見出し画像

『zakuro,その断片 /ver 0.8.0』 (6)

「白いゆめ」


そろそろ帰らなくちゃと思いながら
ふうちゃんとなっちゃんと
路をあるいている
公園があって
冬だから寒い
裸木がほそくてんてんと立っている
しばらくすると
淡いピンクの
あの儚い薄い花びらが見えて

さくら
私たち三人はびっくりする
そうだ
公園は何処までも続き
見たことのないようなおおきな花を咲かせた背の低い木が
でもさくらだ
さくらだね

私たちは云い合う

そろそろ帰らなくちゃと思いながら
でもいつまでも夕暮れより一時間まえのこの時間が
続いているのだった
だから私たちは歩き続ける
私はうれしい
公園のふしぎな柵によじ登ったりなんかしてみせて
ふたりにわらわれることもうれしい
さくらがうれしい
寒いけれどうれしい

いつまでも夕暮れより一時間まえ
白い空に咲く冬のさくら
白いゆめ
私はうれしい
寒いけれどうれしい



(前の話 「白い部屋」 ← / → 次の話「 」)

 もくじ

 *

『zakuro, その断片』書籍版はこちら。


この記事は2年前に公開した記事の再掲と加筆を含み、なお一定期間をおいて有料記事に変わります。1話100円に設定されますが、マガジンで購入していただくと、全20話程度(予定)が一定額で閲覧出来ます。文庫本1冊分程度の量になります。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

サポートしていただくと、画材・手工芸材などに使わせていただきます。もっと良い作品を届けられますように。