『zakuro,その断片 /ver 0.8.0』 (6)
「白いゆめ」
そろそろ帰らなくちゃと思いながら
ふうちゃんとなっちゃんと
路をあるいている
公園があって
冬だから寒い
裸木がほそくてんてんと立っている
しばらくすると
淡いピンクの
あの儚い薄い花びらが見えて
あ
さくら
私たち三人はびっくりする
そうだ
公園は何処までも続き
見たことのないようなおおきな花を咲かせた背の低い木が
でもさくらだ
さくらだね
と
私たちは云い合う
そろそろ帰らなくちゃと思いながら
でもいつまでも夕暮れより一時間まえのこの時間が
続いているのだった
だから私たちは歩き続ける
私はうれしい
公園のふしぎな柵によじ登ったりなんかしてみせて
ふたりにわらわれることもうれしい
さくらがうれしい
寒いけれどうれしい
いつまでも夕暮れより一時間まえ
白い空に咲く冬のさくら
白いゆめ
私はうれしい
寒いけれどうれしい
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