『zakuro,その断片 /ver 0.8.0』 (9)
トビラ 扉の向こうは嵐。行くべきではない。年老いた山羊が告げる。構うもんかとばかりに、使い古されたレインコートをびりびりに破る。
私は酷く悔やんでいる。
裏側があるなんて、見なければよかった。知らなければよかった。無知でいたってさえ、それでもよかった。無知と無垢は異なるけれど、無知でもよかった。そんな選択肢を思っては悔やんでいた。
扉の向こうは冬だと云われた。冬なんて名付けないで欲しかった。嵐だなんて知らないでいたかった。なんだか知らないけれど冷たくて痛いものが刺さ