったな。

 そして、駐車場までもどって、ほうほうの体でパンフレットと生きている自分たちを確認し、そこから発車する宅の車に、この駐車場は「この駐車場では新500円硬貨は使えません」という貼り紙と、「この施設は2000年×月×日まで有効です」という貼り紙を見せつけて、「……この土地怖い!」となってしまったのでした。新500円玉っていつのだよ?

 帰宅してから8月29日まで、「……8月? ビリーバーズ観に行ったよね」
「ビリーバーズ良かったね……」

 と腑抜けた会話を交わしているだけの当家です。

『みんな』のために頑張りましょう。ビリーバーズ良かったよね……。

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 関西のみんな! 関西では9月からシアターセブンでセカンドランです。また行きたいな。

シアターセブンでセカンドランです

 関東のみんな!!!(だれ)
 今は、吉祥寺でやってるよ!

関東の『ビリーバーズ』上映情報

 他の地方もまだやっている&セカンドランもきますよ。

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 今後の私は「私は『カトリック』の家に生まれた『キリシタン』」ではなく、「私は『宗教2世』ふろむカトリックの両親、だよ」という言葉を発しながら、自分を見つめていこうと思いました。私だって生まれるタイミングが3秒ずれたら、違うカルト宗教の2世だったかも知れないわけですね。今の私は今でも、カトリックの教義を基本に生きてはいますが、おれは俺特別の宗教を選んで貰ったわけではないんだぞ、両親教祖を恨み殺すカルト宗教2世として生まれていた可能性だって十分にあるんだ、ということを忘れずに生きていこうと思います。

 でも聞いて欲しい。
 あなたからお金や寄付金やあなたの土地を売らせてお金を搾取する宗教は間違いなくカルト宗教です。
 あなたから愛情や慕情や子を愛する気持ちを搾取するのはカルト宗教です。
 そこにいてはいけない。
 そこにいては誰も幸福にはならない。

 普通の宗教って案外ぬるくて、リラックスしていて、

 というよりこの現代、宗教を持って生きていた方が便利なんですよ。
 私は、初詣をしてウェディングチャペルで結婚式を挙げ、お寺でお墓に入る日本人とは違う宗教を持って生きていこうとしているので、ちょっと微妙にずれることはあるかと思いますが、
 でもあなたたちだって就職活動とか流行とか、宗教活動盛んに生きているわけじゃないですか。私はその基本にカトリック教徒ということを置いているだけに過ぎない。例えば高校のときの教師のように、また自分の母のように、物心ついて、人格も形成されてから、〝カトリック〟に入信するってどんなことだったのだろう。

 なんか、私は輪廻転生を信じてはいないのですが、輪廻を信じているひとですら「あ、これ出来ないね。……まあこれは来世でやれば良いか」という語を発することは見たことが無いので、やっぱり今生が大事なんだろうなあと思います。それと同時に、今生、今生オンリーにしとくだけにはハードモードだよねえ、と思うこともあります。

 楽に生きていきたい、の意味を勘違いせずに、楽に生きられたらいいですね。

 紙版の『ビリーバーズ』の値段が高くなっているらしいけれど、あなたたちは絶望しなくても大丈夫、電子書籍があるからね。

 ずぶずぶ。


『みんな』のために、頑張りましょうね。

サポートしていただくと、画材・手工芸材などに使わせていただきます。もっと良い作品を届けられますように。